04
9月10日。土曜日だがアメフト部は練習の為に朝から登校していた。
のだが、秋が登校すると栗田が行方知れずとなったとアメフト部では既に騒ぎになっていた。
「連絡もないし…家は出たって言うんだけど…」
「明日から秋大会だっつーのに!」
「どこ消えちゃったんだろ…!」
モン太が言った通り、明日から秋大会なのだ。
しかし栗田が行方不明になったのはこれが初めてではなかった。
中学の頃、彼は大事な日の前になるとある場所に隠れてしまうのだ。それを知ってる秋は、同じくそれを知っているヒル魔の様子を伺う為に彼をチラリと盗み見た。
慌てまくっている大吉とは反対に、何も騒ぐ事なくヒル魔は部室から出て行ったので秋もそれに続こうとすると黒木に声を掛けられた。
「お前どこ行ったか知ってんのか?」
「ナイショ〜」
はぁあああ?といつもの様に漏らす黒木を適当に遇らうと、秋はヒル魔を追いかける様に部室を後にした。
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目的地である体育倉庫へ向かう道中、ヒル魔の背中を見付けると秋は彼の元へ駆け寄った。
「また跳び箱ですかね?」
秋がそう尋ねるとヒル魔はチラリと彼女へ視線を向け、だろうなと簡潔に返答した。
栗田は昔から死ぬ程ビクつくと必ず跳び箱に籠る習性がある。それを知っていた為に彼らは特に焦らなかったのだ。
ビビった栗田が跳び箱に籠って、それを銃火器構えたヒル魔が連れ戻す。そんな中学の頃の恒例行事が久々に起こっているので、懐かしさもあり秋は少し楽しいと感じてしまっていた。
「毎度の事ながら、なんだかんだ言ってヒル魔先輩も優しいですね〜」
ヘラヘラと茶化す様にそう告げると、ヒル魔はギロリと秋を睨むとチッと大きな舌打ちをした。
「栗田の居場所がわかってんなら、さっさと部室戻ってアイツら練習させとけ!!」
「はいはーい!」
秋は怒声を浴びせられたというのにやけに楽しそうであった。
▪︎
部活後、すっかり暗くなっており時刻は8時を回っていた。いつもなら9時頃までは練習をしているのだが、明日から秋大会だからなのか早めに練習は終了した。
「準備が終わったら行く場所がある」
皆が早く休んで明日に備えろという事かと認識していると、ヒル魔が突然そんな事を言い出した。
泥門デビルバッツの面々がバスに揺られて早数分、目的地が何処なのかを伝えないというのが実に彼らしい。横暴である。
しかしヒル魔の目指す目的地に辿り着くと、皆は彼の意図を理解した。
「東京…スタジアム…!!」
ヒル魔が泥門デビルバッツの面々を連れて来た場所は秋大会の最終決戦、つまりクリスマスボウルが開催される東京スタジアムだったのだ。
「「「で…でけぇ…!」」」
その会場の大きさ、威圧感に皆は驚愕した。
皆と同じ様に東京スタジアムを見上げていた栗田が力強く話し始めた。
「今からちょうど3年前、ここでヒル魔とムサシと3人で、同じように見上げて誓ったんだ」
その姿は今朝ビクついて跳び箱に閉じ籠っていた者とは思えないものだった。
秋大会の初戦は明日だ。結果的にムサシは間に合わなかった。しかし勝ち進めばヒル魔たち2年生の秋大会はまだ続く。
「絶対みんなでここに来ようって」
秋大会が続けばムサシも戻って来るかもしれない。雪光だってその間にレギュラー入り出来る筈だ。
秋も、ムサシがアメフトに未練がある事を知っている。
ヒル魔は合宿中に言っていた、ムサシは戻って来ると。彼のプランが狂った事はないのだと。
泥門デビルバッツが全員揃い、秋大会を勝ち進み、そして皆でこの東京スタジアムに行く。
「たりめーだが。ここに来るってことは…」
ごくりと生唾を飲み込む面々へヒル魔が告げた。
泥門デビルバッツがこの東京スタジアムに来る為には、王城も西部も神龍寺倒さなければならないと。
そしてヒル魔は続けた。
「もちろん明日の試合、網野サイボーグスも俺らで全部ぶっ倒すって事だ!」
20260528