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7月18日。ついにNASAエイリアンズが日本にやって来た。日本到着早々ホーマーによる写真付きメールが秋を襲った。
どうやらホーマーの話によると、日本に到着早々賊徒大学という大学生と信善試合を行うそうだ。

「賊徒大学〜〜!!フリルドリザ〜ズ!!」

というわけで、泥門デビルバッツマネージャー加賀秋。ヒル魔からの指示もあった為に偵察真っ最中である。
賊徒大学の総番である葉柱斗影は、只今絶賛ヒル魔の奴隷な葉柱ルイの実の兄である。
賊大フリルドリザーズ。まさに昭和のヤンキー漫画な世界観漂うチームであるが、秋は結構好きな雰囲気であった。
試合開始後すぐに、エイリアンズのSPに追い掛けられ逃げ帰って行く黒服に身を包んだセナとモン太を目視したが、秋はスルーする事にした。

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信善試合の偵察を終えた秋が泥門に戻って来ると、既にアメフト部は部活を始めていた。彼女の帰還に気付いたヒル魔がニヤリと笑って近付く。

「おー、どうだった。ネットストーカーのシャトルパスは」
「もー、面白がんないでくださいよー」

このやり取りで秋がエイリアンズvsフリルドリザードの信善試合の偵察をしていた事を知ったセナとモン太は、行かなくても良かったのかもしれないと少し後悔した。が、実物のシャトルパスを見たのでまぁ良しとしておこう。
ヒル魔の問いに秋はグッジョブサインを作って答えた。

「ホーマー、肩強いだけでノーコンだなーと」

秋の偵察結果を聞くとヒル魔はやっぱりなと呟いた。過去のエイリアンズ動画を観た感じある程度は予想はしていたのだろう。本日撮影したホーマーのシャトルパス動画をヒル魔に見せながら秋が補足する。

「んで、レシーバーのワットが調整して合わせてる感じですね」
「ケケケ、メール見た感じだとホーマーもバカだからな。直感型のレシーバー任せ野郎だろ」
「脳筋だ!」

言い得て妙である。
ホーマーのシャトルパスはとても力強く、肩が強い為にボールはよく伸びるが毎度ブレがある様に感じた。

「シャトルパス対策は、ホーマー潰しのブリッツがある」

ブリッツとは全員が持ち場を放棄してクォーターバックに突っ込み、後方守備をほぼガラ空きにさせる一か八かの超攻撃型ディフェンスである。先ほど説明され練習したブリッツというフレーズを改めて聞いて、泥門アメフト部の面々の背筋が伸びる。

「まー、それしかないんでしょーけどー」

秋はそうして、今度は栗田たちライン組へ顔を向けた。

「シャトルパスだけじゃなくて、ラインの筋力差もエゲツないんですよー」
「やっぱり…本場の筋肉って感じだぁ…」
「いやぁ、認めたくないですけど。ホーマーもライン達もいい筋肉してました…」

グ…、と心底悔しそうに拳を握り締めて言う秋。どうやら彼女、筋肉フェチの入り口に片足を突っ込んでしまったらしい。

「ここばっかは弱点とかそーいうの見つからないし、泥門も負けじとマッスルになるしかないですねー」

筋トレ増やしてみては?なんて本気なのかふざけてるのかは定かではないが、彼女が言う事にも一理あった。栗田だけならいざ知らず、大吉は身長がネックになるし三兄弟には筋力も経験も諸々と足りないのだ。基礎的な筋力差が勝敗を分ける原因になりそうだ。


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栗田の家である孟蓮宗という寺で外国人高校生集団飲酒事件があったらしい。この時期の外国人高校生といえばNASAエイリアンズのメンツしか考えられないが、御名答。翌日のホーマーからのメールで秋はそれを知ったのだった。

「栗田先輩〜?昨日は"お楽しみ"だったみたいですね〜?」
「ど、どうしたの秋ちゃん…!」

昼休みに栗田の教室へやって来た秋はの顔色は随分とゲッソリとしていた。
昨日というフレーズに、栗田は思い当たる節があった。それはもうあり過ぎるくらいにあった。
ほぼ毎日早朝、どころか夜中2時から朝練を行うMr.ストイックこと栗田良寛。そしてその1番弟子小結大吉。その朝練に参加したいとのことで、大吉は勿論セナとモン太も栗田邸に宿泊する事になったのだ。
そこで偶然出会ったエイリアンズのメンバーと何故か意気投合し、法事で余った寿司をみんなで囲んでいたら知らぬ間に酒が飛び交うパーティーになってしまったのだ。

「はい、ではホーマーから届いたメールをご覧ください」
「え?メール?」

おもむろに取り出した秋の携帯。その液晶画面にはいつも通りのホーマーからの長文イングリッシュが刻まれていた。

"親愛なる秋へ。
昨日、泥門デビルバッツの選手と寺で寿司パーティーをしたんだ!君もいるかと少し期待したけど残念だったぜ…。けど偶然ってのは凄いなと思った。
後半ははしゃぎ過ぎて覚えてないんだが、泥門デビルバッツのセンターラインから秋の話を聞いたことは覚えてるぜ!
君が昨日の信善試合を観て、俺を最高にクールだと褒めていたってな!
信善試合に来てくれてたなんて気付かなかったぜ!直接会いたかったが、同じ日本にいるんだ。それだけでも俺は幸せだし、それに試合本番に会えるんだ。明後日、楽しみにしてる。お互いに頑張ろう!"

「ぼ、僕英語わからないよ〜…!」
「昨日栗田先輩の家でエイリアンズが何故か寿司パーティーして、そこであたしがホーマーを褒めてたなんて栗田先輩が言った!」

頑張って翻訳したメールの内容を簡潔に説明すると、顔を引き攣らせた秋は栗田の席に手をバシンと叩き付けて怒りの声を上げた。

「あたしが!いつ!ホーマーを!最高にクールだなんて褒めてたんですか!」

ヒャアア〜!!と栗田、心の悲鳴。
昨晩、エイリアンズの面々に英語で話し掛けられてほぼカタコト英語で話していたので、栗田の話が変なニュアンスでホーマーに伝わってしまったのだろう、と。大吉のパワフル語は世界共通だった故に流暢に話していたが。

「ホーマーくんが秋ちゃんのこと凄く聞いて来たから、シャトルパスを褒めてたよって教えてあげたんだ…」
「褒めたのはシャトルパスじゃなくて筋肉ですけどね!」
「そ、そうだっけ…!それで、ワットくんが通訳してくれたんだけど…」

そうしてモゴモゴと口籠る涙目な栗田の姿に、秋はハァーーーとドでかいため息を吐き出してしゃがみ込んだ。
突然しゃがみ込んだ秋に驚いた栗田が席から立ち上がり、大丈夫?と吃りながら声を掛けると彼女は不貞腐れた風に呟いた。

「…ワットが変な通訳したって事ですかー」
「う、うん。多分…」

栗田の返事を聞くと秋は一気に立ち上がった。

「もー!そんな顔されたらこれ以上責められないじゃないですかー!」

栗田先輩だから許してあげますよー!だ!と叫びながら教室から飛び出して行った秋の背中を見つめつつ、栗田は罪悪感に苛まれるのであった。


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