08

パンサーの加入によりエイリアンズが再逆転。
泥門の攻撃で有効だったスイープは、パンサーの加入で意味を為さなくなった。しっかりと攻撃権が奪われてしまい、お次はエイリアンズの攻撃となる。

「問題はエイリアンズの攻撃だ」
「シャトルパス&パンサーの走りか…」
「はは…どっち守ればいいんだろう…??」

セナは何故か口角が上がってしまった。どうすれば良いかわからなくなると人は笑ってしまうのだろう。
今までパスにだけ意識を向けていれば良かったからこそエイリアンズに張り合えて来た泥門。ランもパスもどちらも守らなければならなくなった為に妨害が疎かになり、シャトルパスで20ヤードの前進を許してしまった。
泥門ベンチからは悲痛な声が滲み出ていた。秋である。

「くっそ〜…!10点差がうんたらの前に、ホーマーが一々見てくんのがムカつく!」

シャトルパスを褒められたと思っているホーマーは、自身の格好良さをアピールしているつもりなのだろうが全くの逆効果であった。頭を掻きむしってイラつきを隠す気がない秋に、まもりがその怒りを収めようと声を掛けた。

「ほ、ホーマーくんも悪気があるわけじゃないだろうし…!ねっ?」
「悪気ないのが一番タチ悪いんですよ…!」

悲痛な叫びが地久フィールドの片隅に児玉したが、会場中の注目は最速勝負であるアイシールド21とパンサーの一騎打ちへ向いていた。
ボールを運ぶパンサーにアイシールド21が一瞬追い付いたが、フワリと軽いステップで抜かれてしまった。アイシールド21が瞬間的にしかトップスピードを出せない反面、パンサーは常にトップスピードを維持出来る。その差のせいでなす術なくタッチダウンされてしまったのだ。
パンサーのタッチダウン後33-26。7点差でエイリアンズにリードされてしまった。

「…どうしよう、7点差になっちゃった」
「一応、タッチダウン後のボーナスゲームで2点取れれば同点…だけど…」
「筋肉の質がまず違うから、太陽戦でやったデビルバットダイブが決まるかもわかんないですよ…」

しかしそのボーナスゲームもタッチダウンする前提の話である。泥門メンバーは試合開始から攻撃と守備で両面出ておりただでさえスタミナの消費がエゲツないのだ。そんな彼らが、元気が有り余っている手が付けられない程速い黒人を相手にするなんて不可能に近い。
ハンデが無かったとしても、アイシールド21の現在の能力でパンサーに追い付くのはかなり難しい話だろう。

『さぁ両チーム、最後の力を振り絞って…ラスト1分ーっ!!』

アイシールド21のラン、モン太のパスとヒル魔の指示の下泥門は次々と攻撃を繰り出した。しかしそれらは全てパンサーに妨害されてしまい、次が4回目の攻撃であった。
残り1分。時間的に考えれば、この次の攻撃が泥門デビルバッツ最後の攻撃となる。

「モン太ー!うしろ!パンサー来てるー!!」

秋が必死になって叫ぶ。
最後の攻撃、ボールはモン太にパスされた。
しかしモン太がキャッチする筈だったそのボールは、彼の後ろからやって来たパンサーにリーチの差で奪われてしまった。パスカットを見事成功させたパンサーは、即座にタッチダウン目指して加速した。

『これは劇的な幕切れとなったーー!泥門の攻撃から一転!パンサーがそのままタッチダウンへ!!』

このままだと14点差になってしまう。小さくなっていくパンサーの背中を、焦った泥門のメンツが息も絶え絶えで追い掛けた。しかしスタミナ切れ、尚且つパンサーのスピードに追い付ける筈もない。
このままパンサーがタッチダウンをするのを見届けるのか?一瞬頭に浮かんだが、彼の前にアイシールド21が立ち塞がった。

「間に合った!!」

しかしパンサーの腕に押されかわされてしまう。腕でおされてしまった彼は再びパンサーを追い掛ける。と、ここでアイシールド21、否小早川セナは疑問を抱いた。
なんでパンサーは腕で自分を押せたのだろう?と。
そうして彼は気付いた。パンサーが自分を押すその一瞬、両手で抱えていた筈のボールをスキのある片手持ちに変えることに。


▪︎


パンサーの手から飛び出たボールをキャッチしたアイシールド21は、ライン組やヒル魔の力を借りて敵陣へ辿り着いた。

「タッチダーウン!!」

刹那、地久フィールド中から歓声が上がった。

『ドラマは最後に待っていたっ!泥門、33-32と一点差に迫るー!!』

残り時間はなんと1秒。タッチダウンを取ったのでこの後は泥門最後のボーナスゲームとなる。
なんだか太陽戦と似た様な状況になったが、キックで同点、タッチダウンなら1点差で勝利となる。

「よーし糞チビ!デビルバットダイブで…」

ヒル魔が言い掛けて、言葉を止めた。
最後の力を使い切ったアイシールド21が、その場で倒れ込んでしまったからだ。


▪︎


あの後、アイシールド21が倒れた後のボーナスゲームはタッチダウンを狙い行ってエイリアンズに潰されるという幕引きとなった。

「頑張ってたじゃん、三兄弟!」

暗い顔してベンチに戻って来た三兄弟の背中をベシベシベシと順番に叩いて、秋が言った。

「イッテェ」
「なにすんだよ」
「…負けただろーが」
「まーいいじゃんいいじゃん!お互いに10点差にはならなかったんだし!

あんなにエイリアンズに負けたくない!アメリカに行きたくない!と顔を青ざめてみんなに圧を飛ばしまくっていた秋が、何故かこんなにハイテンション。
本来ならモン太くらい落ち込んでもいいくらいであるが。
ある意味不思議でもあり、不気味でもあったのでその辺を十文字が尋ねてみると彼女はあっけらかんと答えた。

「え、だってエイリアンズも日本滞在じゃん?だからデート回避!」

確かに、と思えてしまう程至極真っ当な返答だった為、三兄弟は苦笑いしか出来なかった。
そんな秋の元へ大型犬の様にやって来たのは渦中の人物であった。

「秋…!」

勢い良く目の前に現れたホーマーに、秋が珍しく狼狽えた様子になる。
彼女、英文を翻訳してメールをしていたが英語自体は喋れないからだ。

「あー…えーと…やっほー、ホーマー」

後ろで突っ立ってこの状況を見物する三兄弟へ一瞬視線を向けたが、そういえばコイツらも英語喋れないなと思い出してとりあえず挨拶をしてみる事にした。
するとホーマーは片足を跪いて白馬の王子顔負けの動きで秋の左手をとった。

「な…なになになに!」
「会えるの、すげぇ楽しみにしてたんだぜ…!秋!直接会ってもキュートだ!」
「きゅーと!?初めて言われたんだけど…!」

名前を呼ばれた後、多分キュートって言われた!英語はわからないが、ホーマーの顔付きでわかる。
恋愛経験の無い秋には刺激が強過ぎたせいか彼女の頬はほんのり赤く染まっていた。直接的にアプローチされるって、こんなに恥ずかしいんだ!と彼女は学んだ。
とりあえず感謝でもしようと不慣れな英語でサンキュー…?と感謝の意を述べると、ホーマーは勢い良くのけ反った。

「く…っ!もうツーリングデートだ…!!」
「ホーマー!通訳!通訳!」

感情を爆発させたホーマーと、それに戸惑いまくる秋の元へ通訳のワットが走り込んできた。
そんなこんなあった後、学びあり色恋ありの白熱した対アメリカ戦は無事幕を下ろしたのであった。
2勝2敗、1引き分け。泥門デビルバッツの一学期の成績である。


20250615

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