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06

コムイさんに言い渡された次の任務は、ユウと一緒だった。アレンくんと任務に行ったユウと合流して、そのまま次の街へと向かう、というよくある流れだ。
リナリーには申し訳ないけれど、わたしはコムイさんがあまり得意ではない。普段のおどけた雰囲気の彼ならばともかく、真面目な顔つきをしている時の彼の目は、わたしのどうしようもない内面を見透かしてくるようで少し怖い。
体のこと、イノセンスとのシンクロ率のこと、色々と聞かれた後に暗い雰囲気を誤魔化すように、コムイさんはおどけたように笑って、それからわたしに書類をいくつか手渡した。今回の任務に関するものらしい。
ファインダーさんたちはもう現地にいるようで、ユウと合流するための列車には、わたし一人だけが乗ることになった。
「黒の教団のものです。一室、用意してください」
もうすっかり聞きなれて、言いなれてしまったセリフを、団服の十字架をちらつかせながら列車の職員に言う。そう言うと、余っていたらしい部屋が一つ、わたしのために用意された。
ユウとの合流地点にはここからどれくらいかかるだろう。とりあえずこの列車に乗っていればユウが途中で乗ってきてくれて、合流出来るはずだけれど、しばらくはわたし一人きりだ。
ああ、こんなことなら、初めからユウと一緒だったら良かったのに。一人でいると本を読むか、思い悩むか、眠るかのどれかをするしかなくなってしまう。列車の中で本を読むのは車酔いをしやすいわたしからしてみれば自殺行為みたいなものだし、眠ってしまうといつ起きれるかはわからない。ユウが上手くこの部屋に案内されて来るとは限らないのだし、わたしのゴーレムはわたしに似てかとてもとても臆病で大人しいので、わたしを起こしてくれる、なんてことはないだろう。
ガタゴト揺れる暗い列車の中で、わたしの思考がぼんやりと沈んで行く先は、当然のように今のわたしが目覚めた、あの場所だった。
笑顔で本を読むアルマがいて、顰めっ面で何が面白いのかと聞くユウがいて、アルマに文字の読み方を聞くわたしがいる。
ご飯は丹薬で、今ならば考えられないようなそれを、わたしたちは三人で頬張っていた。丹薬か、そうでなければ込み上げてくる血の味しか知らなかったから、美味しいだなんて感覚は当然わたしの中にはなかったけれど、アルマのマヨネーズ好きにはユウと一緒に毎度毎度、呆れてしまっていた。
毎朝、新しい誰かの目が覚めないかとみんなが眠っているところへ挨拶へ行って、わたしも新しい子が目覚めたら、アルマがわたしにしてくれたようにお世話ができるのかなぁと考える。わたしがそう言うと、「ナノには絶対無理だな」とユウに笑われて、わたしはアルマに泣きついてばかりだった。
あの日、どうしてあんなことが起こったのか、結局わたしは、何も知らない。
あの日のわたしは、ユウのようにわたしたちがどういう存在なのかを思い出すことも、アルマのように真実を知ってしまうこともなく、何も知らずに泣いていた。
わたしは隔離されてしまったユウを助けよう、とアルマと共に逃げ出したのは良かったけれど、エドガーに捕まってしまったわたしは、そのままアルマに置いていかれてしまった。
その後のことは、あまり、思い出したくない。わたしはエドガーやトゥイの血でどろどろのアルマの手を振り払い、彼に殺されかけた所を、ユウに助けられた。
ぼろぼろで、血まみれで、どうにかこうにかイノセンスを抱えながらユウに手を引かれるままに、抱えられるままに逃げて、ティエドール元帥に救われた、というだけ。その時ユウが背負っていたマリのことなんて気付きもしないで、何が何だかわからなくて、わたしはずっと泣いていた。
それだけと言えばそれまでで、わたしはただただ、戸惑いの中で泣くことしか出来なかった。
あの騒動の裏にあった何かを、わたしは知らない。誰も、教えてはくれない。
わたしが唯一知っていることは、わたしがずっと前に生きていた人の代わりだということ。ただ、それだけだ。
何もわからなくて理解出来ないのは、あれから何年もたった今も同じ。
きっとわたしが真実を知る日は、来ないのだと思う。
どうして、ユウがアルマを壊したのか。
そしてわたしの頭の中に響く声の主一体誰なのか。ユウが探している「あの人」とは誰なのか。
わたしは何にも、知らないままだ。