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7月21日、夏休み1日目。泥門高校アメフト部の皆さんは、母国に帰れずパスポートを失ったエイリアンズ選手たちの代わりにアメリカ行きの飛行機に乗り込んでいた。即日日本退去。その名の通りの行動である。
エイリアンズ戦が終わると各自即一旦帰宅し、荷物持参で空港に集合した昨晩。まさか夏休み初日を機内で迎えるとは予想だにしていなかった彼らであった。

「おおおおおおお!!!」

夜中に恐怖で魘されるメンバーが数名いたものの、未知の国アメリカを視界に入れるや否や彼らのテンションは爆上がりしていた。エイリアンズ選手の人数分キャンセルした為に空席が目立つ機内で、窓にへばり付くセナ達が歓声を上げた。
雲の上から見下ろしても大きい。広大な国、アメリカ合衆国だ。

「見えて来たー!」
「アメリカ来たー!!」
「雲が下だよ〜〜!」
「ダァアッッシャァア!!」
「負けるかおりゃぁあああ!!」

窓際ではセナやモン太、栗田たちがはしゃぎ、その傍らではアメリカの地など全く意識せず座席に内蔵されたテトリスゲームで本気バトルを繰り広げる黒木と秋がいた。

「結局はしゃいでんじゃねぇか糞ガキ共」

あんなに魘されていた癖に、とヒル魔がケチを付ける。
そういえば。そんなヒル魔を振り返ると、セナがずっと気になっていた疑問点を口にした。

「今日って宿泊先は?」
「無し!」

ヒル魔の返答に、窓に張り付いていたメンツやテトリスに熱中するメンツ、その他全員が思わず彼を振り返った。
なんとなく、ヒル魔ならやりかねないとは思っていたがまさかそんな筈はないだろう。というメンバーの小さな希望をぶち壊す発言である。

「泊まる金なんざねぇぞオメーら!全部現地調達!」

この男が側にいれば別段野垂れ死ぬ様な事はなさそうだが、果たしてヒル魔妖一の脅迫手帳はアメリカにも通用するのだろうか。
どうなっちゃうんだろこの旅…。セナは青ざめながらボヤくのだった。


▪︎


空港に着くとヒル魔が最初の目的地に選んだのはテキサス州のビーチであった。何故?という疑問は頭をよぎったものの、練習三昧だった日々から一変。急に現れた自由時間に歓喜し、泥門デビルバッツの諸君は特に理由を考えず遊ぶ気満々のスイッチに切り替わっていた。
ビーチでスイカ割りを楽しんだ後更に自由行動となった為、英語が飛び交うテキサスビーチを1人で彷徨いていた秋。に、声を掛ける金髪マッスルアメリカンボーイ。に、怯える秋。

「わかんないってば!英語わかんないの!ノーイングリッシュ!」

必死に叫び、知っている限りの拒絶を表す英語を伝えるも、OKと言う割に中々身を引いてくれないマッスルボーイ。何故外国人にだけ好かれるのか?という驚きや悲しみ、英語を学んでおけば金持ちになれたかもしれないのに、という秋の後悔は数えきれないが兎にも角にも普通にタイプではないのでお断りしたいのだ。
英語を喋れるヒル魔やまもり、雪光が近くにいないかとビーチ内へ視線を向けるが全くいない。なんだったらヒル魔がいても助けてくれなさそうである。

「あ!」

もう誰でもいいからアメフト部誰か!と必死に辺りを見渡していると、フラフラと気怠そうにビーチを歩く黒木を発見した。

「ヘイ!黒木!ちょっと!」

秋の呼び掛けに視線を此方へ向けた黒木は、途端に嫌そうな顔を露骨にした。
金髪マッスルアメリカンボーイに肩を抱かれ、強張った顔を自身に向けるアメフト部マネージャー。この感じを見ればアホである黒木でも、秋からのヘルプミーである合図は認識できた。
やれやれと言いたそうに溜め息を吐き出すと、黒木は相変わらず気怠そうに秋たちに足を向けた。

「ソーリー!えくすきゅーずみー!」

言うや否や、秋はアメリカンボーイの身体を押し退けて近寄ってきた黒木の腕にしがみ付いた。
その行動でマッスルボーイは不満そうに英語をベラベラ喋った後2名から離れて行ったのだった。

「ったく、めんどくせェな」

マッスルボーイが見えなくなると黒木がボヤいた。

「あたし外国人にモテるっぽい」
「…つーかもういいだろーが!離せよ!」
「離すから一緒に遊んで!一緒に行動しないなら離さない!」
「結局どっちも一緒じゃねーか!」

利き腕を掴まれたら筋力差があっても簡単に振り払えない、とエイリアンズ戦で学んだ秋は黒木の右腕にしがみ付いたまま交渉を続行した。やいのやいのその後数分間揉めたものの、水着を着た薄着の女に思春期が爆発したのか黒木が折れて同行する運びとなった。

「また絡まれたらヨロシク!」
「めんどくせェ!」

とは言いつつも、喋りだすとゲームの話で盛り上がって来る2名。
格ゲーしに行きたいとか、夏休みにあれを全クリしたいとか、アレの新作が出るから買いたいとか。そんな感じでビーチに並んで座って話していると、秋が突然立ち上がって宣言した。

「城を作ろう!」
「ハァアァ?」

突拍子もないその提案に呆れた様子の黒木だったが、秋に強要されて城の土台を作り始めると意外に白熱してしまうのだった。

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