息が、くるしい。

「卑怯だぞ ギン!!!」
「これがおれ達の戦い方だ!!!悪ィのはあんた達だぞ!!!船さえ渡せば、おれ達の目的は果たされるのに!!!」

ルフィとギンの、二人の荒らげた声が聞こえる。

「イブシギ〜〜〜〜〜ン!!!
「よけろ!!サンジ!!!」
 プレゼント!!!」

ーードゴオン!!

「うあ……!!!!」

鎧男の攻撃が、また避けることなくサンジに直撃した。白目を剥いて動かないサンジの横で、鎧男が声高らかに喜びの雄叫びを上げてる。

「ハァーッハッハッハッハッ!!てっぺき!!」

店主オーナーから取り上げたって…!!」
「何のことだ!何があったんだよ サンジ!!」

父親とサンジの、昔の事情を知らないコック達が騒ついていた。彼等の目に映る普段のサンジからは想像も付かない目の前の現状に、誰も心が追いつかないのだ。

わたしは必死に奥歯を噛み締めて、涙を堪えるしかなかった。泣くくらいならこの状況を打開する方法を考えなきゃと思考を巡らすのに、パールの容赦の無い攻撃がサンジに浴びせられるさまを見せられて、胸が何度も押し潰される。
…こんなのは戦いでも何でもなく、一方的過ぎるただの暴力だ。

『………もういい。もういいよ。サンジくん。』

バタン…と倒れたサンジにわたしの身体は勝手に動く。サンジの元に向かわなきゃ、と。

「なまえ、待て。」
『………、黙って見てろっていうの…ッ?』
「…そうだ。」

「だから此処にいろ。」と、父親はわたしの腕を掴んだ。こんな一方的に攻撃されてる惨状をただ見ていろだなんて、もう心がどうにかなってしまいそうで、わたしは下唇をギュッと噛み締めた。

「…クソジジイはあの時、てめェの足をてめェで食って、おれに食糧を残してくれたんだ……。
……おれを生かしてくれた。」

そして、サンジがゆっくりと起き上がる。

「サンジ!!」
「おれのプレゼントをことごとくくらって…!?」

サンジはしっかり両足で立ち上がり、口元の血を指で拭い、そしてネクタイを締め直した。

「レストランは渡さねェ!!なまえもクソジジイも殺させねェ!たかがガキ一匹生かすために、でけェ代償払いやがったクソ野郎だ。おれだって死ぬくらいのことしねェと、クソジジイに恩返しできねェんだよ!!!!」



Order 【 12 】



バラティエが出来た日を昨日のことのように思い出せる。父親もサンジも大はしゃぎで喜んでいて、幼心に二人の目に見えない空気感にわたしは嫉妬していた。

「サンジ!!余計なマネするな。チビナスにかばわれる程、おれは落ちぶれちゃいねェ!!」
「余計なマネしやがったのはどっちだよ。その右足さえ失ってなきゃ、こんな奴らにナメられることはなかった!!」

フラつきながらもサンジは、パールの前に立ちはだかる。

(……サンジくんは、本気なんだ。)

本気で、命をかけて、バラティエを守り通すつもりだ。
ーー本当にそれでいいの…?
今ならまだサンジの背中に手が届く。抱きついて、訴えて、大人しくバラティエを渡してしまえばキミを失わずに済むんじゃないの…?

「なぜ……、立ち上がるんだよ。サンジさん…!!!」

後ろからギンの声が聞こえた。

「ハーーーッハッハッハッ!!まだ受け足りねェか、おれの攻撃プレゼントを!!!」

炎の中で盾をガンガンと鳴らし鎧男が笑う。

「キミに勝ち目はナイんだぞ!結果が全ての勝負の世界!!やられた奴が負けなのさ!!人質とろうが、店質とろうが、ブチのめした奴の勝利だ!!違いますか!首領・クリーク!!!」
「そういうことだ。」
「そうでしょう!?ギンさん!!」
「!ーーーーー。」
「聞くまでもねェか…。それを先陣きってやってる本人だ…。つまり貴様はおれ達に手出しもできずに散っていくのさ。それでもなおナゼ立ち上がる!!フンバるだけ無駄なのに!!」

「……………。一時でも長く、ここがレストランで在るためさ。」

黒い背広のセンターベントが風に靡く。
こちらからはサンジの表情がわからないけど、きっとニッと笑ってカッコつけてる気がする。

「…………っカッ!!こりゃまたイブシ銀な台詞マーチだね!!だがこのレストランはもう店じまいだ!!これからは海賊船に変わるのさ!!ダメ押し、パ〜〜〜ル、プレゼントォーーーーーッ!!!」

ガコン!!!
パールの鉛の盾が、またサンジの顔面を殴りつける。その反動でサンジが突き飛ばされて倒れた。

「サンジ!!!」
「あ…!!あの野郎死ぬ気かよ!!」

「うわっアチッ!!やべェ!!!火力がまた増してきた!!」
「今度こそ店まで火がまわっちまうっ!!」

ガヤつくコックたちの声も、火を消そうと海水をかける海賊たちの声も、まるで遠い出来事のようだ。
もうずっとわたしの目にはサンジの姿しか映っていない。傷付いてフラフラなのに起き上がろうとするサンジは口元の血を拭う。血を拭った袖口はもう真っ赤になっていた。

「ハーーーッハッハッハッハッハ!!!手ェ出してもいいんだぜ!?ジジイとオンナが死んでもいいんならな!!」

パールは高笑いをしてサンジを挑発する。

………レストランで在るためってなに?
キミがボロボロになってまで守ってるレストランから、もしかしたらサンジが居なくなるかもしれないなんて、わたしには全然受け入れられる気がしない。

気がしないよ、サンジくん……。


『…………わたし、もう我慢できない。』
「ーーーなまえ……。」

わたしの腕を掴む父親の手を退ける。止められるかと思ったけど、父親はあっさりと手を離した。
自由になった身体をくるりと返して、わたしはギンを見る。

『撃ちたければ、撃ってください。』
「……なんのつもりだ。」
『あなただってもう気がついてるでしょ?こんなの闘いじゃないです。』

目の前に突きつけられた銃口を手のひらで押しのけて、わたしは立ち上がった。

『あなたは、それでいいんですか?』
「ーーーーーッ。」

言い淀むギンの姿を横目に踵を返す。
サンジのところへ駆け寄ろうとした時、ヒレの中央にいたルフィが脚を大きく振り上げた。

「んぬううう〜〜っ!!あああああ!!!」

「バカよせ!!こいつらに手ェ出すな!!」
「何する気だ あの野郎っ!!」

『………ルフィくん…?』

各々がルフィの行動を注視する。
そして雲を抜けて高く高く伸び続けた脚を、ルフィは全身を使って振り下ろした。

「ゴムゴムの!!!戦斧オノーー!!!!」





See you in the next story………

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