05

アポロをギャフンと言わせた事により泥門デビルバッツの士気はかなり上がっていた。更にそんな流れで次の攻撃権は泥門である。前半残り2分。超攻撃型の泥門、始動なるか!

「あ!!」

泥門の攻撃、ボールはアイシールド21に渡っていた。スピードでは泥門が勝っている、と次々とエイリアンズの選手を抜きまくっていた彼であったが突然目の前に現れた小柄な選手に倒されてしまった。

「小さいからって…ナメンナヨッ!」

エイリアンズ、ラインバッカーのゴンザレス(弟)であった。
ゴンザレス(兄)はパワー型の大型宇宙船なら、彼はすばしっこく小回りの利く小型船。解説の熊袋がそんな例えを出したが、まさにその通りであった。
アイシールド21のスピードに合わせて彼が起用された様だ。
ちなみに補足であるが、ゴンザレス(兄)のタトゥーの意味は「大きくて役に立つ男」らしい。それを漢字にした結果大便になってしまったのだが。と言う事は、だ。

「俺は、小さくて役に立つ男だっ!」

ゴンザレス(弟)の右腕には、尊敬する兄とお揃いの小便の漢字が刻まれていた。
大便小便コンビだと笑いの声が所々響いたが、全く笑い事ではない。
ゴンザレス(兄)が中央をパワーで塞いで、ゴンザレス(弟)が大外の走りをすばしっこさで止める。この兄弟の存在はかなり厄介だ。


▪︎


結局ゴンザレス兄弟に阻まれタッチダウン成らず前半が終了してしまった。

「…8点差なんだけどー」

名前の通り息切れするハァハァ三兄弟にスポーツドリンクやタオルを手渡した秋が不満気にボヤいた。

「見返そうね!って約束はどうしたー!」

ベンチではなく地面に座る3名に、あの日の気合い入れと同じ動きを繰り出した秋。疲れ切った三兄弟は彼女の左手に自身の手を乗せる事はせず、座ったまま不貞腐れた風に悪態を付いた。

「うるせー…お前もあのアメリカ人にぶつかって来いよ」
「死んじゃうでしょ」

エイリアンズ側のベンチを軽く指差して文句を垂れる黒木へ、秋は真っ当な返事をして見せた。確かに女の身体でぶつかったら肉片が弾け飛ぶかもしれないな、なんて物騒な思考を働かせた漫画脳の戸叶。彼はなんとなくエイリアンズ側のベンチへ視線を向けた。

「なんか手ぇ振ってんぞ」

するとどうだ、そちらには明らかに此方へ手を振る選手がいた。
戸叶の指摘に、3名が一斉にエイリアンズのベンチへ視線を動かす。それがホーマーだと気付くと、秋はチロチロと指先だけで返事をしてやると即座に十文字の両肩をガシリと掴んだ。

「マジで勝ってもらわないと困るんだけど…!」
「…俺らだって手ぇ抜いてる訳じゃねぇ。わかってんだろ」

わかってるけどさぁ、とボヤく。
十文字に掴むなどけ、と退かされた秋がポツリと言葉を漏らした。目線は明後日を向いている。

「このままだとあたし、バイリンガルになってしまうかもしれないんだ…」
「ハ?」
「はぁ?」
「はぁあああ?」

バイリンガル。2言語を巧みに使える者。つまり今回で言うと日本語と英語がペラペラになる、と言う事である。
意味不明な秋の発言に三兄弟だ顔を顰めていつものアレを繰り出すと、彼女は簡潔に経緯を説明した。アメリカ行きになったらホーマーから逃げられない!そうしてその説明を聞くや否や、黒木が思いっきり吹き出した。

「お前外国人にはモテんだな!」
「喧嘩だ!お前は今あたしに喧嘩を売った!」
「受けて立ってやろーじゃねぇか!」
「後悔させてやる!」
「「格ゲーで!」」

今できねーな。戸叶の一言で2名の喧嘩は終焉を迎えた。


▪︎


大掃除作戦。
ヒル魔が考えていたお次の隠し球である。大掃除、とはスイープと呼ばれる戦法のことである。
異次元バッグなのか、それともバッグすら脅迫されて無理を強いられているのか。不明なところは多々あるが、フィールドのジオラマをヒル魔がバッグから取り出した。模型部が"快く"作ってくれたアメフト選手の模型をジオラマの上にセッティングするとヒル魔がスイープの説明を始める。

「要するに、外側守ってるゴミ共が邪魔して進めねーわけだろ?」

言葉が悪過ぎる。

「はい、盾は石丸さんしかいないし…」
「ごめんな…」
「い、いや…あの、そういう意味じゃ…」

陸上部助っ人、石丸哲夫を無自覚に傷付けたセナがなんとか取り繕おうとするも彼のネガティブな心は和らがなかった。

「なら話は早ぇ!」

言いながら、地面に落ちているプリッツの屑を掃除していたまもりの箒を彼女ごと捕まえたヒル魔。

「誰かが先に走ってって!ゴミを全員スイープ!!」

まもりごと箒を自在に操り、ジオラマの上に乗る模型たちをガサツに掃き飛ばした。飛ばされた模型たちは地面にゴトゴトいって落下して行った。
模型部のみんな、見てる?ちゃんと活躍したよ!カメラに向かって模型部の面々にアピールする秋の横で、黒木が恐る恐るヒル魔に尋ねた。

「誰がやんだよ、そんな役…」
「テメーらライン組全員だ!!」
「ハァア!?」

ある程度予想していた十文字とは違い、黒木と戸叶は予想外と驚きの声を上げた。
簡単に彼らの役割を言えば、ライン組全員でアイシールド21の護衛をするという事だ。

「寄ってくる敵は全部スイープしろ!理屈もクソもねー力押しだ!!」


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