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ヒル魔も年がら年中銃火器を乱射しまくっているが、ここにも同じ様な男がいた様だ。
本物なのか否か。それは定かではないが、西部ワイルドガンマンズの監督、ドク掘出は本日も両手に持つ拳銃を空へ乱射しまくっていた。

「ヒル魔先輩で慣れちゃってるけど、大人がアレはやばいよね」

西部ワイルドガンマンズはアメリカ合宿中に大変お世話になったので、王城と同じくらい親近感が湧いている。
しかしドク監督のあの乱射だけは誰か止めないのかと秋ですらどうかと思う、という感想を抱いてしまっていた。

「さ…流石にニセモノなんじゃ…」

秋がボロリと溢した言葉を聞くも、セナは苦笑いでそんな返しをするのが精一杯だった。
現在13時。泥門vs夕陽の試合が終了した為、第3試合開始のアナウンスと共に会場に入場した西部ワイルドガンマンズ。
実況に"東京最強"と紹介されるところを見ると流石は今大会唯一のSクラスである。

「んで、西部の相手チームどこだ?」
「「こ…この組み合わせって…」」

客席で着替えを済ませたモン太がセナに尋ねると、彼と栗田は微妙な面持ちを浮かべた。
対するは恋ヶ浜キューピッドであった。評価はDランク。

『かつてここまで結果の見えた対戦があったでしょうか!まさに巨像とアリの闘いッ!!』

実況にすらここまで言われる恋ヶ浜キューピッドには涙すら出るレベルだ。
悪気無く会場中にそんな西部贔屓の言葉を響かせる実況に、まもりは引き攣った笑顔を浮かべた。

「実況さん、言い過ぎ…」
「ケケケ。いいじゃねぇかホントのこった」

恋ヶ浜キューピッドは創部3年目という若いチームであるが、何かと泥門デビルバッツと縁があるような無いような…なチームだ。
彼らは春大会での泥門デビルバッツの初戦相手だったのだが、全くアメフト知識の無い状態のセナをアイシールド21として投入して圧勝した過去がある。
実力が無くとも、彼女がいれば入部出来るという意味不明のチームなのだ。


▪︎


「あ、あのね…無理…もう……」
「うーん、仕方ないね」

地面に伏せっている恋ヶ浜キューピッド主将の初條が、死ぬ前に最後の願いを審判に願い出た。それは棄権であった。

『おおっと恋ヶ浜棄権だー!ワイルドガンマンズ、コールド勝ち!!』

125対10。西部ワイルドガンマンズの圧勝であったが、ドン監督は試合開始前200点差で勝て!と選手たちに指示を出していた為、その棄権を拒絶する為暴れ回っていた。
王城が80点差で泥門が50点差だった為、張り合いたかったらしい。
しかし無敵の攻撃力の反面、Dランクの恋ヶ浜相手に10点も許している。なんとも極端である。
ちょこちょことそんな分析が聞こえて来るとヒル魔がニヤリと口角を上げた。

「それがなんか問題あるか?取られる以上に取りゃいい」
「「「うわーー好きそうそういうの」」」

栗田とセナ、モン太は声を揃えてヒル魔に相槌を打った。
攻撃は最大の防御なり!いつでも攻め攻めな姿勢を崩さない泥門デビルバッツと、西部ワイルドガンマンズは何処か似ているチームなのかもしれない。

「じゃあもし西部vs泥門戦なんてなったら、すっごい点取り合戦になっちゃうね」
「ま、うちが対抗できりゃの話だがな」

栗田の発言にヒル魔はサラリと返した。
泥門が西部と対戦する為にはAブロックの決勝戦まで勝ち進まなければならないが、今の泥門ならば可能性は大いにある。


▪︎


第四試合は15時から開始であるが、予定より第三試合が早く終わった為1時間ほど空き時間が出来てしまった。
というわけで秋はヒル魔の指示により次当たるかもしれない柱谷ディアーズや巨深ポセイドンを偵察する為に会場内を彷徨いていた。
個人的に巨深ポセイドンはあまり印象的ではないが気になる点はあるし、柱谷ディアーズの鬼兵は要注意だろう。

「えーっと、控え室ここか」

柱谷ディアーズの控え室前まで辿り着くと、秋はキョロキョロと辺りを見渡した後ベタリとドアに耳を押し付けた。
この会場の控え室は窓が無いのでどうしてもこうなってしまうのだ、だから仕方がないのだと秋は脳内で言い訳をした。

「あっれ〜?何してんの?」
「わッ!!」

暫く控え室の中の声や物音に意識を集中させていると、突然秋の背後から声を掛けられた。
あまりにも驚いた彼女はひっくり返って廊下に尻餅を付いてしまった。

「あ、ごめんな。ビビらしちった?」

2メートル近いかなりの長身。金髪。チャラそう。あと頭悪そう。
その長身の男は尻餅を付く秋に手を伸ばして人当たりの良さそうな屈託のない笑顔を浮かべた。
しかし彼女はヒル魔から渡された資料で彼の顔を見たことがあった。

「何してんだよー!早く立てって!」
「あ、ありがと」

水町健悟。巨深ポセイドンの選手だ。
彼の身長は栗田程あるだろう。驚いたのもあるが、顔をジッと見て数秒固まってしまっていた為急かされた秋。差し出された手を取り彼女は立ち上がった。

「で、何してんの?迷子?」
「え?あー、えーっと…」
「あ!もしかしてどっかの学校のスパイか!」
「す…スパイじゃないし!」

スパイである。
しかしどちらかと言うと今は柱谷をスパイしていたので、巨深の選手相手ならば一応嘘にはならない。筈。
必死に秋は頭を動かした。何か、柱谷の控え室前にいて、ドアに耳を押し付けていても違和感の無い言い訳を考えねば。と

「ええっと…柱谷のマネージャーが、友達だから…頑張って、って言おうと、思って……」

秋は嘘が下手である。ドアに耳を押し付けて中の会話を盗み聞きしていたなんてあからさまにスパイの挙動であったが、どうやらこの水町は騙されやすいらしい。
掌に拳をポンと打ち付け、至極納得した様に彼は笑った。

「あー!友達に挨拶か!邪魔してごめんなー!」

よっしゃいけた!と心の中で秋、ガッツポーズである。
水町健悟をリアルで見た感じ、嘘偽りのない純粋無垢な男だと印象を受けた。つまり騙されやすそう。
あんなわかりやすい嘘で納得したと言うことは、秋の見立ては当たっていたと言うことになる。
ついでだしこの水町について質問でもしてみるかと思い立ち、彼の脳天からつま先を一望しながら秋は言った。

「それにしてもめっちゃデカいね」
「ンハッ!だろ!高さが俺らの武器だからな!」
「高さが武器ってことはアメフト部?何処の高校なの?」
「巨深ポ…やべ!まだナイショなんだった!ちなみにお前どっかのマネージャー?」

身長を褒められたら饒舌になってしまうし、チーム名も途中で止めたものの殆ど言ってるし。流石に自分が隠し球だという認識はあるもののやはりバカそうである。
咄嗟に口をつぐんだ水町は、念の為なのか秋にそう尋ねた。
一瞬名乗るか否か考えたが、Tシャツに泥門デビルバッツのロゴが入っているので流石にバレるだろう。
左胸にプリントされた泥門のロゴを引っ張って見せると、秋は水町に笑顔を向けた。

「泥門デビルバッツ!」

秋が泥門の者だとわかると水町の目付きが変わった。
今までフレンドリーに接してくれてはいたが、興味の対象にシフトチェンジした様な印象だった。

「ンハッ!アイシールド21の所じゃん!」
「そー。アイシールドの所!」

そう秋が相槌を打つと水町は目をキラキラさせながら彼女の頭の位置に合わせて屈むと、さっきよりも声のボリュームを落として尋ねてきた。

「なぁなぁ!アイシールド21の中身って誰なんだ?」
「ナイショ!」
「えー!!」

間髪入れずに秋が拒否すると水町はわかりやすく悔しそうなリアクションをした。普通に考えたらチームエースの秘密を教える訳が無いだろうに。
しかしこの水町という男は悪気無くこういった行動をしているのだろうと秋は分析した。

「だってあんただってヒミツなんでしょ?しょーがないじゃん!」
「確かに!お前おっもしれーな!名前なんてーの?」
「加賀秋!」
「秋か!何年?」
「1年!」
「おー!同い年じゃん!俺水町健悟!よろしくなー!」

秋の右手を両手で掴み、水町はそれをぶんぶん振って元気な握手を繰り出した。
大型犬みたいだなぁと思いながら、秋はヒミツだけど名前は名乗っていいんだーとも内心思った。


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