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「走りながらゴチャゴチャうるせー奴だな!!」

コーナーバックのやけに動きがカクカクした角口直角という選手に、モン太がそう文句を垂れた。
彼らはフィールド上を駆けていたのだが、モン太の言い分だとどうやら角口がペチャクチャ一方的に喋りまくっていた様だ。
そんなやりとりが行われている所へヒル魔が鋭いパスを放った。パスルートはジグアウト。しかし秋の目には、そのパスはいつもよりもルートがズレている様に感じた。
パスが通るか?とベンチ勢が不安に思っていると、何故かモン太と並走していた角口が減速し始めた。
その様子に雪光が不思議そうに疑問を口にした。

「あの選手、どうしてスピードを緩めたんでしょう?」
「網野の連中、全員データで動いてるから取れないとか思ったんじゃないですか!」
「試合中に諦めたって事…!」

雪光の疑問に秋が雑に答えたが、その通りであった。
網野サイボーグスの選手たちは全員が科学命のデータ人間である。胸肩も勿論マシーン味が強いが、渦中の人物である角口は特にデータで動く頭でっかち人間そのものであった。人間かどうかも怪しいレベルだ。
反対に感覚人間、且つ根性論で動くモン太はそのままボールに勢い良く飛び付いた。

「ムキャアアア!!」

モーションキャプチャーを使いランニングフォームやパスの軌道の知識をデータとして覚えただけの角口では、このヒル魔からのパスは"取る事が不可能"な物だった。
しかしこれまで人生キャッチに全力を投じ、そしてデス・マーチで死ぬ気で身に付けたパスルート。モン太は取れる。否、"死ぬ気で取ってみせる"とボールに飛び込んだのだ。

「おおおおお!!」
『と…通ったー!!』

結果、モン太は見事にパスをキャッチした。
根性でパスを通したモン太に観客どころかアナウンサーまで興奮気味に声を荒げた。
諦めが頭をよぎるかどうか、それが心の差なのだ。

「セナがいない今…!俺が走りでも稼ーぐ!」

しかしキャッチは稀に見る天才であるモン太はランニングにおいては秀でていない。気合い十分でフィールドを駆けていたモン太であったが、彼の前に胸肩が立ち塞がった。

「捕まる!」
「逃げてー!モン太くんー!」
「タッチダウンしろー!」

ベンチ勢からの期待は最も簡単に裏切られてしまった。モン太は胸肩に捕まってしまったのだ。
ガシリと捕まれたモン太。その勢いでモン太の手から溢れてしまったボールが、秋たちが座るベンチとは別のベンチに置きっぱなしにしてたフアフアなアイシールド21風船に直撃してしまった。
アイシールド21が不在を知った事でなのか胸肩が高らかに笑いながら泥門メンバーに近寄って来た。

「なるほどなるほど!アイシールド不在の今、あの猿少年さえ止めれば泥門の攻撃力は半減する!」
「さ・る・しょ…!!」

"猿"というワードに敏感なモン太が飛び付こうとしたがそれを栗田が静止した。
そんなモン太の様子を視界に入れると胸肩は18歳とは思えない程の態度で、且つ悪びれた様子もなく彼に無礼を詫びた。

「いや失敬!雷門くんと言ったね!これから君を数人で集中マークし、ボールを取る度に激しくタックルさせて貰う」

これは果たしてスポーツマンシップなのか。
今からタックルするからね、と公言してからタックルするのは一応紳士的とも言えるのだろうか。
アイシールド21不在の現状、胸肩が言った通り攻撃方法が絞られる為にモン太を潰せば泥門の加点を防げる。

「…マズイな。後衛の体格差があり過ぎる」
「モン太ちっさいですもんね」

深刻そうに眉を顰めるどぶろくに、呆気カランとした様子で秋が相槌を打った。
彼女が言った通りモン太の身長は155センチ。対する胸肩の身長は181センチだ。身長だけでなく彼はスポーツ医学の力でガタイも良くなっている為、ぶつかり合いでモン太が勝てる見込みは限りなくゼロに近いだろう。

「試合終了までに何回ボールをこぼすかな!?」

前言撤回である。
彼ら、胸肩厚率いる網野サイボーグスの選手はスポーツマンシップが無い。
どこからどう見ても悪役フェイスでモン太を見下す胸肩たち網野選手たちに、泥門デビルバッツのメンツはゴクリと生唾を飲み込んだ。


▪︎


胸肩らが"モン太にタックルします"宣言をしてからの泥門の攻撃。
今度は石丸でラン攻撃を仕掛けるもまたしてもタックルされてしまった。
その様子を苛立った様に見つめていた秋がボソリと呟いた。

「胸肩の奴、避ける方向誘導してんなー…」
「誘導?どうやって?」

心配そうにフィールドへ視線を向けていた鈴音が秋の呟きに気付き、尋ねた。

「走ってくるランナーを左に避けさせる為に、ワザと右に寄って待ち構えとくの。そしたら左に避けるのわかるから、捕まえんの簡単じゃん?」

ボールを持っている選手は右か左、どちらに攻撃を避けるか一瞬で判断しなければならない。咄嗟の事だ。今のメンバーではそんなアメフトの"コツ"を凌駕出来る程の走りを持っている者はいない。
秋の説明を聞くとどぶろくは考え込み、まもりと雪光は眉を下げた。
網野のブロックをかわしてタッチダウンを取るにはアイシールド21の存在が不可欠。
先程まで押せ押せだった泥門デビルバッツが急に膠着しだした事により、観客席も僅かに動揺が走り始めた。

「頑張れ泥門ー!!」

観客の元気が控えめになった事に瞬時に気付き、応援団長である鈴音がそう声を上げた。
途端、ブルルルルン!と激しいエンジン音がフィールド中に響き渡る。

「!!」

なんと、先程どぶろくの運転する軽トラが入って来た会場出入り口から、今度はバイクが乱入して来た。
そのバイクは魔改造された物で、運転手は賊学の葉柱ルイであった。泥門デビルバッツの面々がそれに気付くと同時に、葉柱は自分の後ろに座っていた人物をバイクの遠心力でフィールド上空に荒々しく吹っ飛ばした。
会場中がその投げ出された人物に視線を向かわせ、そして目を見開いた。

「あれは…!」
「もしかして…!!」
「ケケケ!千両役者のお出ましだ!」

そう、その人物とは泥門デビルバッツが現在待ち望んでいたアイシールド21だった。
上空に投げ出された彼は実に格好良いことにフィールド上にスーパーヒーローの様に着地して登場した。
その派手さに一気に泥門デビルバッツの応援客がワァア!と歓声を上げた。


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