03
ビーチフットボール大会の勝利は無事デビルガンマンズの物となり、優勝賞金1000$と副賞のテキサス牛一頭が贈呈された。
「すご、牛も貰えんの?」
「貰っても連れて帰れねーだろ」
「えー、アメフト部で飼おうよー」
歓喜の声を上げて喜ぶセナたちを遠巻きで見届けながら、秋が突拍子もない発言をするもんだから三兄弟が無理だろ、と口を揃えて一掃した。
否定されたものの、彼女は既に牛の名前考え始めていた。そんな最中、決勝戦相手のTOO TA TTOOチームのベンチで横になる男が起き上がった。
「ウィップ…なんだ、負けちまったのか…!?」
その人物の顔を目視すると、秋は驚いた様に目を見開いた。近場でその人物と目が合った栗田はもっと驚き、目をひん剥いている。
それはヒル魔たちが中学生の頃の恩師、酒寄溝六であった。
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「どぶろく先生〜〜〜〜!!」
久方振りの再会にテンションがぶち上がってしまった栗田は、恩師に突進するという狂気じみた行動に出てしまった。
如何せん彼は自分の力やガタイの良さを把握しないで行動する事がある。よく言えば無邪気だ。
現役アメフト部センターラインである栗田のタックルを綺麗に受けたどぶろくの身体は、そのままインフォメーションの建物へ吹っ飛んで行った。
「危なーーーい!!」
「やべー!爺さんの体じゃ…!」
セナとモン太が焦った様に声を上げたが、どぶろくは建物の柱を両手でガシリと掴むと回転した後にピタリと止まった。危ねぇなこの野郎!と悪態をつくが、身体を横にしたままという重力ガン無視の行動である。
「紙みてぇに吹っ飛びやがって。3年のアメリカ生活ですっかり鈍ったな」
「うるせえ馬鹿野郎!栗田にいきなり飛び付かれて平気な奴がいるか!」
片腕の筋力だけで柱を掴み身体を固定させ、反対の手で酒を飲み始めたどぶろくに更に魔の手が迫る。栗田です。
「うおおん!会いたかったよ先生ーーー!!」
「んーーー!んーーーー!!」
悪気が無いのが一番タチが悪い、ということが目に見えてわかる現状である。
遠巻きから一連の流れを見ていた秋は、流石にどぶろくが可哀想だなと思ったのだった。
▪︎
「お前、秋か…!?アメフト部入ったのか!」
「どぶろく先生久々〜!ホント聞いてよ、もー!ヒル魔先輩超ムチャクチャ!」
競馬で2000万程借金をしたどぶろく、は国外逃亡ついでにアメリカで優秀なアメフト選手を育て泥門に送るトレーナー兼スカウトである。
ヤバいよねー!と同意を求める秋にどぶろくはうんうんと頷いて見せた。
「だけど、楽しそうにやってるみてぇじゃねえか!」
「どぶろく先生もそれ言うー!…まぁ、楽しまないと損だしね!」
過去ムサシにも言われた事があるその言葉。
自分が思っているよりも他人から見ると楽しそうに見えるのか、と秋は思った。
部活はしんどいしヒル魔は怖いが、案外楽しめてるのかもしれない。
そんなことを秋が考えていると、タクシーに逃げられたワイルドガンマンズの監督が頭を抱えて嘆き始めた。
「どうしよ…」
「後先考えねーんだから…」
どうやらビーチフットボール大会の2つの賞品はデビルバッツとワイルドガンマンズで山分けする予定だった様だ。賞金はデビルバッツ、テキサス牛はワイルドガンマンズの物になっていた。
しかしワイルドガンマンズが所有するベン牧場に牛を連れて帰ろうとしたが、タクシーに逃げれらたらしい。アメリカだとなんでも規模が大きいイメージだが、流石に巨大な牛がタクシーに入る筈もないだろう。
どうやって牛運ぶんですか、と監督を責めるキッドの声を聞くと、どぶろくが彼らを振り返って声を掛けた。
「俺のデコトラで運んでやろうか?」
というわけで。
どぶろくがベン牧場まで牛を運ぶ事になり、その代わりに宿無しのデビルバッツがベン牧場に一泊させて貰う事になったのでした。