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その後も泥門デビルバッツの快進撃は止まらず、連続のタッチダウンで現在30対8。点取って勝つのが泥門流!なので、ここまで点差があってもまだまだ押せ押せな泥門であった。

「ハッハー!面白ぇーアメフト!」
「カカカ。そりゃ勝ってりゃな」

ここまでのリードは初めてな為ガッツポーツでご機嫌な黒木と、満更でもなさそうな戸叶の発言を聞きセナはパァッと嬉しそうな表情を見せた。

「チッチッチッ!遅ぇんだよ気付くのが!」

嬉しそうなセナとは反対にモン太は謎の上から目線でそんな事を言ったが、黒木と戸叶の発言を聞き付けた栗田が感極まり2名の腕を掴みブンブン振り回し始めた為事態は収集のつかない状態になってしまった。
そんな騒ぎをベンチから目視していた秋は、妙な感情に陥ってしまっていた。
黒木と戸叶がアメフトを楽しいと思ったと言うことは、つまりアメフトに興味がないのが泥門デビルバッツ内で自分だけになってしまったと言うことだ。


▪︎


アイシールド21が最後のタッチダウンを決め、ボーナスゲームで1点獲得し無事に試合終了となった。
結果は38対8。
泥門デビルバッツは大会荒らしの優勝候補、網野サイボーグスを破り一回戦を突破する事となった。

「YAーーHAーー!!」
「やーー!」
「「「ハァアーッ!!」」」

いつの間にか鈴音が紙テープを泥門デビルバッツの観客席に配っていたらしく、試合終了のアナウンスと同時にフィールド場に紙テープが舞った。
久々に聞くヒル魔のお気に入りフレーズ。そして鈴音のお気に入りフレーズ、その後に続く様に三兄弟がいつものアレを炸裂させた。まるでYAーHAー!である。

「フゴ〜〜!!」

それまで呆然と得点ボードを見つめていた大吉が、突如歓喜の声を上げた。
一瞬驚いたセナたちだが、瞬時に彼の感情に気付いた様だ。

「そっか…こむすび君…」
「初勝利なんだね…!」

太陽戦では引き分け、そしてNASA戦では敗北。初めての勝利に感極まっているのだ。
そんな浮かれた泥門デビルバッツの元にとある人物が拍手をしながら近付いて来た。

「おう栗田。おめっとさん!」

まるで任侠ドラマに出演していそうな風貌のその男に気付くと、ジュースを飲んでいた通行人がブッと口から液体を噴出した。とんでもない物を見た時のリアクションである。
彼だけでなく、他の通行人も驚愕していた。
白スーツに身を包むその男は栗田への激励の言葉を続けた。

「春から一気に成長したな。だがまだまだ荒い」

その男とは柱谷ディアーズ主将の山本鬼兵であった。

「パワーだけじゃ、大田原のバカみてぇになっちまうぜ?」
「鬼兵…さん!!」

栗田すら驚愕している様子に、セナたちは不思議そうに鬼兵と呼ばれた男へ視線を向けた。
そして最近の推し活相手である大田原の名が出た事で妙な心境に陥っていた秋が即座に反応した。

「大田原さんが…バカァア!?」
「大田原さんの…どこがバカだオラァ!!」

しかし彼女の怒声と被る様に、観客席から同じ様なフレーズで怒声を上げる者が現れた。
鬼の形相でブチギレながら観客席から飛び降りて来たのは王城ホワイトナイツの猪狩大吾。別名"プリズンチェーンの猪狩"である。

「いや待て猪狩!!否定できない!!」
「止める理由そこーー!?」

ほぼ同じタイミング、同じ声量で大田原を庇った秋と猪狩は瞬時にお互いを認識し合った。なんだアイツ?と。しかしタイミングが悪かった。
何故なら猪狩は全身を鎖でぐるぐる巻きにされたまま観客席から飛び降りて来たからだ。
後先考えないところも秋と似ている様である。
受け身を取れないであろう猪狩は一直線で鬼兵に飛び付いた。
刹那、猪狩は鬼兵により地面に押さえ込まれた。

「おう、なんだいきなり!元気いい野郎だな!」

スーツの皺を伸ばす様に整えると、寛大な態度で鬼兵は笑った。
地面に倒れた猪狩が大騒ぎしているが、泥門の面々は今し方見せ付けられた鬼兵の動きにざわついていた。

「あの咄嗟で…」
「怪我しねーようにねじ伏せたな…」

黒木と十文字が顔を見合わせて驚嘆していると、何処か嬉しそうに鬼兵の説明をし始めた。

「鬼兵さんって中学の頃から有名人でね。麻黄デビルバッツで一回対戦した事あるんだ!」

鬼兵は中学の頃ですらテクニックが高く、助っ人だらけの麻黄デビルバッツでは手も足も出なかった様である。
彼は小柄ながらも小学生の頃からライン一筋の超ベテランワザ師。彼の引っ張る柱谷ディアーズは優勝候補の一校だ。
すると雪光がトーナメント表を確認し出し、ぽつりと呟いた。

「柱谷ディアーズって、泥門と同じブロックですよね」
「…ってことは、王城と決勝で戦うには…」
「この鬼兵さんのチームも倒さなきゃいけないわけか…!」

ゴクリ、と生唾を飲み込む泥門デビルバッツの面々であったが、大田原バカ騒動で憤怒していた秋はそんな話そっちのけで猪狩の鎖を引っ張る推しに注目していたのだった。



20260623

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