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その後、猪狩大吾が記念すべきデビュー戦で出場前に退場になるというアクシデントもあったが"最強の王国"という名に相応しい功績を残し、王城ホワイトナイツは82対0で山閣パンクスを見事破った。
会場の熱気が冷め切らぬ内に第二試合、泥門デビルバッツvs夕陽ガッツの試合が始まることとなった。
『二試合目の顔合わせは、夕陽ガッツvs泥門デビルバァッツ!!』
そう実況されるとワァアア!と歓声が上がったのだが、観客たちが次々とザワザワとし始めた。フィールド上にミュージカル俳優さながらなポージングを決めて立っている人物を発見したからだ。
自分にスポットライトが照らされていると錯覚している程の没入感。
泥門メンバーのみならず夕陽ガッツのメンバーも予期せぬ事態に顔を見合わせた。
「ま…」
「まさか…!」
鈴音とセナも顔を見合わせていたところであった。
こんな芸当を恥ずかし気もなくノリノリで出来る人物なんて1人しかいない。
そう、ミスターバカ・瀧夏彦その人であった。
「アハーハー!みんな!ボクのデビュー戦にこんなに大勢集まってくれてありが…」
彼の暴走は妹・鈴音の手によって強制終了させられた。
チアガールたちに担架で運ばれる瀧であった。
その姿にもだが、フィールド上でキメキメのスーツをめかし込んでポージングする瀧の写真をバシャバシャ撮っていた秋は、自身のフォルダを見返してもゲラゲラ笑っている。
その横では意外にもヒル魔もニヤリと不的な笑みを浮かべていた。
「ケケケ、構いやしねーよ。好きにハッタリかまさしとけ」
担架の上で横になる瀧にトドメを刺そうとしている鈴音にヒル魔は上機嫌でそう言うと、夕陽ガッツ側に聞こえるように更に続けた。
「何せ、あの熱海ってのは責任感の塊みてぇな男でな。そういう奴程揺さぶりに…」
「え?でもヒル魔先輩…」
ヒル魔に促される様に夕陽ガッツ側のベンチへ視線を向けたモン太が、彼の言葉を遮った。彼が指を刺す方へ自ずと皆が顔を向けると、思わず眉を顰めてしまった。
何故なら主将である筈の熱海がベンチ座っていたからだ。
「……?」
どういうことだ?と泥門デビルバッツの面々は頭の上にクエスチョンマークを浮かべていたが、突如会場出入り口から夕陽ガッツのユニフォームを着た男たちがゾロゾロ現れた事でその表情は驚きの物に変わった。
その人数はざっと10数名。泥門と夕陽、お互い少人数チーム同士の試合だと皆が知っていた為に、突然の事態に観客は声を荒げた。
「うおおおお!」
「なんかいっぱい出てきたぞ!」
今し方現れた夕陽ガッツユニフォームの面々はしっかりヘルメット着用で躊躇なくフィールドに集まって来た為、栗田が戸惑った表情を隠す気なくポツリと呟いた。
「夕陽ガッツって…10人ちょいのチームじゃないの??」
夕陽ガッツの面々の様子を黙って見つめていたヒル魔はふと秋へ視線を向けた。
「糞ビンボー。夕陽高校の全校生徒リスト確認しとけ」
「あ、了解です」
指示されると秋は一旦フィールド上にいる夕陽ガッツユニフォームを着た男たちの顔を一人ずつ注視すると、ベンチに積み重ねてあった分厚いファイルを開き黙々と目を通し始めた。
▪︎
秋が1278名、夕陽高校の生徒リストを全て確認し終える頃には試合はスタートしていた。
「クッソ!こいつら…速ぇなオイ!!」
キックオフ後、ライン組の隙間を掻い潜って41番の選手がボールを抱えた石丸にタックルした。石丸はそのまま倒されてしまい、これで泥門の攻撃スタート地点が決まった。
攻撃地点が決まったところでヒル魔がヘルメットを外し秋の元へ歩み寄った。
「どうだった」
「あ、はい。サッカー部の田中、野球部の中川、バレー部の橋本、陸上部の佐々木、バスケ部の柳田、柔道部の剛田と松本、ボクシング部の長谷川、相撲部の清水と原。うーん、まぁ夕陽高校運動部助っ人オールスターですね」
フィールド上にいる夕陽ガッツユニフォームを着用した選手たちを一人ずつ指差し、所属部活動と名前を次々と述べた秋が簡潔に今の現状を伝えた。
夕陽ガッツは唐突に新入部員が大量加入した訳ではなく、突如現れたあの男たちは他の部活動からの助っ人だった訳だ。
秋の言葉を聞くとセナ、というかアイシールド21は素っ頓狂な声を上げた。
「…じゃあ夕陽ガッツの正部員は、ほとんどベンチって事?」
「酷くない!?」
「つーかなんか汚ぇ!」
セナの言葉に鈴音が反応し、モン太もそれに賛同した。
「酷くも汚くもねぇ。泥門だって助っ人入れてんだろ。」
彼らの発言を否定する様にヒル魔が言った。
実際泥門デビルバッツもサッカー部やバスケ部、陸上部から助っ人を常時入れている。
「正部員はずしても考えられる最強メンバーで揃えんのが当然だ」
正部員。ヒル魔のこの発言を聞いたベンチに座る雪光が、一瞬寂しそうな顔をしたのを秋は見逃さなかった。
雪光の前で発するにはデリカシーが無い発言であったが、彼はヘルメットを被り直しながら意味深に言葉を続けた。
「助っ人だらけって構成が、ホントに最強なら。だがな」