月なんて久しく見ていない。そう思いながらもカーテンに仕切られている窓を見つめ、側のナイトテーブルから煙草とマッチを取った。
その時ギシリとスプリングな小さくなった。
それを聞いて口にくわえかけた煙草を一瞬止めたが、隣の彼が目覚めていない事に気付き、煙草をくわえマッチで火を点けた。
「……。ふぅ」
吐き出したそれはゆっくりと天井に向かった。首を上げそれを見ていると、隣で彼の起きる気配がした。
「おはよう。お目覚めはいかが?」
「……ふ、眺めは最高だな」
「ふふふ。変態」
「名前が一番知ってるだろ?」
「ええ、そうね。昨日それをよく教えてもらったわ? スパンダム」
彼の顔がよく見えるように方耳に髪をかけると、ナイトテーブルにある灰皿に煙草を押し付けて、彼に近づきおはようのキスをした。
すると、寝起きのクセに素早く私の後頭部に片手を回し、グッと引き寄せ、到底朝にするようなキスとは思えないそれをした。
薄々とこうなる事は感ずいていた私は内心呆れながれも、彼の胸にそっと添えていた片手をとんとんと叩き、解放してもらった。
「っ……寝起きとは思えないわね」
「うるせェ、ほっとけ」
あまり彼に体重をかけないように凭れ見下ろすと、私の後頭部に添えられていた片手が流すようにするりと髪を通した。それをチラリと横目で見ながら私は彼の髪に手をやった。
彼の少しうねりの入った紫色の髪に手が届く前にパシリとそれは止められ、不思議に思った私は「なに?」と言うように眉を片方上げた。
だが、彼は私のそんな問いに答えず、ぐるりと位置を反転させ今度は彼が私を見下ろす番だ。
「……ちょっと、朝からなにする気?」
「昨日の続き、だろ?」
「はぁ? も、もう無理よ!」
「いいから、黙ってろ」
「ちょ! ほんとやめっ……!」
昨夜の事を思い出し、少々熱を帯びた顔を隠そうと背けかけた時、ガシリと顎を掴まれそれは叶わず、尚且つ先ほどもした朝からするようなものではないようなキスをされた。
「ん! ……ふ……ぅ……ん」
自分の甘ったるい声が一層昨夜の事を思い出させ、生理的な涙が溢れてきた。
そんな私を彼はキスをしていても分かるくらい嬉しそうに笑い、舌を絡めた。
溢れた涙が幾つか頬を伝った時、やっとそれが離された。だけど、彼のそれは私の唇から首筋に滑るようにして這い、そしてまるでそこにも唇があるようにしてキスをした。
粘着質にキスを繰り返しされる首筋にビクリと肩を跳ねさせ、息を荒くした。
チラリと見える彼の伏せられた瞼から伸びる綺麗な睫毛や、熱い息を出す唇から見え隠れする赤く濡れた舌に、背中に甘い刺激が走った。
「も、もうっ……スパ、ンダムっ! やめっ」
彼からのキスに抗議の声をあげるが、彼にそんなものが聞く訳もなくより一層強くキスをされた。
「ん……! 痛っ! ちょ、もう止めてよ」
自分の頭を置いている枕の端をぎゅっと握りしめ、彼から与えられる刺激に絶えていると、違う痛みと共にまた刺激がきた。
彼の唇は首筋から鎖骨に滑り、そこにあまがみするように次々とマークを残した。
「名前はこのぐらいしねェと満足しねェからな」
「ば、バカ言わないで! そんなのっ!」
続きの言葉を言おうとすれば、彼に塞がれ舌をチクりと噛まれた。
「っ痛いから、さっきから」
唇を離した彼の顔を見てそう言えば、また嬉しそうに笑い言った。
「ブァァカ、名前のその顔が見たくてしてんだよ。それにこれがいらねェって言ったら縛り首にしておれの部屋に監禁するぞ」
私の鎖骨に指を這わしそう彼は恐ろしいだけどなんとも彼らしい事を口にした。
「もう今、ほとんどその状況と一緒じゃない? スパンダム?」
「まだ監禁も縛り首もしてねェだろ?」
「まだってするつもり?」
「……さぁな」
「今の間はなに?」
ひきつりそうになった私の問いには彼は答えず、また私の唇を塞いだ。
本当にいつか彼に監禁されてしまいそうで、一筋の冷たい汗が背中に伝った。
だけど、それもいいかもと思ってしまった自分が恐ろしく感じた。
「ん、……時間の問題ね」
「なにがだよ」
「内緒よ」
どっちが最初に監禁という行為に及ぶのだろうか。
-END-