『あら? あなた気付いてなかったの?』
意外そうな顔でそうカリファに言われたのはつい先日の事だ。何がと私が彼女に聞くと、言いにくそうにでも少し楽しそうな表情をして『長官……スパンダム長官、あなたのことが好きなのよ』ととんでもない爆弾を落としていった。
それを聞いた私の一言目が『嘘でしょ』だった。
「あー、長官……。これ報告書です」
「おう、そこに置いといてくれ」
任務から戻って来た私は報告書を提出しにこの指令長官室に来たのだが、カリファから聞いたあの言葉が耳から離れなくて居心地が悪い。任務中も変に気をとられていて、通常よりも時間がかかってしまった。カリファめ、任務前にあんなこと言わなくてもいいのに。というより、こういうのはやはり本人の口から聞きたかったな。
「……? 何でまだここにいンだ名前?」
「へ? あ、いや。別に……なにも……」
長官が座って何やら書類に羽ペンを滑らせている、硬い石造りの机の上に報告書をカサリと置いた後、何故かそのまま目の前の長官を見つめるような形で机の前でぼおっと立ったままになってしまっていた。
そんな私に長官は不思議に思ったのか、動かしていた手を止め、器用に眉を寄せこちらを見つめた。
「ならもう下がっていいぞ、お前の報告書はいつも正確で完璧だから修正はねェ」
「あ、ありがとうございます……」
思わぬところでお褒めをいただき、嬉しさからか顔か赤くなってしまった。
「そっ! そ、ういえば、カリファから聞きましたよ?」
「あ? カリファから?」
勝手に口が動きペラペラとまだ胸の中に閉まっておきたかったモノを喋ってしまった。
「……長官。こ、告白……とかしないんですか?」
「ッ! おまッ!」
長官の見開かれた目を見て、言ってしまったと後悔が押し寄せ居た堪れなくなって視線を合わせないように大袈裟に顔を下にやった。
「……す、すみませんでし」
「お前が先に言え……」
「た。……え?」
私の言葉に被って長官から聞こえたそれに理解するのに二三秒しっかりと時間を費やした。
「カリファから聞いたンだろ? なら名前から言えよ!」
ブワリと顔や背中に熱が走った。そして心臓が煩くてたまらない。ギュッと心臓だと思う場所を握られた感覚がして苦しくなった。
「長官。……す、好き……ですよ」
「! おれも好きだブァカ。ったく何でカリファはンなことを言っちまうかなァ!」
不貞腐れたような表情で、でも顔は赤くしながら私にそう言った長官は何故か視線を合わせようとしない。
「あ、あの。長官、何で目合わせてくれないんですか?」
「う、うるせェ! 恥ずかしいだろうが!!」
「え? 乙女か!」
とツッコンでしまったのだが、私も照れ臭いものがあったのでなんとなく「可愛いなぁ」っと自分を棚にあげ少しからかったのでした。
「そうでしたか、長官は乙女なんですね?」
「やめろ! オッサンが乙女はキツイだろ」
「オッサンって……自覚はあったんですね?」
「お前失礼だぞ!」
-END-