03

カジノには沢山のドラマがある。
ルーレットの赤黒で1$一発勝負に挑んだセナとモン太が着実に少しずつ稼ぎを増やす一方で、スロットマシーン組は5名中4名が暗い顔をしていた。

「クッソ!もうねぇのか賭け金!」
「質屋行こう!」

十文字ら3名がカジノでボロ儲けしているビジョンが全く想像出来ないと考えていた秋の予想は見事に的中した。
既に三兄弟の賭け金は底をついてしまったらしく、彼らの顔色は非常に悪い。
反対に大吉はその名の通り運が強いらしくメダルが一杯のケースを既に3つ抱えご満悦である。
彼にライバル心をえらく抱いている三兄弟は、質屋へ走って行くと息を切らしてスロットマシーンまで戻って来た。

「腕時計とゲームボーイアドバンス売って来たぜ!」
「こっからだ!この赤っ鼻!」

そう意気込んだものの、三兄弟が質屋で得た賭け金は一瞬で無くなってしまった様だった。
質屋だ!と再び何かを売りに走って行った三兄弟の動向を偵察した結果、スロットマシーンは案外稼げないかもしれないと秋は考えていた。
稼げる兆しが見えないのは栗田も同じであった。

「僕も頑張らなくちゃ!どぶろく先生の為に…!」

三兄弟程ではないが栗田の賭け金も殆ど底を付きかけていた。故の焦りが顔にモロに出ている。

「あああ!もう1マスで揃うのに…!」

焦った栗田は、フンヌラバ!とスロットマシーンを両手で叩き付けた。そのせいでマシーンが壊れたのだろう、メダルが下皿へ大量に飛び出して来た。
メダルが出た事に純粋無垢に喜ぶ栗田の背後へ、とある影がのそりと近付いていた。
秋は見ないふりをする事にした。

「質屋ーーッ!!」

背後から三兄弟の必死な声が響いたが、秋は振り返らずに次のゲームの場所へ足を向けたのだった。


▪︎


クラップスというサイコロゲームの台に着くと、そこにはまもりと瀧兄妹、どぶろくがいた。

「サイコロゲーム?どんなルールですか?」
「あ、アッキー」
「ルールはね…サイコロ2つ足して、最初に7が出れば皆の勝ち。1や6のゾロ目とか出しちゃうとカジノの勝ちみたい」

まもりから受けたルールを聞いても、秋にはちんぷんかんぷんであった。とりあえずサイコロを2つ振ることはわかったので一旦ゲームの様子でも見ようかと秋が思考していると、サイコロを振りながら御陽気な瀧が言った。

「OKマドモワゼルまもり!7を振ればヒーローで、1ゾロとかならバッドだね!」

瀧の事はこの短期間でしか見ていないが、それでもコイツは目立ちたがり屋なのだと秋は認識していた。今もそうだ、サイコロ振るのにそんな格好付けなくていいだろというポージングを取る。

「1ゾロ!」

しかも目立とうとして失敗するから余計に悪目立ちするのだ。
1ゾロを綺麗に出した為にカジノ側の総取りとなってしまった瀧は、クラップスに賭けていたカジノ客からブーイングの嵐を受ける事になってしまった。
ダイスが悪いんだとなんとか主張するも、目立ちたがり屋の言い訳なんて誰も聞いちゃくれない。
そして次にサイコロを振るのはまもりとなった。

「え…次、私?」

変な目出したらごめんね、と謙虚な姿勢でまもりがコロンとサイコロ2つを振ると、綺麗に4と3を出した。合わせてラッキー7である。

「出たぁー!ラッキー7!」
「全員勝利ー!」
「まも姐様素敵ー!!」
「まもり先輩最強ー!!」

先程まで瀧へブーイングを行っていたカジノ客たちが一斉にまもりを褒め称えた。さあもう一回!ということで連続でサイコロを2つ振る事になったまもりであるが、なんと彼女連続で7を出したのである。

「女神!」
「エンジェル!」
「アメリカ市民め!まもり先輩の凄さがわかったか!」
「秋ちゃん!まぐれだから!まぐれ!」
「やーー!大儲け!!」

英語はわからないが彼らの表情を見てまもりを褒め称えている事がわかった秋がまもり信者ぶりを発揮させ始めたので、それを焦った当人が辞めさせようとするという出来事が起きた。
過激化した信者が暴走する最中、瀧は心底悔しそうにサイコロを握り締めていた。

「アハーハーー!」

そして彼が振ったサイコロは安定の1ゾロ目。
まもりの活躍であんなに喜んでいたカジノ客はまたしても瀧にブーイングを起こした。貧乏神!バイキン!と罵られる瀧の哀しげな姿に、秋は近くでその様子を見ていた雪光へ近寄ると声を掛けた。

「瀧ってめっちゃ運悪いですね」
「そ…そうかも…」


▪︎


「とりあえず今みんなの損得合わせて…ちょうど5$プラスですね!」
「2000万にはちょっと遠いね…」
「ちょっとじゃねーよ」

5$、つまり500円である。
まもりと大吉の勝ち具合を合わせても、その他が負けまくっているせいでプラスは僅かであった。
警備員に先程連行されて行った栗田と三兄弟はいつの間にか釈放されていたらしい。栗田はスーツ姿のままであるが三兄弟は何故かパンツ一丁にコートを羽織った姿になっていた。

「なんで変質者になってんの?」

質屋へ走って行き、質屋!と叫びながらスロットマシーンへ戻って来た三兄弟なので予想は付いているがこれは弄らずにはいられない。
面白そうに三兄弟へ近付いて尋ねてみると、3名はコートでパンツを隠し視線を彼女から逸らし口を紡いだ。

「何々、露出に目覚めちゃったわけ?」
「…色々あったんだよ」

あまりにもしつこそうな秋の様子に、十文字が苦し紛れに答えた。その横にいた黒木と戸叶もウンウンと必死に頷いたのだが、その様子に秋はブハッと吹き出した。

「何格好付けてんの!質屋行き過ぎただけでしょ!」
「わかってんなら聞いてんじゃねーよ!!」
「スーツカッコよかったのに、今じゃ変質者三兄弟かぁ」
「褒めてんのか弄ってんのかどっちだよ!」
「弄り80、褒め20」
「うぜー!!」

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