05
あー、これはやってるな。
昼間のビーチフットボールで一瞬見られた事もあるが、暴れ牛に追いかけ回されるセナの姿を現在進行形で見た事で余計に辻褄が合ってしまったのだろう。
タダ飯バーベキューをなるべく胃袋にぶち込もうと肉を大量に摂取しつつ、秋はそう思った。
「お前肉ばっか食ってんじゃねーぞ」
「野菜なんか日本でも食べれる」
「肉も食えるだろ」
戸叶から的確なツッコミを頂いた秋であるが、考えを変える気は無い様であった。
何かを考える様に一点集中する十文字をチラリと盗み見ると、黒木が死守する肉を狙う秋であった。
と、和気藹々とバーベキューを楽しんでいる最中、突然ガシャーン!と派手な音が鳴り響いた。
「どういう了見だこの野郎!!」
どうやらヒル魔が座っていた折り畳み椅子が倒れた音だった様だが、どうやらただ倒れただけでは無い様子。
「テメーら3人の男の約束じゃねーのか!」
なんとどぶろくがヒル魔の顔をぶん殴ったのだ。テメーら3人、男の約束。そのフレーズもそうだがどぶろくがここまで怒っているのはムサシが関係してるのだろう、と秋は肉をモグモグしながら傍観する。
しかしヒル魔は殴られた割にピンピンしていた。
「一緒にクリスマスボウルに…って、カボチャの殻でガードすんな!!」
あのヒル魔がそう易々とぶん殴られる筈もなく、どうやらカボチャの殻で攻撃を塞いだらしい。手が痛いと騒ぐ騒ぐ恩師に、ヒル魔が怒号を浴びせた。
「うるせーぞ!糞アル中!」
ダラララ!とヒル魔がマシンガンを撃ち込むのは恩師のどぶろくである。恩師である。恩師にもこの扱いである。
しかし中学の頃からこんな感じだし、相手がヒル魔だからしょうがないよねっていうのが素直な感想だ。
「奴は必ず戻る。俺のプランが狂った事なんざねーんだよ!」
「だったら今すぐ連れて来い!」
少し酒が回っているせいもあるだろうが、どぶろくは怒り心頭である。今度は酒瓶でヒル魔をぶん殴ろうとするも、サラリと避けられてしまった恩師であった。
▪︎
「秋ちゃん、起きて」
翌日、肉を摂取し過ぎた秋は幾分か胃もたれを起こしながら起床した。コンディションは余り宜しくないが、何故か彼女は起床すると微笑む。
「…寝起きにまもり先輩見れるのはアリです」
「何言ってるの、全くもう…」
寝起き一発目の視界に映り込む美女。モン太には体験出来ないであろうモーニング日和だ。ご満悦な秋に呆れ半分、照れ半分な表情のまもりであった。
さて、ベン牧場での宿泊。男連中は人数も多い為馬小屋で一泊していたが、流石に女子2名はワイルドガンマンズのマネージャー達の部屋にお邪魔していていた。
「こっちは先に練習始めますけど、2人はゆっくりして下さいね!」
既にジャージに着替えて準備万端な相内の言葉に、ありがとうございますとまもりがにこやかに返事をした。
相内比奈。ワイルドガンマンズのマネージャー兼チアリーディング部ワイルドファニングのキャプテンだ。なんでもミス西部の称号も取っているらしい。
こちら、ヒル魔から過去貰っていたワイルドガンマンズの資料の記憶を引っ張り出した情報である。
相内らが出て行った部屋の扉をボウッと眺めながら秋はボヤいた。
「まもり先輩も比奈先輩も美人で困る〜」
ミス泥門とかやらないかな、と秋は思ったが、同時にまもりはそういうのが好きじゃなさそうだなとも思った。
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「お前らに爆裂突破力をつけてやる!」
泥門デビルバッツの練習として、唐突にインディアンランニングがスタートした。
ワイルドガンマンズの監督が趣味で選手たちに騎兵隊のコスプレをさせていた為、ならばこちらはインディアンだ。というどぶろくの謎理論でインディアンの民族衣装に着替えさせられているのだ。
マネージャー2名も何故か巻き込まれている。
「似合ってるよ三兄弟〜!」
「だから写真撮んな!」
バシャバシャ写真を撮る秋の手から携帯を回収しようと、黒木が彼女を追いかけ回す。逃げながら他のメンバーのインディアン姿も写真に収める徹底振りであるが、それを横目に居心地の悪そうな2名。
「褒めてねぇ」
「だな」
十文字と戸叶は、自身の格好を改めて凝視した。上裸なのはまだ最悪許せるが、いや許せないけども。頭の飾りが特にやるせない。
三兄弟で同じ格好をさせられている。非常に滑稽である。