真っ暗な船内で一人、一枚の紙を見ていた。
ゆらゆらと不規則に揺れるこの船内に合わせるように、カサカサとある方向に移動するそれは、まるで私の今の気持ちを表しているみたいで、泣けてきた。
「こんな紙……いらないのに」
元海兵を乗せたこの船は、今まで掲げていたカモメをおろし、何も印のない旗を掲げ、逃亡者になってしまったものたちを乗せ航海したいた。
「あなたは何でこれを渡したんですか?」
届く筈もない声を暗い室内に響かせ、カサカサと動く紙を見つめ、これを渡した元上司に問いかけた。
「……全てを私達に擦り付けたあなたに会いたいと思う私は、ただのバカです」
元上司の爪の垢を煎じて作ったその紙を大切に手に取り、自分の胸元にあて呟く私は、端から見れば滑稽にしか映らず、元海軍で闇の諜報部員をしていた者だと到底思われないだろう。
「あなたは持ってくれていますか? 私のビブルカードを……」
頬を涙で濡らしながら、窓から射すあの島では見ることはなかった月を眺め、願うように聞いた。
いや、これは聞いたのではなく、願ったのほうが正しい。
「スパンダム長官……会いたいよ」
もう自分の上司ではなくなったのに、そう呼んでしまうのは、私達を繋いでいたのが上司と部下という関係しかなかったから、それが無くなると自分達の関係も打ち切られたような錯覚をしてしまう。
「……どうかご無事で」
ジリジリと紙の端が焼けているのを見て、またぽつりとそれに雫を落とすと、紙の真ん中に唇を触れさした。
「大好きです、スパンダム長官」
自分しか聞こえない告白は、そっと胸の内に閉まった。
-END-