
08
任務は滞りなく進んだ。ただ、イノセンスは見つからず、アクマだけをこわして終わった。割合、いつもの通りだ。イノセンスなんて見つけられることの方が稀なのだ。
ただ、こんな時は決まって、切なさだけがわたしの中に残る。
ユウは親しい人の死を悼むばかりにアクマとして呼び出してしまった人たちを弱いと一蹴するけれど、わたしにはとてもそうは思えない。
わたしだって、ユウが死んだらそうしてしまうかも知れない。それで、咎落ちして、この胸に埋め込まれた呪符の力も何もなくなって、死んでいくのだろう。
ここまで誰かに依存するのは異常なのかもしれないけれど、こればかりはしょうがない。ただでさえ、わたしは、アルマを失って、周りの人達をユウ以外全て失ってしまったのだ。
ユウだけが、わたしの中では最後の希望。
暗い闇の中を照らすただ一つ残った灯火なのだ。消えてしまったら、暗い闇に堕ちていくのもしょうがないと、思っている。
ユウはとても強いから、そんなことにはならないのだろうけれど。
むしろ、わたしの方がいつ死んでしまうか、わかったものではない。体の強度は相変わらずで、筋肉だって、いくら頑張ってもつきやしない。ユウの動きについていくなんてもってのほか。イノセンスでの補助がなければ、みんなと同じように振る舞うこともできない。いつも通りの駆け込み乗車だって出来ないのだ。
「ナノ。コムイに連絡してきた。次は長期任務だそうだ。……ケビン元帥が殺されて、俺達の任務は……あの人の、ティエドール元帥の警護。マリやディシャとも合流する」
「……そっか。うん、わかった」
元帥が一人、殺されてしまった。
それだけで、わたしの不安感を煽り、それまでの堂々巡りの思考を中断させるには十分だった。
千年伯爵たちは、何を考えているのだろう。わたしには何も、想像がつかない。考えても考えても、彼らの目的や計画の輪郭すらわかりやしない。
わたしとケビン元帥とは、さして親しいというわけでもなかった。
向こうはわたしのことをセカンドエクソシストの出来損ないの方、としか認識していなかっただろうし、わたしもまた、彼を元帥のひとりとしてしか、覚えていなかった。わたしとユウを拾って、父親のように大切にしてくれるティエドール元帥ならばともかくほかの元帥とわたしとでは関わりが薄すぎて、死んだと聞かされたところで、あまり実感がわかないのが正直なところではある。
けれど、元帥の警護だなんて今までとは違う形の任務にわたしはすっかり怖くなってしまった。
膠着して進みも退きもしなかったこの戦争が、どんどん変わっていくような気がしたのだ。