平和に行きましょう。
理解不能な感情
はじめはゆっくりと相手の気配を探るように足を進めた。だが、それはだんだんと速さを増して地面を蹴るように向かって行った。憎しみを込めて。
「ウワァァァァ!!」
助走をつけ、今日も憎いアイツに剣を向け、ただひたすらに切りかかる。
何故なんて理由は分からない。
だが、私の中にある確かな『使命』なのだと分かっている。
そして確かなのは、私はアイツが憎くて仕方がないということ。そうだ。このドレスローザの国王であって、王下七武海でもある、あの海城ドンキホーテ・ドフラミンゴが憎い。
「フッフッフッ。今日も元気な女だなァ」
「ッ! ドフラミンゴォォ!」
私がそいつに振りかざしたそれをいとも容易く弾き返され、身体の内側から煮えくった炎と共にそいつに向かって二度三度とまた振りかざした。
「こんな狭い場所で物騒なもン振り回すんじゃねェよ」
「っ! クソッ!」
気だるそうに私が振りかざしたそれを避けると、右手を奇妙な形に動かし、こちらの自由を封じた。
「離せッ! キサマなんぞに能力だとしても触れられたと思うと吐き気がするッ!!」
「フッフッ……存分と嫌われたもンだなァ。どうしてこの国の国王であるおれを殺そうとしているのかも自分で理解出来ていないイカレ女が!」
「ウルサイ!!! 離せ離せ離せ!」
図星を付かれた私はまだ自由が効く足でバタバタとそいつに届きもしないが振り回した。
「フッフッフッフ。元リク王軍の護衛部隊長が酷ェ有り様だなァ」
「ッ!! ……リク王は関係……な、い!」
『リク王』とこの言葉を聞くだけで何故か頭に鈍く痛みが走る。
「おれはこの国を助けてやったんだ。そんな恩人に毎日毎日飽きもせずにくだらねェことして何になる?」
「うるさい!! 貴様にッ! ッ貴様に私の気持ちなどわかるはずない!」
叫ぶようにして出て来た言葉は、自分でもよく分からないモノに対する怒りなのかそれとも目の前にいる憎い相手に対するものなのか。全てが分からない。
「ッウァァァァア!!」
憎くて憎くて堪らない相手なのに、何故自分がここまで目の前の人物に憎悪を抱くのか分からず、記憶のようなものが抜け落ちているようで、全てをこいつに操られているようで、全てが何もかもわからなくなった。
「フッフッフッ、ついに壊れちまったか?」
「アアアア!!」
「イイさ、もっと壊れちまえ。名前の全てはこのおれが持ってる。怒れ、狂え」
目の前が憎しみで歪み、こいつの上がった口角がいつも以上に上がったように見えた。
「ドフラミンゴォォォ!!」
「フッフッフッ! せいぜいおれを飽きさせないでくれよ」
「っ……! が、はっ!」
足を滑稽にもばたつかせながら大声を上げると、彼はまた奇妙な指の動きをして、こちらの意志とは反対の動きをさせた。
ぐるりと勢いよく曲がった腕は、そのまま自分の腹を傷つけた。グサリと入ったそれは力を緩め抜いてしまうとゴプリと音をたて赤黒い液体を放出した。
それを見た私は「刺された」と自分がしたものにそう思い、ぐらりとその場に倒れた。
「はぁ、はっ! クソッ!」
「フッ、その程度の傷で死なねェよ」
そいつのその一言を聞いて私はぷつりと意識を飛ばした。
次は絶対にドフラミンゴを殺してやる。
「リ、リク王……様」
「……」
-END-
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