「何で雨なんだろう……」
拗ねたようなそれでいて少し苛立ちの籠った声で言った。だがそれを言ったところで窓を叩く雨の音は止まない。
「仕方ねェだろ?」
私の後ろでソファーに座り困った顔で見ている彼は、今日1日でもう何回この台詞を言っただろう。
「うん。……だけど」
ため息混じりにそう言えば「こっちこい」っと彼が指先で手招きした。
それに従うように近寄れば、彼はぐっと私を引き寄せ自分の膝の上に乗せた。
「な、ちょっと!」
「黙ってろ」
「っ!」
抗議の言葉を上げようとしたが近くで響く声にそれは阻まれた。
今日私達は久しぶりに二人揃って休みという事で、何処かに出掛けようとなり海列車に乗ってブッチまで行こうとしたが、さぁこれから!という時にアクアラグナなんていうものが到来してしまい、こうしてお預けを食らっているのである。
「せっかくの休みなのに……」
「まだ言ってんのかよ」
先ほど黙れと言われたが、またポロリと溢すと呆れた声が返ってきた。
「うぅ……」
「今日はここで大人しく寝てろ」
やや早口で彼が言うと、少し乱暴に後頭部を持たれ自分の胸に押し付けられた。
「え、ちょっスパンダム?!」
「うるせェ、ブァァカ! ……黙ってろって」
びっくりして彼を見ようとしたが、後頭部に回された手に力が入り、さらに押し付けられた。 だがチラリと見えた首筋が赤くなっていた。
そんな素直じゃない彼の行動に少しクスリとした私だが、自分の顔が赤くなっているのが分かり、鼓動が何時もより早くなっていたからその胸に大人しく埋もれた。
「また行きゃいいだろ?」
「うん。そうだね」
さっきよりいっそう耳に響く彼の声にそう返した。
外は雨で煩いはずなのに、何故か此処だけはとても静かだった。
静かで互いの息遣いまでが聞こえるその中で私はうとうととしだし、心地のよい微睡みを味わっていた。
「名前?」
微睡みの中に彼の声がしたが、それに返事を返そうにも頭が働かず言葉がでなかった。
「ふ、……おやすみ」
優しく耳を震わすそれと同時に、頭の上をぽんぽんと撫でられた感覚がした。
その感覚を確認することも出来ずに意識を手放した。
「意外と雨もいいかもしんねェなぁ……」
意識の糸が切れる時に、そう聞こえた気がした。
-END-