03

そうしてお次のエイリアンズの攻撃。ブリッツ増やすぞ、との宣言通り今回は黒木、石丸、佐竹がホーマーに突っ込んだ。3名はマッスル達に捕まってしまったが、なんとか小柄な大吉がその間を潜り込んで突破した。

『決まったー!シャトルパス投げる前に撃沈ー!!』

ホーマーの懐に勢い良く突っ込み、ブリッツ成功。歓声が上がるフィールド内に止まるな!というヒル魔の声が響いた。

「……!!」

そうして、自身のタックルでブリッツが成功したと踏んでいた大吉は目を見開いた。ブリッツを受けたホーマーがニヤリと笑ったからだ。

「え…?」

倒れながら体勢のまま投げたホーマーのボールは勢い良く上空へ飛び上がり、敵陣に辿り着いたワットの手の中に綺麗に収まった。
一瞬何が起きたか把握できなかった泥門デビルバッツの面々だったが、審判がタッチダウンと叫んだ為に事態を把握した。

『なんと、ホーマーくん!倒されながら上半身だけでシャトルパス発射!!』

大吉のタックルさえ無効化するアメリカ仕込みのその肉体。マッスルと言わずしてなんと言おうか。
興奮気味のアナウンサーの実況にフィールド内に歓声が湧き上がる。
見事にシャトルパスを成功させた為得意げにマッスルポーズを披露するホーマーは、今度は泥門サイドのベンチに座る秋へ求愛の投げキッスを飛ばして来た。

「煽ってんのかこの糞ロン毛ー!!」

しかし儚くもその求愛は拒絶された。
どこかの悪魔の様な秋のその怒声に、まもりは色んな意味で頭を抱えたのだった。


▪︎


筋肉の差でどうしても上手く立ち回れないラインに、タックルしてもシャトルパスを繰り出すクォーターバック。泥門デビルバッツ、開始早々大ピンチである。
そうしてそんな中、彼らが得意とする攻撃ターンになった。

『マッスル守備の前に、泥門の攻撃は空回りだー!!』

しかしマッスルバリヤーの前では泥門のラインは歯が立たずパス失敗。更にアイシールド21のランも、盾の石丸ごとバリヤーに弾かれ見事に失敗に終わってしまった。

「2人まとめてだなんて…!」
「バリヤー、なんとかならないかな…」
「今から筋トレ行く以外ムリですよー!元々の骨格も筋肉量も違うんですからー!」

頭を掻きむしりながら秋が吠える。
攻撃特化型チームだというのに、泥門は全く身動きが取れない現状になっていた。
そのままエイリアンズの攻撃に切り替わってしまう。

「!!」

エイリアンズの攻撃が始まると同時に、十文字がタイトエンドのサムの袖を引っ張って張っ倒した。それは太陽スフィンクス戦で活躍した不良殺法であった。
そのまま十文字はホーマーにブリッツを決めたが、やはり彼は倒れながらにしてシャトルパスを見事に発射させてしまった。
これでタッチダウンが2回目となり、14-0。このまま行くと泥門の日本退却は目前である。

「なんだ、あの糞タックル!パワー負けしてんなら全身で上からねじり伏せやがれ!!」

マシンガンを反射して怒りを露わにするヒル魔の背中を掴みながら栗田が必死に止めた。
頑張ってみたものの、同じ事を2回繰り返しで行った為にヒル魔の怒りが爆発した様である。


▪︎


「ちょっと、ちょっと」

エイリアンズのマッスルたちに叩き出されて尻餅をついていたセナに、秋が手招きをして声を掛けた。

「なんで腕、狙わないの?」
「…え?」

腕?セナが思わずオウム返しした。

「シャトルパス、ホーマー右腕で投げてんじゃん?だからホラ、ブリッツの時腕狙っちゃえば良くない?」

右腕を振りかぶってホーマーのシャトルパスを真似る動きをして説明されると、少し考えたセナはハッとした。
確かに人間の構造上、腕を押さえ込まれたらボールは投げられない筈だ。確かにとセナが納得していると、ヒル魔が会話に加わって来た。

「そりゃそうだが、当然向こうもそこだけは守ってんぞ」
「えー。でもホーマー調子乗ってるし、出鼻挫いてやりましょーよー」

駄々を捏ねる様に文句を垂れた秋に、ヒル魔がケケケと笑って言った。

「だから、守る暇もねースピードで突っ込め。行けるか?」
「…やってみます!」

ヒル魔の言葉にセナが力強く頷いた。
その様子を此方もうんうん頷いて見ていた秋の背中に、ヒル魔による無言の蹴りが炸裂した。


▪︎


「なにィィイイイ!!?」

エイリアンズの攻撃。先程立てた作戦通り、セナがホーマーへブリッツをしに突っ込んだ。一瞬ゴンザレスにブロックされた為、彼のブリッツは間に合わないとホーマーは考え、そのままシャトルパスを発射させようとした。
しかしホーマーがまばたきをした瞬間、届かないだろうと舐めていたアイシールド21が突然彼の目の前に移動して来たのである。

「なんだ!あの最後の加速!!」

ホーマーだけではなく、エイリアンズの選手たち、ポアロ、身内ですら驚きの悲鳴を上げた。

「アイシールド21をナメた時!テメーらが負ける時だ!!」

ヒル魔が挑発の言葉を叫ぶと同時に、ホーマーとアイシールド21によるボールの奪い合いがスタートした。勿論筋力差では圧倒的にホーマーが勝っている。だがアイシールド21はボールを持つホーマーの右腕に飛び付きガシリとしがみ付いていた。
ぶらんぶらんと振り回されながら、貧弱な彼はフンヌラバッ!と火事場の馬鹿力を出してホーマーの手からボールを奪い取った。

「よっしゃー!!」

これにはこの提案をした秋が歓喜の声を上げる。
ホーマーを倒してボールを奪い取ったアイシールド21は、襲い掛かるエイリアンズのマッスルたちから逃げまくり、そうして大便男のゴンザレスの目の前で急ブレーキを掛けて停止した。

「ビッグ!ユースフル!」

両腕を振り上げ、目の前で立ち止まる小柄な彼を捕まえる為にその上げた両腕を振り下ろしたゴンザレス。しかし捕まえた衝撃は無く、彼の両腕をは空を切った。
アイシールド21はゴンザレスのビッグユースフル!を急加速で避けると、そのまま独走した。

「タッチダ〜〜ゥン!!」
「「おっしゃ〜〜〜!!!!」」

ピィイイ!という笛の音が鳴り響くと、泥門デビルバッツの面々だけでなくフィールド中から歓声が上がった。
小早川セナが訓練せずに手にした、ムラのあるスピード。それがこの急加速、チェンジ・オブ・ペースだ。


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