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03

サードエクソシスト、と名乗った赤い外套の彼等について、瞬く間に誰もが話題にあげるようになった。
アクマの卵殻を望んで自分の体のうちに移植し、半アクマ化することでアクマと対等に渡り合う力を手にいれた人たち。誰よりも神を、イノセンスを思い、そしてエクソシストを妬んでいる彼らと、わたしはどう接したら良いのかわからなかった。
わたしが顔を合わせたサードエクソシストはほんの数人であったけれど、その誰もが癖の強い人物であることは確かなようである。
「何だか、変な人達ね」
そう言うリナリーの顔は心配げだ。きっと、コムイさんのことを心配しているのだ。新しい本部に来てからというもの、これまで教団に強く干渉してこなかった中央庁の人、各地に散らばった支部の人たちが、ものすごい勢いでなだれ込んできている。箱舟のゲートを使い、遠く離れた場所とも簡単に行き来ができるようになったことも影響しているのだろう。
この教団において高い地位にいるコムイさんは今でも確かに「偉い人」たちの一人で、そんな立場にいる兄が、リナリーは心配でたまらないのだろう。
リナリーは、教団を捨てられない方のエクソシストだ。
わたしは何となくそう思う。
きっとアレンくんは必要に迫られれば切り捨てられるのだろうし、ラビなんて、もっとそうだろう。ユウはそもそも、わたしと身を置くのに丁度いいというのでエクソシストになる道を選んだのだから、まあ必要に迫られれば、捨てられるのかもしれない。
ここにいれば様々な特権がある。任務には行かねばならないが、まず生活に困ることもない。
ユウの中の、その願いを叶えるのに、そしてわたしというお荷物を連れて歩くのに、此処に居るのが、最適なのだ。だってユウはずっと、教団を恨んでいる。エクソシストとして戦う仲間たちのことはきっと信じているだろうけれど、そうだと信じたいけれど、中央庁、そしてアジア支部の人々をユウは誰よりも強く、恨んでいるだろう。
……わたしは。
わたしはどうだろうか。
きっとユウほどに教団を恨むわけでもなく、かといってそこに、入れ込む訳でもない。わたしはここを、「ホーム」とは呼べない。他に行く宛がないから、そんな理由で、わたしはここにいる。
我ながら、リナリーに顔向けなんてできないくらい、ひどい理由だと思う。
ぼんやり、何となく。わたしはただ生きている。いつかそういった生き方のツケが回ってきそうなものだが、今のところは何もない。
生きていてねと、彼女の声の、切実な言葉に従って、ユウと共にいれさえいれば、わたしはそれで、良いのだ。死人は生き返ることもないのだし、他にもう、望むことは何も無い。
「っと、」
「失礼、先を急ぎますので」
ぼんやり考え事をしていたせいか、丁度、話題のサードエクソシスト、その一人にぶつかってしまった。リーダー格らしい、マダラオと呼ばれていた背の高い男だった。
「ごめんなさい、」
わたしが頭をあげる頃には彼はもう、長い廊下の向こうに歩き出していた。真っ直ぐ背筋を伸ばした後ろ姿からは、冷えきった氷のような硬くなさが伺える。
「なんだか、冷たい感じのする人だね」
「うん、不思議……な、雰囲気の人だった気がする」
リナリーの言葉に、頷いた。
ただ、一瞬だけ彼がこちらを見た時に見せた、あの瞳。底知れぬ雰囲気の中にあるのは、確かに嫉妬の色だった。
よくわたしが向けられていた色だからこそ、わかった。なんであんな奴がイノセンスに選ばれたのだろう、と彼の目は、確かにそう訴えていた。
敵とも、味方とも言えぬ彼等の底知れない雰囲気が、なんだか怖くて恐怖ゆえなのか、ひどい不快感がわたしを襲う。
誰かに悪意を向けられてしまって傷つきはすれど、こんなにも、不快感を覚えたりはしなかった。どうしてだろう。わたしにはよく分からなかった。ユウならば正解をくれるだろうかとすがりつきたくなったけれど、多分、無理だろう。だって、ユウはとびきり頭が悪い。