06

遅刻した癖、スーパーヒーローさながらの着地で堂々と到着したアイシールド21。
その派手さにテレビカメラや観客が引き付けられた様で、泥門側観客席からの大き過ぎる歓声でベンチ席に座るまもりやどぶろくは思わず圧倒された。

「すごい歓声…!」
「ホントなら遅刻の罰で、ビンタの1つもくれてやらにゃならんとこだがな」

しかし遅刻の罰はどぶろくが手を下さずともチームメイトらによって下された。
泥門メンバーや観客席へ、遅刻した罪悪感でペコペコ頭を下げていたアイシールド21をチームメイトがボッコボコに蹴り始めたのだ。

「遅ぇんだよこの野郎!」
「苦労したんだぞこの野郎!」
「遅刻魔ー!こんの遅刻魔ー!!」
「ひぃい…!」

"待ち望んでいた人物がようやくやって来た事により感極まったが為の偶然の制裁"をしっかり受けたアイシールド21は、正体を隠す気がない程情けない悲鳴を上げた。
三兄弟や秋、鈴音がアイシールド21を楽しそうに蹴る姿を見た大吉は、彼らと同じように目をキラキラさせていた。自分も参加したい!と自身の両足をピョンっと飛び上がったと同時に振り上げた。

「「カンチョー……ッッ!!」」

するとどうであろう。飛び跳ねたタイミングで偶然にも黒木と戸叶へ見事にカンチョーを繰り出してしまった大吉。
情けない悲鳴を揃って上げた黒木と戸叶はあまりの痛みに青筋を立て、般若の様な顔で大吉へ睨みを効かせた。いつもギャーギャー騒いでいる黒木たちであるが、所謂これが彼らの"ブチギレ"に該当するのだろう。
その後はいつも通りであった。
三兄弟と大吉の取っ組み合いが始まり、そこに栗田が介入し、彼がのし掛かり強制終了。

「これパターンなのね…」

お決まりのパターンになりつつあるこの泥門デビルバッツライン組の乱闘騒ぎを終え、鈴音が悟った様にそう呟いた。
そろそろ慣れ始めてしまったセナは微妙な顔をした。

「兄さんはまだ?」
「ああ…。葉柱さんが1人飛ばしてくれたから…」

鈴音の言葉を聞いて、秋もそれで思い出した。夏彦がまだ来ていない。
相変わらずヘコヘコした様子なアイシールド21であったが、彼はバイクに跨ったままの葉柱ルイに丁寧なお礼を口にした。

「あの、お陰で間に合いました!」
「カッ!礼なんざ言ってるヒマあったら、とっとと胸肩とかいう素人ラインバッカーぶっ潰しやがれ!」

彼が属する賊学カメレオンズには、vs太陽スフィンクス前の三兄弟強化訓練の際に大変お世話になった。秋が彼と顔を合わせるのはあの日ぶりであったが、なんだか雰囲気が変わった印象である。
秋大会前にヒル魔の下僕からは解放されているらしいので、そのせいかもしれない。
なめた真似許すんじゃねーぞ!と網野へ威圧する葉柱に、セナとモン太が賛同した。

「連中、アイシールド潰しに来るだろうな」

途中参加のアイシールド21。
泥門デビルバッツの観客は勿論、網野サイボーグスの観客すら圧倒してしまったエースの登場だ。目立った登場により泥門はノリノリな空気感である。そんな空気を作ったアイシールド21が敗北すれば泥門の士気は下がるだろう、と網野の連中が考えない訳がない。
どぶろくの言葉を横で聞いていた秋はニカッと笑った。

「けど一発かましちゃえばこっちのモンですよ!」

秋の言葉に、どぶろくも口角を上げた。


▪︎


アイシールド21と胸肩の一騎打ちを行う為、作戦はスイープとなった。
NASAエイリアンズ戦で行ったスイープが、デス・マーチを経てどう成長したのか。そしてデス・マーチで得たアイシールド21の必殺技がどう炸裂するのか見ものである。
そうしてSETが完了。この後アイシールド21の走るルートを作る為にスイープを行う。

「デス・マーチでみんな強くなったんだ…!スイープだってもっと強力になってる筈!」
「「「!!?」」」

しかしなんという事か、気合の入った栗田がなんとアホな事に作戦名を声高らかに発信してしまった。その為、三兄弟が声にならない声を上げて驚愕した。
しかし栗田は自分の失態に気付いていなかった。

「スイープつってますよ」
「スイープで来る気か」
「本当か?」
「あほあぁあぁあ…ッ!!」

真向かいでSET中の網野選手たちが反応してやっと自分の失態に気付いた栗田は、特殊な悲鳴を上げた。自己紹介の様だった。
やらかした!と認識しつつ、ヒル魔にドヤされると彼を咄嗟に振り返った栗田。

「ケケケ、構いやしねー。このまま行く」

しかしいつもならそんな栗田のアホな行動に激怒するヒル魔であったが、何故だかご機嫌そうである。

「力押しでこじ開けてやる。知ってて止めれるもんなら止めてみやがれ!」

発展途上の選手だらけの中、ヒル魔は今までハッタリで試合を行って来ていた。だからこそ作戦や奥の手は曝け出さない、というのを徹底していた。
しかし泥門デビルバッツの面々はデス・マーチを達成し一皮剥けたのだ。
網野相手ならば作戦がバレようが何の問題もない、とヒル魔は判断したのだろう。

「HAT!」

そしてついにアイシールド21有りのプレーがスタートした。
合図と共にデビルバッツの面々はスイープの為に駆け出したのだが、アイシールド21の為の通り道は過去最高に広大であった。

「うお!来た!」
「胸肩だっ!」

フィールド上に出来上がった道を駆けるアイシールド21。その前に胸肩が立ち塞がった。

「あいつ妙な動きするぞ!気を付けろセナ…!」

そして正体を隠す気のないモン太が目立つが、彼の言った通り胸肩はアメフトの"コツ"を駆使している。
胸肩との一騎撃ち。固唾を呑んで見守る面々であったが、秋は微塵も心配などしていなかった。
網野サイボーグスの偵察に足を運んだ際に胸肩の対アイシールド21訓練も彼女は見ていたからだ。
しかし胸肩の情報はデス・マーチ前の物。いくら彼が特訓していてもそれでは今のアイシールド21には到底敵いっこない。

「いよいよお披露目だぜ、デビルバットゴースト!」

急に歩幅を縮め、一歩でジグザグに踏み切る。
アイシールド21はデス・マーチ前、必ず敵を抜く時にブレーキをかけていた。それがスピードは変わらずに、減速しないクロスオーバーステップを習得したのだ。
構えていた胸肩は、何も出来ず棒立ち状態でアイシールド21に見事に抜き去られてしまった。

『タッチダーウン!!』

泥門デビルバッツ、秋大会では初得点である。
ボーナスゲームは取り損ねたが、このままの勢いでアイシールド21がタッチダウン出来れば問題ないだろう。



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