環とヒカリ

 其処はキラキラと今日このイベントの為だけに飾り付けられた光たちが様々な色に変え点滅していた。
 今日が終わればここは何の変てつもないただのレストランなのだが、店の外装も内装もこのイベントを心待ちにしていた人たちのように光り輝いていた。

 チラリと看板を見上げた私は、そのチカチカとする店へとただ仕事帰りに寄っただけだった。



「あっ……」

 二人して同じように固まって、同じような声を上げた。暫く見つめあって先に動いたのは私だ。
 コツリとヒールの音が床に響くと、目の前の彼がハッとしたような表情をして彼も動き出した。
 動き出した二人は示し会わせたように同じ方向に向かって行った。


「久しぶり……」
「おう……」
「……。……ていうか何であなたもこの席に座ってんの?」
「べ、別に。ただお前が1人で可哀想だから座ってやったンだよ!」
「何それ」

 ふっと自然に口角が上がった私がそう言うと、彼も釣られたようにどこかぎこちなく笑った。



「そういえば名前今何してンだ?」
「え? ……今は本部で医務の仕事してるよ」

 自然な流れでそのままそこの席で食事を楽しんでいた時、急に彼から名前を呼ばれ、その久しぶりの感覚に年甲斐もなくドキリとし嬉しくなった。

「あ、あなたは……スパンダムは何してるの?」
「あ? おれは……おれは、だな……」

 何故か言いにくそうに視線を逸らした彼に、頭にある事が過ぎった。

「あなたまさかオジサマのあとを……?」
「あ、ああ……」

 それはこんなキラキラと輝く場所で話すにしては似合わないものだった。だが、そもそも考えてみれば、彼と私が結婚していたのは約3年も前の事だ。月日というものは案外簡単に過ぎるもので、彼のお父様が息子に自分の役職を譲ったのも当たり前の話である。

「そう……」
「……」

 カチャリと食事を続けていた手が止まり、何故か気まずい空気がその場に漂った。
 ふと目線を彼から斜め前のテーブルにやると、そこには優しさのこもった笑顔をした両親がそれ以上に花のような笑顔を咲かせた子供を包むように食事しており。それを見た私の心臓は鋭い痛みを感じさせた。

「? どうした?」

 そんな私を不審に思ったのか、彼が視線を私に戻し眉を寄せながら聞いた。

「え? ……いや、私たちもあのまま別れずにいたら……こ、こども? いたのかなって」

 ぽつりと漏らした私の言葉に彼は一瞬言葉を詰まらせた。
 そしてスッと先ほど私が向けていたような視線を彼も私のを追ってあのテーブルに寄越した。

「あー、……いたンだろうなァ。あの子くらいじゃねェにしても、……多分いただろうよ」

 最後のほうは聞き取れない程だった。
 このお店全体がこんなにも明るく賑わっているのに私たちがいるこの席だけがポッカリと取り残させれているようだった。

「あっ、あの……ごめんね。久しぶりに会ったのにこんな話ししちゃっ……て」

 彼の食事をする手が完全に止まっていて、視線を私と合わなくなり、二人してただ黙って斜め前のテーブルを眺めていた。


「……。名前は今いるのか? あの……ほら、けっ、こん……とか」
「え、結婚? ……してないわ。あ、あなたはどうなの?」

 周りの音が聞こえなくなる程私たち席だけが取り残させれている時に、それをかき消すように彼がこちらへ問い掛けてきた。それは思いもよらないようなだが、期待していたような質問だった。

「してたら1人でここに来るかよ」
「っ! そ、そうね……」

 私の心臓はドクドクと不規則な音をたて始めた。だってこれでは……。

「名前。……まだ持ってるのか? 指輪」

 そう言って彼は私の手を取って、左手の以前まで彼と同じモノが嵌っていた指へ視線をやった。

「っわたしってバカだと思われると思うけどさッ……まだ持ってるのよねェ」

 彼に握られた手をそのままに、もう片方の手でシャラリと首からいつも下げていたチェーンを取り出し、その先に通している指輪を彼に見せた。

「ンとに、バカだな。……新しいの買ってやるよ!」
「うん、……ありがとうスパンダ!」
「ムだ! スパンダム!」

 クスクスと笑う私の目尻に何故か涙が溜まり、それを呆れ顔の彼が拭ってくれていて。私はこれ以上に最高のクリスマスプレゼントはないなっと子供の頃既にいない存在だったサンタクロースなる人物に初めて最高級の『ありがとう』が言えるような気がした。

「素敵なクリスマスね、スパンダム!」
「ッ! そうかよ」



-END-

Happy MerryX'mas!

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