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02

わたしたちがそのまま、雑談に興じていると車椅子に乗ったジョニーがリナリーを呼びに来た。彼女がコムイさんに呼ばれているらしい。
「じゃあナノ、行くわね」
「うん。また、後でね」
リナリーがコムイさんのもとへ駆け出して行く頃には、ユウとアレンくんはもう一試合始める頃だった。この試合、負けると坊主になるらしい。嫌な罰ゲームだ。
息を切らしながらも木刀を手に稽古をしている二人を相変わらずぼんやり眺めていると、リナリーがさっきまでいた場所に、ストンとラビが座り込んでくる。
「や、お疲れさん」
目に鮮やかなオレンジ色が、キラキラ光って見えた。
「ラビだぁ」
「オレさぁ」
のっそりと言えば、同じ調子で彼はそう返してくる。案外、っていうか、普通に。見た目通りに彼はノリがいい。ユウともリナリーとも違うその雰囲気が、なんとなく好きだった。デイシャに何処か、似ている気がする。
「ナノは具合、どう?」
「どうって言われてもねぇ。腕が取れたけど、元気よ。痛くもないし、腕も多分、あと二、三日くらいってところかな」
普段着の袖の下には、生えかけの腕がひっそり隠れている。今はまだ、二の腕の真ん中くらいしかないけど。
「アハハ、流石さぁ」
お前はまだ結構、残ってるんだっけ、とラビは笑う。そうだよ、とわたしは返した。前線に出てたくさん傷を負うユウと違って、後ろでちびちび支援といえば聞こえはいいけれど、ようは役立たずをやっているだけのわたしでは、この命の使い方だって違う。
わたしの分を、ユウにあげられたらいいのに。彼の残量はもうほとんど無い。
「ユウはさ、色々、気にしないから」
「ふぅん、」
怪我も命も気にしない彼の戦い方は、まるで、死にたがってるみたいだと思う。
ラビの何処か気のない返事を聞きながらそう思った。
ユウは、死にたがっているのだろうか。
やだなぁ。そんな考えに思い至ってしまって、泣きたくなった。ユウが死んだらどうしよう。わたしは本当に、一人ぼっちになってしまう。彼がいなくなったら、もう誰も、わたしには残っていない。
わたしと言えば、一人きりで歩いて行けるほどに強くはないのだ。
未来なんてだいそれたことも、神様なんて背負いきれないことも言わない。ただ、ぼんやりと不確かな次へと、進んでいくために、一人きりじゃあ、駄目なのだ。
わたしの幸せは多分、三人で寄り添いながら、アルマとユウに手をひかれながら、どこともしれない、薄明るい方へと進んでいくことだ。それは、ずっと前から変わらない。
考えていて泣きそうになって、涙がこぼれてきてしまいそうだと思った。
「おい、ナノ」
「げっユウじゃん」
突然声をかけられて、ハッとした。ラビが苦虫を噛み潰したような声を出す。顔を上げるとアレンくんとあれやこれやしていたはずのユウがそこにいて、相変わらずの仏頂面でこちらを見下ろしていた。
ボロボロのユウはなんてこともなさそうにわたしを見下ろしながら、「どうした」と声をかけてくれる。
「何でもないよ」
わたしは首を振って答えて、それから立ち上がる。
ユウの手を握ろうとして、彼の手を握る、わたしの手がないことを思い出した。最近はいつもこうだ。
「お前らはほんと、相変わらずさね」
背後からラビの声が、聞こえた。
わたしたち変わらないと言いたいのだろうか。だとしたらそれは、きっと当たっている。
あの日、澄み渡った青空を見上げたあの日から、わたしとユウは、二人きりで傷の舐めあいを続けている。