「ぶぇっぐじゅん! あ、またやっちまった」
と言われ書きかけの書類がまたゴミ箱に消えた。それはもうあと少しで私の手元に来るはずのモノで。だが、いいタイミングで羽ペンが定位置からズレ、もう既に書かれた文字をぐちゃりと上書きしてしまうのであった。
そしてそれをつい先ほどで5回繰り返しているこの人は私の上司(だとは認めたくないが)で、(こちらも認めたくないが)最近恋人になってしまった。
「……っさっきからうるさいのよ! クシャミばっかりして、鼻かみなさいよ!!」
と連日の任務が疲労を呼んでしまったのか、いつもなら笑って許せるはずのそれは今日は何故か許せず、柄にもなく怒鳴ってしまった。
ほら、私が声を上げてしまったから彼もあんな間抜け顔に。
「……ン、な! ど、怒鳴ることねェだろ! 花粉症なんだよ!! お前も知ってるだろ?! というより名前の方こそ、その鼻啜るのやめたほうがいいぞ。鼻血出ンぞ」
「……え? わた、し……鼻啜ってた?」
彼への怒りは何処へやら、急に言われた自分への指摘にハッとした。
気付いていないだけで自分もグズグズと鼻を啜っていたらしい。ただこれは。
「こ、これはただの鼻炎よ……。私花粉症もそうだけど鼻炎も酷いのよ」
「おまえ……」
「な、なに?」
サラサラと動かしていた羽ペンを止め、私を見つめる彼の視線が何故かイラッとした。
「大変だな、色々。ほらティッシュ使え」
「う、うるさいっての! あ、ありがとう。スパンダムも使いなさいよ」
「お、おう」
と二人仲良く何故か机を挟み、タイミングを測ったかのように、1箱ウン千ベリーもするティッシュで鼻をかんだ。
「っはぁ……いい加減その書類書き終わってくれない?」
「わ、悪いな」
-END-