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最終クォーター。現在20-12で太陽スフィンクスにリードを許しており、残り10分と来た。
先ほどのまもりの計算通りで行くと、泥門デビルバッツはタッチダウンを2回取らなくては勝利できない。しかしモン太は鎌車に戦車バンプで妨害されまくっており、泥門にタッチダウンの兆しは全く無い。残り時間10分で、更にこの状況下の中タッチダウンを2回取る等不可能に近い。

「あっぢ〜…」
「この暑さ、みんな大丈夫かな…」
「いやー明らかに動き鈍くなってます」
「みんな、攻撃も守備も出てますからね…」
「しっかも、ホラ!相手見てくださいよアレ!」

ベンチですらこの暑さだ。急ぎで準備した為に薄めのメイクで来た秋は内心自分にグッジョブサインを送っていたが、そんな事よりも太陽スフィンクスチームの選手を指差した。

「汗ほぼかいてない!」

流石毎日こんな灼熱の中アメフトをしているチームだ。太陽スフィンクスにとってこの気候なんてまだまだ全然我慢出来るレベルなのだろう。
そうして雪光の反射が、観戦客を襲う。


▪︎


そうこうしている間にも残り時間は着実に減って行き、あと5分となった。
泥門のタッチダウンの兆しはまだない。

「ヒュウ〜〜!どすか〜〜!?」

泥門チームの元気が無くなれば無くなるほど、反対に太陽チームの元気が増える。はたまた戦車バンプが功を期している為なのか、鎌車のテンションはぶっちぎりで上がっていた。

「パスだってパワーで止まる!!」
「わかったから落ち着け」

お得意の戦車バンプを披露しまくる鎌車に、太陽チームの副主将である番場が冷静に静止を掛ける。高校3年生のテンションでは決して、ない。しかしオフの日は意外とノリがいいらしいので、しっかりオンオフを切り替えられる将来有望な高校生の様だ。
空を切る様に戦車バンプをお見舞いしていたが、勢い余ってなんと言うことか鎌車は自陣チームの櫓に技をお見舞いしてしまった。

「ゲーーーーーッ!!」

結果、ゴガグワシャァ!!と中々聞いたことのないド派手な音と共に、やけにピラミッドを意識したどデカい太陽スフィンクスの櫓が粉砕した。凄まじいパワーではあるが、鎌車は先輩達に本気で怒られる事になった。
偶然、今対峙してる鎌車の物理的パワーをお披露目される流れになったモン太は震え上がるしかなかったのだった。

「HUT!」

残り時間3分56秒。
アイシールド21の動きを真似てみたがワンパンで鎌車に張っ倒されてしまったモン太。その間にライン組との連携プレーでアイシールド21が11ヤード前進。十文字らが歓喜の声を上げる中、モン太は尻餅をついたままパワーもスピードもない、キャッチだけしかできない自分を悔いていた。

「あー!残り1分切っちゃった…!」
「え、もう!?早ー!」
「2本タッチダウンしなきゃいけないのに…」

刻一刻と終わりは近付いて来ている。
残り1分でタッチダウンを2回なんて可能性はほぼない。10分で1回も取れなかったのだから。
泥門チーム、タッチダウンまで残り30ヤードだ。残り時間を考えればパスでタッチダウンを決めたいところである。

「糞ザルにロングパスだ。一気にタッチダウン取るぞ!」

ヒル魔の指示に、モン太は一瞬言い淀んだ。

「でも俺は…バンプに完璧押し負けて…」
「押し負ける?テメー自分のポジションわかってんのか!」
「レシーバーの勝負は、僕らみたく密集地対ぶつかり合う戦いとは違うんだよ」
「バンプなんざ無視!さっさとフィールド駆け上がれ!」

ヒル魔、栗田のアドバイスでモン太の眼差しに光が戻った。
スピードとかパワーとか、そんな物はどうだって良かったのだ。そうだ、キャッチだけで良かったのだ。

「広い外野がテメーの庭だ。違うか?」

背番号80、雷門太郎はキャッチの神に愛された漢なのだ。


▪︎


「タッチダーゥン!!」

ヒル魔のロングパスを、鎌車の戦車バンプで倒されながら、そしてモン太らしく転がりながら見事にキャッチMAXした事により20-18。2点差まで迫った。しかし残り時間は35秒。
すげぇ!と観戦客から歓喜の声が上がると、モン太はビシリと空を指差し決めポーズを決めた。

「すごーい!ナイスキャッチ!」
「まもりさん…!」

決めポーズをビッシリとキメていたモン太だが、まもりの声掛けにより一気に有頂天モードになった。前半終了後、まもりにしていた約束を無事果たした彼はゴチャゴチャと独り言を述べた後、これまたとんでもなく大きな声で行ってのけた。

「名誉返上ッス!!」
「誰かその猿に人間の言葉教えてやれ」

背番号80、雷門太郎。彼はヒル魔の辛辣な言葉にも挫けない、良い雄猿でもある。

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