ーーードバァン!!

『ぅわあぁ!!!?』

衝撃音と共に大きく水飛沫が上がる。船が激しく揺さぶられて立っている事もままならず、わたしは床にしゃがみ込んだ。

「ヒレが!!!!」
「砕けたァーーーっ!!!」

雨のようにバタバタと降る飛沫の中、わたしは顔を上げる。
目の前には割れた『ヒレ』が波に揺れてる。先程の衝撃波のせいだと理解しつつも、でもあまりの光景にわたしは言葉を失う。
頭が真っ白になって、ただただ現状を作り出したルフィを見ることしか出来なかった。

「あの小僧、妙なマネを……!!ギン!!ゼフの頭をブチ抜け!!!!」

遠くでクリークの怒鳴り声が響く。

「 ! ………しかし………。」
「おい。おれはお前たちに手ェ出してねェぞ。『ヒレ』割っただけだ。」

ルフィはゆっくりと身体を起こし、こちらを振り返る。

「てめェ 雑用!!何のつもりだ!!!!」

サンジが慌ててルフィに掴みかかる。が、ルフィは至って冷静なままサンジを見る。

「この船 沈める。」

そしてルフィは迷いなく言い放った。その瞬間、各々が一斉に声を荒げた。

「ああ?!!何つった、あいつ今!!!」
「船を沈めるだと!!?」
「ふざけんなァーーーーーっ!!!」
「……!!!ギン!!!モタモタしねェでゼフを殺せ!!!」

敵も味方もみんなが怒声をあげるなか、わたしはただルフィを見つめ、それからそっとバラティエを見上げた。

(…………バラティエが、沈む……?)

「てめェ正気か クソ野郎!!!おれが今まで何のためにこの店で働いてきたと思ってんだ!!」

サンジはルフィに掴みかかり、怒鳴り声をあげた。

「だって、船ぶっ壊せば あいつらの目的なくなるじゃん。」

ルフィはこの場の誰の視線も気にせず、サンジに言い放った。周りからは非難の荒らし。でもわたしの隣にいる父親だけは、少し嬉しそうに表情を崩したのが見えた。

「てめェがおれの受けた恩のデカさとこの店の何を知ってるんだ!!」
「だからお前は店のために死ぬのかよ。バカじゃねェのか!!?」

ルフィは掴みかかるサンジの手を払い、逆にサンジの胸ぐらをグッと掴む。

「死ぬことは恩返しじゃねえぞ!!!」
「!」
「そんなつもりで助けてくれたんじゃねェ!生かしてもらって死ぬなんて、弱ェ奴のすることだ!!!」

すごい剣幕でルフィが怒鳴る。

「ーー! じゃあ他にケジメつける方法があんのか!!」

でもサンジもまたルフィの胸元を掴み、ルフィを睨みつける。お互いに主張を譲らない。今が海賊との戦闘の真っ只中だと言うことも忘れていそうな気迫だ。

それを見てたら、不思議とわたしのなかで熱り立っていた感情がもう無くなってることに気がついた。

(……サンジくんを止めようって、あんなに怒ってたはずのに…。サンジくんに、もういいよって…言って止めようって……。)

水を被ったからか、目の前の状況に驚いたからか。まるで肩の荷が降りたように、今はさっきより冷静にサンジを見られる。
理由は分かってる。たぶんきっとなんとなく、ルフィがサンジの目を覚ますきっかけになるんじゃないかって思えたから。
サンジやみんなが居るなら、わたしはバラティエが沈んだとしても構わないと思えてしまったから…。


「まァケンカはよせよ キミ達。キミらの不運は、ただこのクリーク海賊団を相手にしちまったことだ。」

サンジとルフィの譲らない剣幕の間にパールが割ってはいり、父親とわたしを指差した。

「どうせ何もできやしねェだろ!!あの人質がある限りな!!ファイヤーパールで燃えて死ねェ!!!」

両手の盾をガキンとぶつけ合わせて、パールはサンジとルフィを目掛けて襲い掛かる。それと同時に、わたしの目の前には拳銃が落ちてきた。

ドブオ…ン!!と鈍い金属の破裂音がして、顔を上げた先には、後ろにいたはずのギンが鉛玉の付いた武器を手にパールの鎧を粉々に砕いて立っている。

「悪いなパール。ちょっとどいてろ。」
「何で…!!?ギン…さん…!!?」

パールはその場に倒れた。
「ギン てめェ!!裏切るのか!!!!」クリークの怒声が飛び、クリーク海賊団の人たちがギンの奇行を嘆き叫ぶ。

「申し訳ありません、首領ドン・クリーク。…やはり我々の…命の恩人だけはおれの手で葬らせてください。」

そう言ってこちらに振り返るギンの表情は、まだ少し躊躇っているようにも見えたけど、先程までと顔つきが変わっていた。

わたし達への監視の目がなくなるとすぐにカルネとパティがオーナーの元に駆け寄ってきてくれた。身体を起こそうとするオーナーを手伝い、それぞれがギンの行動を注視する。

「血迷ったかギン…。海賊艦隊戦闘“総隊長”よ。」

ギンの行動に納得してないクリークは、でもそれ以上は口にせず適当な場所に腰掛けて成り行きを見る。
サンジはギンと相対する形となり、胸ポケットからタバコの箱を取り出して一本を口に咥えた。

「サンジさん、あんたには傷つくことなくこの船を降りて欲しかったんだが、そうもいかねェようだな。」
「あァ、いかねェな。」
「だったらせめておれの手であんたを殺すことが…、おれのケジメだ。」
「………ハ……、ありがとうよ。クソくらえ」

タバコに火を付け煙を吐き出したサンジは普段の調子で返す。

(ーーあ、戦いが始まる……。)

流れが変わった。決してこちらが有利になった訳じゃないけど、でも、一方的で理不尽な状況では無くなった。人質が解放されたことでサンジの様子にも明らかな余裕がみえる。

怪我してるし、血も流してるし、全然万全な状態じゃないのは誰の目から見ても明らかだけど、わたしはグッと握った拳を胸に当てた。

大丈夫。
根拠なんてない。でもきっと大丈夫。
だって、サンジの背中が「負ける気なんかねェ」って言ってる気がしたから。



Order 【 13 】





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