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その後もスイープを駆使して泥門はファーストダウンを連続で取り続け、そうしてアイシールド21がタッチダウンを決めた。
これで14-12。しかしまだ2点負けている。だが、ホーマーのシャトルパスの対策はブリッツでなんとか対応できているし、次のエイリアンズの攻撃を防げばスイープでまた追加得点を決められるだろう。
「…やばいなぁ」
ノリに乗って来た泥門デビルバッツの面々が喜んで有頂天になっている中、秋がボソリと呟いた。さっきまで手放しで喜んでいた彼女が急に静かになったのもあり、まもりが不思議そうに尋ねた。
「どうしたの?」
「いや、パンサーが土下座してて…」
秋が指差した先には、エイリアンズ側のベンチに座るアポロに土下座するパンサーがいた。
きっと試合に出させてくれと懇願しているのだろう。
それにしても土下座とは。
ホーマーからのメールで書いてあった、ワットに教わった土下座だろうか。ジャパニーズ土下座がアメリカチームの中で主流になっているのかもしれないと一瞬思ったが、不思議そうなホーマーとワットの表情を見る限り多分パンサーが何処か別の場所で仕入れた物かもしれない。
しかしアポロはパンサーの脳天に唾を吐きかけた。それは拒絶という意味であろう。
「このままリードなんかしたら、パンサー出て来るかもしれません」
わかんないですけど。秋が補足した。
アメリカ行きを回避したい為に出てこないで欲しいと心底思っているが、果たしてどうなるか。
▪︎
その後のシャトルパスでタッチダウンを取られ離されたが、モン太のキャッチ、そしてアイシールド21のランで連続タッチダウンを決めた。
『逆転ーッ!!』
21-26。
ついに、泥門デビルバッツがNASAエイリアンズにリードした。
しかしまだ10点差には至らない。泥門メンバーが日本に滞在し続けるには、ここから更にタッチダウンを1本取らなければいけない。
エイリアンズはパスが主体のチームだ。シャトルパスを防げればタッチダウンは難しくない筈、と皆が考えていた。
と、秋がベンチから離れてふらふらとヒル魔の元に近寄って来た。
「ヒル魔先輩〜…」
「あ?」
秋の意味深な目線を追いかけると、ヒル魔は彼女の表情の意味に気付いた。
エイリアンズの選手たちが、パンサーを筆頭にアポロへ土下座していたのだ。このままでは勝てないと焦ったエイリアンズの選手たちが監督にお願いしてるのだろう。
「ケケケ、体力のクソ有り余った黒豹のお出ましだな 」
「ヤダ〜〜…」
パンサーを試合に出してくれ、と。
▪︎
エイリアンズ選手たちの土下座のお陰なのか定かではないが、泥門に10点差を付けて勝つ為にパンサーが導入されてしまった。
よくあのアポロがパンサーを試合に使う事にしたな、とは思うが彼にも焦り以外、思うところがあったのだろう。
『さぁ!キックオフから試合再開!エイリアンズの巻き返しはあるのかっ!』
キックオフのボールをキャッチしたのは、導入されたばかりのパンサーであった。
近くに来ていた大吉と栗田がブロックで立ち塞がったが、パンサーは意図も容易く2名を抜き去った。
いや、これは抜き去ったのか?観客だけでなく、泥門メンバーも信じられないと目を見開いた。
「いいいい!?」
「すり抜けた…ッ!?」
「…違う!」
"すり抜けた"様に見えた為に泥門メンバーが仰天する中、秋が否定した。
彼女には、パンサーが2名を抜いた瞬間がしっかりと見えていた。すり抜けた、なんてそんなオバケみたいな技ではない。
「手で押してる!!」
アイシールド21の激しい走りとは反対に、パンサーのそれは非常に軽いものであった。
軽やかなステップで、立ち塞がって来る泥門選手たちを無駄なく腕を使って抜き去っている。動きは至ってシンプルであるが、その足の速さによりすり抜けた様に見えてしまったのだった。
まさに「無重力の脚を持つ男」である。
「止めろ糞チビ!テメーが最終防衛線だ!!」
ヒル魔の指示でアイシールド21が爆裂加速、チェンジ・オブ・ペースでパンサーを追いかけた。
しかしセナの走りの速度にはムラがあり、一瞬追い付きそうになったもののそのままパンサーに引き離されてしまった。
全速力で走って追い掛けていた相手に引き離される絶望感。生まれ持っての才能黒人の強靭な肉体に、アジア人の脚で追い付けるのか。
タッチダウンを簡単に取られてしまったセナは、初めての感情に絶望と驚愕で暫く立ち尽くしてしまった。