04
「セナ達、どこで遊んでるんだろ?」
三兄弟と秋の軽い言い争いを背に、戻ってこないセナとモン太を心配し始めたまもりは辺りを見渡し始めた。
賭け金1$しか持っていなかった2名がこんなに戻って来ないとなると、相当勝ちまくっているか誰かに絡まれているかだろう。
セナたちなら後者の方が可能性が高い為、まもりも心配なのだろう。
すると鈴音が何かに気付きルーレットの方を指差した。
「あ、ルーレットやってる」
「2人ともまだやってたんだ」
最初に見た時からかなり時間は経っていたが、どうやらセナとモン太は変わらずルーレットでゲームを続けていた様だった。
しかしよく見てみると彼らの卓上にはとんでもない量のチップが置かれていた。
「13万$獲得ーーー!!」
「何ィイイイイイイ!!!?」
セナとモン太の周りには人集りが出来ていた。13万$、つまり約1400万円程の勝ちである。そりゃあ見物客も集まるだろう。
どうやら赤黒でずっと賭けていたらいつの間にかこんな事になっていたらしい。
駆け付けた泥門デビルバッツの面々に顔を青くして説明したセナとモン太はもう腰が引けていた。高校生でこんな大金にビビらないなんてヒル魔くらいだろう。
「もうやめよう!これだけ当たれば十分だよ!」
「そ、そうだな…!」
セナが言うとモン太も賛同した。
それにしても、と雪光が感心した様に言葉を漏らした。
「赤黒だけでよくここまで…」
「数字賭で増やしたならまだわかるんだがな、36倍だからよ」
「36倍?」
ルーレットの赤と黒の数は同じなので、色による賭けでの勝率はほぼ50%なので安定しているのだ。
それを数字で賭けると勝率もかなり下がってしまう。そしてストレートアップという一点賭けを行えば36倍。つまり勝てればドカンと一発!ハイリスクハイリターンという奴だ。
「もしこれ全部数字に賭けて当たったら…?」
36倍という煌めきしか見えないワードを聞いたモン太が恐る恐る雪光に尋ねると、彼は脳内暗算で答えを導き出した。
「…5億円?」
「ご!お!く!え!んー!?」
セナとモン太だけじゃなく、その場にいるデビルバッツ組も驚くしかない。5億円なんてどぶろくの借金を返しても余る程だ。
そこでモン太がまもりをバッと振り返って黙り込んだ事に気付いた秋は、どうにも嫌な予感がした。
「モン太…?何考えて…」
「アイシールドの21番に全賭けー!!」
「いぃいいい!?」
目の前にあるチップの山を独断で一点賭けさせたモン太へ、即座に暴力的なストップと保身的なストップが掛かった。
「このバカ猿止めろ!」
「ダメだってそんなのー!」
「賭けるくらいならちょっとちょうだい!」
中には乞食的ストップもあったが、こうなったモン太は止まらなかった。間違いねぇ!と豪語する彼の瞳は銭ゲバの目をしていた。
「みんな俺を信じろ。必ず21が出る!!」
結果は5。夢の様な13万$は一瞬ですっからかんとなった。5億円なんて夢のまた夢。
三兄弟と秋により殴る蹴るの暴行を受けるモン太を横目で見ながら、セナと鈴音は悟ったのであった。
「カジノって結局…」
「最後は必ずカジノ側が勝つ様にできてんのね」
カジノの仕組みを把握し、大人の世界はなんて汚いのだろう、なんて考えていると雪光が言った。
「ブラックジャックなんかだと、そうとも言い切れないんだけどね」
「ブラックジャック!何か技があるんですか!」
本命のゲームの名が出た事で興味津々な秋がモン太たちから離れて飛び出て来た。尋ねられた雪光は、ブラックジャックの裏技であるカウンティングの説明を始めた。
「出たカードを全部覚えといて、残りのカードが何か分かれば確実に勝てちゃうんだ!」
というもの。
今、何が出て何が残ってるか。トランプ6組、312枚を、一枚一枚記憶しなくてはならないのだ。
「しかも指で数えたり、メモ取ったりはルール違反で捕まっちゃう」
カウンティングを疑われるだけで出禁案件である。
ブラックジャックのゲーム台へ移動した面々は早くも躓いていた。
「ダメだ〜〜!10枚も覚えられない!」
「人間の記憶力じゃ絶対無理なんだよ!そうじゃなかったらカジノ潰れちゃ…」
カードの前で頭を抱え始めたセナたちに雪光がそう言い掛けたところで、彼はハッと何かに気付いた。
秋を振り返るとデビルバッツの面々も気付いた様で、皆が声を揃えて言った。
「カメラアイ!」
瞬間記憶力者の秋ならばトランプ6組を全て記憶するなど容易い事である。
注目された秋は得意気な顔をして言い放った。
「まぁ見てなさいよ!カメラアイの実力って奴をね!」
元よりブラックジャックが本命。
カメラアイの秋は、記憶力だけなら誰にも負けない自信があるのだ。
果たして加賀秋はブラックジャックで無双する事は出来るのか!
▪︎
秋のブラックジャックを後ろから観戦していた感想として、戸叶がボソリと呟いた。
「やっぱただのバカだったな」
カメラアイ加賀秋、地頭の悪さでブラックジャックのルールを把握できず見事に惨敗。
そそくさと席から立ち去りその場から退散しようとした所をとっ捕まえられ、彼女は三兄弟に延々文句を垂れられていた。
「カードは覚えたの!ルールがよくわかんなくて!」
「ルールもわかんねぇで挑むな」
「だな」
「テメー!俺の期待返せ!あとゲームボーイアドバンスも返せ!!」
「それはあんたが自分で売ったんでしょ!?」
流石にモン太の様に殴る蹴るはされなかったものの、落ち込む秋へブーイングを喰らわせる三兄弟をまもりがなんとか宥めて次の策を練ることにした。
しかしだ。秋がブラックジャックで先程プラスになっていた5$を全て無くしてしまった為、泥門デビルバッツの面々は見事に文無しとなってしまったのだ。
まぁかと言って5$、というか500円があった所で目標金額は2000万なのだが。
「あれ?」
「ヒル魔さんだ」
そんなワチャワチャとした事が起こっていたブラックジャックの隣の卓では、同じ様にヒル魔がゲーム中であった。
こんだけうるさくしてても集中し切っているのだろう、ヒル魔はこちらに一瞥くれる事もせずにカードをひたすらに見つめていた。