04
本日の宿がベン牧場となった泥門デビルバッツの諸君。ベン牧場はテキサスからかなり離れた田舎である為、気軽に寄れそうなスーパーは無いだろうと判断しヒル魔たちは食材等の買い出しに出ていた。
買い出しメンバーはヒル魔、荷物持ち栗田、流れで着いて来た秋の3名である。
「デカいー!すごいですね、栗田先輩!」
「アメリカサイズだねぇ!」
栗田先輩より大きいですねー!当たり前のことを嬉々として喋る秋を無視すると、ヒル魔はさっさと入り口へ進んで行っていった。
ヒル魔が勝手に先に進んでしまうので、英語がわからない栗田たちは不安に駆られ早足で追い掛ける。コインを入れてからしか使えないカートに秋がケチを付けたが、なんとかゲートを超えてスーパー内へ入れた。
「やっば、広ー!」
「全部の規模が大きいね!ヒル魔、何買うの?」
「飲み物、食材」
「お菓子買いましょ!お菓子!」
「却下」
インスタントコーナーに迷わず向かうヒル魔を追い掛けつつも、栗田と秋はあちらこちらをキョロキョロ見渡して興味津々を露骨に態度で表していた。
先ほど却下されたお菓子が大量に売られているコーナーを見付けると、秋の瞳が一気に輝く。
「めっちゃあるー!お菓子めっちゃあります栗田先輩!見て!」
「わ〜!沢山あるね〜!どれもカラフルで美味しそうだ〜!」
「ワクワクしかないんだけどー!あ、これ計り売り!?ヒル魔先輩、ちょっとお菓子買いましょうよー!」
ズラリと並ぶお菓子の山。カラフルで煌びやかなお菓子コーナーで立ち止まる2名の語り掛けは一切スルーで、ヒル魔はその隣の棚にあるインスタントコーナーへ曲がって行ってしまった。
カートを押す担当の栗田はあわあわと焦った様子でヒル魔を追い掛けたが、秋はお菓子コーナーの計り売りを見詰めて動かずにいた。
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「すごー!!」
場所は変わり、とぶろく特製デコトラデビルバット号の荷台の上。アメリカの風を感じながらベン牧場へ向けてドライブ中である。
あらゆる箇所に漢字をばら撒いたどぶろく自慢のデコトラである。
乗る前に散々すごい!と感想を言った後であるが、直接風を受けるとまた違った感覚でセナは改めて感動していた。
「どーだ!デコトラデビルバット号!」
荷台から聞こえたセナの歓喜の声にどぶろくはご満悦で再度自慢を始めた。
「お前らに見せんのが楽しみでな!300万ほど借金して作った!!」
「後先考えないんだなぁ…」
既に2000万の借金を持ち、借金取りに追われて国外逃亡した男の話とはとても思えない。これはもう感覚がバカになっているに違いない。セナはどぶろくを参考にし、後先をしっかり見据え真っ当に生きようと決めた。
「道がすげーな」
「街を一歩出ると、もう地平線しか見えないんだね…」
初めて体験するアメリカの道に、黒木が言葉を漏らすと雪光が補足した。結構な距離を走ったつもりだが、荷台から見える景色は殆ど変わり映えのしない状態である。
「店ねーからな。食材買っといたぞ」
「えー!もう1000$全部使っちゃったの!?」
ヒル魔が言いながら先ほど購入したばかりの食料が入った袋を逆さまにして、バサバサと中身を荷台上にぶち撒けた。まもりの小言は一旦スルーして、乱雑に着地した食材、飲み物たちの中に一際目立つ彩り豊かなお菓子が見えると、ヒル魔の血管がブチブチブチと音を立てた。
「テメー!糞ビンボー!勝手に菓子買いやがったな!!」
「すみませんー!!やめてー!借金にカウントしないで!!」
ヒル魔にブチギレられて栗田の背中に隠れた秋と、仲裁に入ろうとするまもりのお陰でデビルバット号の荷台は大いに賑やかになってしまった。
ノリで牛をゲットしちゃう大人、借金を無限に増やす大人、1000$という大金を一回で使い切ってしまう先輩、怒られるのをわかっててお菓子を買ってしまう同級生。
「ああもう、後先考えない人だらけ…」
立て続けに起きる"後先を考えずに起きた出来事"に、セナは独り言ちるのだった。
▪︎
ベン牧場へ到着すると早速夕食の準備に取り掛かったデビルバッツの面々。1000$で購入した食材の一部と、ベン牧場が用意した大量の肉や野菜をふんだんに使ったバーベキューの準備をそれぞれ行っていた。
まもりは手慣れた手付きで野菜を切り、ヒル魔はマシンガマンで粉々にするという意味不明な調理方法を行っている。
「栗田先輩、はい!」
「うん!」
そして此方は栗田筆頭、野菜引き千切りチームである。秋が野菜を次々栗田に手渡し、そして彼が自慢の腕力でそれを引き千切る。飛び散った細かい野菜をモン太がキャッチしまくるというコンビネーション。
料理の才能が微塵もない秋は栗田を使って楽をする事に走った様である。
切った野菜や肉を入れたボウルを運んでいた黒木がその様子を視界に入れると茶々を入れて来た。
「お前の役割りいらねーだろ」
「黙らっしゃい!」
黒木の指摘に即席で憤怒する秋。
図星を突かれていつもより反応が早かった。
「お前も野菜切れよ」
「あたしに包丁握らしたら死人が出るぞ!」
秋の必死な形相に、こえーよと黒木が一言。
あちらで手際良く野菜の仕込みをするまもりのせいで、女子なら料理が出来るだろ、というハードルが上がってしまっているのが非常にやるせないのだ。その為に栗田の影に隠れていると言うのに、なんで茶化しやがる、と黒木にお怒りである。
栗田とモン太が見守る中、黒木と秋の言い合いは続く。
「あたしには栗田先輩に野菜を手渡す大事な任務があんの!」
「なんだその任務」
「…栗田先輩が、こう…次引きちぎりたい野菜を、すぐに察知して……渡す…?」
「フワッとしてんじゃねーか」
その後なんやかんや揉めた後、結局秋は三兄弟たちやワイルドガンマンズ選手たちと一緒に串に野菜や肉を刺す仕込みチームに加入することになったのだった。