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「マジでセナ…アイシールド21!?」

とりあえずの食事を、ということで空港に近いレストランFOOTERSで朝食を取ることにしたチームデス・マーチ。
どうやらデス・マーチ参加を決意すると同時に、選手たちにはアイシールド21の正体をバラした様である。まもりにだけは存在をひた隠しにされている為口止めされていたが、彼女が店員に追加注文に向かう為離席したので黒木が堪らず奇声を上げた。

「スゲー!汚ねーテメー!テレビのインタビューとか出たのかよ!?」
「カッカッカ、ノートルダム大ってのはハッタリか!」

賊学との試合前など、その他諸々のインタビューはアイシールド21のユニフォームを身に付けたヒル魔が行っていたが、視聴者はちゃんと騙されている様である。
あまりにも騒ぐものだからセナがまもりをチラチラ振り返りながら黒木にシーッ!と人差し指を口に当て静かに!と合図するも、全く聞く気がない。

「おうテメーら、月刊アメフトのサイトに秋大会東京地区よトーナメント表だ」

まもりが戻って来る前に黙らす為か、ヒル魔がノートパソコンの液晶画面を皆に向けた。
黒木と戸叶はまんまとパソコンに意識を持って行かれた。

「あ〜〜いよいよ秋大会か〜〜!」
「泥門がここで、王城がそっちだから…」
「王城とは決勝まで当たんねーな」

トーナメント表にはベン牧場で世話になった西部ワイルドガンマンズ、ヒル魔の下僕である賊学カメレオンズ、そして泥門のライバル的存在の王城ホワイトナイツも載っている。
しかし王城が入っているのは逆シードである。
元王城生徒である秋も、これには少々な安堵。王城マネージャーである若菜との対面は秋でも気不味いのだ。

「王城マネとの対面はまだ先だな」
「うっさい黒木」

若菜のことを少し前に話したからか、黒木が秋を小突いて茶化して来た為に睨みを効かせる。
泥門がそこまで勝ち進めるかわからないし、対面できるかは不明だが。こんなこと言ったらヒル魔に殺されるので口を紡いだ秋であった。

「うちの一回戦の相手は?」

追加注文したチキンとドリンクを持って舞い戻ったまもりが、身を乗り出し液晶画面を観ながら尋ねた。
それにより改めて初戦の相手チームを確認したセナが、チーム名を読み上げる。

「網乃高校、サイボーグス…?」
「通称"大会荒らしの網乃"。スポーツ医学の最高峰、網乃大学の附属高校だ」

大会荒らしの網乃?と全く知らない情報によりヒル魔の説明をオウム返しをした数名。その大会荒らしという意味は、珍しく秋が説明した。

「この学校、毎年違うスポーツで優勝取ってるらしーよ。んで、今年はアメフト!」
「んだそれ!じゃあアメフト本気じゃねーのかよ!卑怯MAXな連中だな…!」

ヒル魔の脅迫手帳収集手伝いのおかげでアメフト部の脅威になりそうな高校は記憶している秋である。
毎年違うスポーツに絞って学校全体で優勝を捥ぎ取ることによって、進学の際に有利にでもなりたいのだろう。が、印象はかなり悪いしモン太のお怒りも真っ当である。
しかし網乃の生徒は全員東大か網乃大学に入るらしいが、大会荒らしの網乃なんて言われて良いのだろうか。

「構いやしねー。掛かって来んならブッ殺すだけだ」

ヒル魔の物騒な激励にモン太を筆頭に泥門デビルバッツの皆さんは、おー!と腕を振り上げてやる気に満ち溢れたのだった。


▪︎


広々とした広野の中、ポツンポツンと家が建っている。その中に佇むガソリンスタンドに一際目立つデビルバット号が。
どぶろくが愛車にガソリンを入れ終わると衝撃発言をした。

「このガソリンで俺も文無しだ」
「日本行きの飛行機代なんざねぇぞ」

泥門デビルバッツ、唯一の成人が文無しになり路頭に迷う。絶望を塗り重ねる様に金がないという事実を付け足したヒル魔に、セナが恐る恐る尋ねた。

「秋大会には…どうやって帰るんですか?」
「日本まで歩く」
「ハァアアアアア!!?」

そこに間髪入れず三兄弟が悲鳴の様な威嚇の様な、まさにアンビリーバブルな叫び声を上げた。広野に木霊する三兄弟のハァアア!?が落ち着くと、雪光もヒル魔に尋ねた。三兄弟よりも落ち着いてはいるが、動揺は隠しきれていない。

「歩くって…海はどうするんですか??」

現在地はテキサス。日本までの距離はおよそ10,200キロメートルである。距離だけでなく海を渡る事になるので、泥門メンツは恐怖を更に覚えた。海、という雪光のフレーズを聞きハッと何かに気付いた秋は勇ましくヒル魔へ歩み寄った。

「泳ぐんですか!水着あります!いけます!」
「バカか。西海岸まで行きゃ金のアテがあんだよ」
「日本行きの航空券も、西からなら近い分安いしな」
「なんだ、良かった…」
「泳がないんですか!?」

ホッと胸を撫で下ろす雪光と、ちょっと残念そうな秋。対比が凄いがそこには触れず、ここまで黙って話を聞いていたまもりが怪訝そうな顔で呟いた。

「西海岸でお金のアテ…?」

目的地は?そう恐る恐るヒル魔とどぶろくに尋ねると、間を置かずに口を揃えて答える彼ら。

「「ラスベガス」」
「そういうのはアテって言わないの!」

ラスベガス。カジノやエンターテイメントだ有名な観光都市である。なんだか良くはわかっていないものの、ラスベガスがどういう街なのかをミリ単位で知っている秋と黒木のテンションがほぼ同時に爆上がりした。
先程までの感情を捨て去り、カジノだ!カジノだ!と騒ぎ始めた2名。

「よーし出発だ!40日以内にテキサスからラスベガスまで2000キロメートル!」

そんな2名を完璧に無視して、どぶろくが元気良くアメリカ横断ウルトラトレーニングのスタートを合図したのだった。

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