Je suis bon dans un r・ve.

「スパンダム長官……」
「もう“長官”ではないぞ?」
「っ……分かってる」

 暗い海の上でプカプカと浮かんでいる海軍船……いや、元海軍船か。その船で今日の寝ずの晩をしている私に、元同僚のカクという男が話しかけてきた。

「……そんなに会いたいのか? あいつに」
「っ!」

 つい先程ポツリと名前を呟いた人物の事を言われ、一瞬うっとなったが、自分でも分かるくらいの泣きそうな声で言った。

「会いたいよ……」

 小さいそれは自分の耳に響くように聞こえ、心臓をギュッと痛くした。

「はぁ……」

 その私の声が聞こえたのかカクは小さくため息をつき、頭をぽんぽんと緩く撫でると船内へ入って行った。

 カチャリと扉が閉まった音がするのと同時に、私の目からどっと涙が溢れ出た。

「っ……ふ……っく」

 唇を噛み締めても消えない嗚咽。ただ情けなかった。
 元政府の暗躍機関で働いていた自分が男一人にこうも乱されるなんて。

「っくそぉ……あのアホパンダ」

 涙でぐしゃぐしゃになった顔でまたその人物を思い出した。

『おい名前、また報告書出すの忘れてただろ?』
『お前なぁ』

 思い出すと次々に聞こえてくる声、……私が今一番聞きたい声。

「う……っ」

 本当に人は失ってから大切なものに気付く。

「っ馬鹿だなぁ」

 だんだんと足に力が入らなくなってその場に座り込めば、自然と膝を抱えていた。

「あ、……会いたいよ」

 ぎゅっと目を瞑り絞り出した声にまた心臓が痛くなった。

 夢でもいいから長官、貴方に会いたい。



-END-

JUKE BOX.様お題

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