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07

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ゼリービーンズをたどった先には、ゴズさんが縛られて大きな体を小さく縮めて震えていた。店主さんの姿もそこにある。彼は震えて、血の気のひいた青白い顔をして俯いている。
まるで生気のないその様子の彼をアクマと勘違いしてしまったわたしたちだったけれど、そこはゴズさんが取り成してくれたおかげで、店主さんを傷つけずにすんだ。
彼はそのまま、わたしたちに帰って欲しい、と訴える。その様子はなんとも痛々しくて、悲しげだった。
けれど、わたしたちはエクソシストなのだ。この場所が「魔女の住む森」と呼ばれる理由を、調査しなくてはならない。
店主さんを送り届けるために再び雑貨屋に足を踏み入れたわたしたちを出迎えたのは、先程まで姿の見えなかったソフィアさんだった。
彼女に腐臭の漂う小屋のことを、そこにゴズさんが監禁されていたことを話したのだが、彼女からは歯切れの悪い言葉しかかえってこない。なんだか様子のおかしい彼女の口から突然、村に伝わる迷信と、その迷信の犠牲となった双子の妹の話が語られた。
わたしはようやく、ここで気がついた。アクマは、この村をおかしくしてしまったのは、彼女だったのだ。
「――それでわたしは、あの人と、千年伯爵と話したのよ。ここをアクマだけの村にしよう、伝説を本物に、ここを本当の魔女の村にしようって!」
天使のような外見でそんなことを話す彼女は痛ましくて、とても見てはいられない。
「……なんで、そんなことを続けるの? だって、もう復讐は成ったんじゃない」
アクマの特性を知らないわけじゃない。けれど、彼女から語られる話には同情してしまう部分があまりにも多くて。
だからつい、そんなことを言ってしまったのだろう。
「いいの。それでいいのよ。伝説を本物に、村の奴らをみんなアクマに。それがわたしにとっての、最高の復讐だわ!」
声高に叫んだソフィアさん……いや、アンジェラさんは、めきめきと痛ましい音を立てながらアクマの姿に変わっていく。
完全に変化を遂げた彼女の姿は、村に入る時にやゼリービーンズを追っている時に出会った、あのボール型のアクマではなかった。
独特のほっそりとしたシルエットをした、正しく魔女とでもいうような風貌の、レベル2のアクマだった。
「ゴズさん、逃げて!」
アクマが、アンジェラさんが黒いケープから取り出した大きな鎌を一凪する。
それだけで、周りの陰鬱な村の風景は壊れて、ゴズさんも飛ばされていく。
彼の姿が土煙と共に消えて行くのをみて、またファインダーの人を見殺しにしてしまった、なんて思ったけれど、彼は無事生きていた。大柄な体から想像のつくように、彼は随分丈夫らしい。良かった、とわたしが一息ついた時、
「アンジェラ! もう止めてくれ!」
痛々しい叫び声が、背後から響いた。
振り返るとそこにいたのは店主さんだった。彼は泣きながら娘を魔女などに差し出してしまった自分が悪かったのだと、許しを乞う。
けれど、アクマがその懺悔を聞き入れるはずもなかった。
わたしのイノセンスも、ゴズさんの手も、ユウも(ユウは助けなかっただけかもしれない)、届かないうちに、アクマの大きな鎌は店主さんへ突き刺さった。
鮮血が広がり、力なく倒れ落ちた店主さんを、彼女にとっての父親の屍を見つめるアクマの顔には、嘲笑が浮かんでいた。
「ああもう、だめだなぁ」
なんとなく、彼女に同情してしまっている自分がいた。ユウに言ったら冷たい目で睨まれて、何回でも、何時間でも座禅や鍛錬をさせられそうなくらいのあまっちょろいわたし。
彼女を斬りたくない、というゴズさんの意見には同意する。わたしだって村に伝わる怪しげな迷信の犠牲者でしかない彼女を、切りたくない。
手に持ったグラスを、わたしのイノセンスを握りしめる。
「そいつらを殺せ!」
いつの間にか、アクマにされていたらしい村人たち――優に五十人はいるだろう――が集まっていて、それらはわたしたちに向かってきていた。
村の規模から考えて、もう村人全員がアクマにされていると見て、まず間違いないだろう。この村はもう、本物の「魔女の住む森」としてとっくに完成していたのだ。そして、その手引きは目の前に佇む彼女が行ったことだ。
アンジェラさんはもう、すっかりアクマに成り果ててしまっているのだ。