平和に行きましょう。

通常な狂気


「ねぇ、ドフィ」

 ふかふかのベッドの上で彼を見つめながら、とても甘えた声で呼んだ。
 そんな私に彼は返事をするようにひとつ口付けると、私に覆い被さり首筋に顔を埋めた。

「ん……。ねぇ、ドフィ。……私あなたを殺したいわ」
「……フッフッフッフ! 物騒な事を言うな、名前」

 首筋に熱い吐息を感じながらまた甘えた声でそういうと、彼は可笑しそうに笑った。でも本気だ、本気で彼を殺したいと思っている。

「仕方ないわ、本当だもの」
「ああ、だろうな。名前のイカれた目を見れば分かるさ。フッフッフッフ」

 とても近くで見つめあう私達の間には、狂気のような愛という優しい言葉では片付けられないモノがあった。
 サングラス越しに見る彼の瞳にもそれがあった。そして彼が言うには私にもそれがあるようだ。

「だって……あなたを愛しているもの」
「ああ、おれも愛しているさ。殺してやりてェほどに」

 先に言われたと思っていると、軽くまた唇を塞がれた。

「なんで先に言っちゃうのよ……」
「フッフッフッフ、悪かった」

 嬉しそうに笑う彼の唇を今度は私から塞いでやった。びっくりしているような彼の目がサングラス越しからでも分かった。

「ふふ、愛しているわ。殺したいほど」
「ンフッフッフ!」

 参ったと言っているかのように笑い、額に手を添えている彼の邪魔なサングラスを取ってやった。

「フッフ、どうした?」
「あなたに一番近いのは私だけでいいのよ?」

 彼の首に腕を回しこちらへ引き寄せ「ね、ドフィ?」とまた甘えた声で言ってみれば、彼はまたキスをしたくれた。

「私から離れたら殺すからね?」
「おれから離れやがったら殺してやる」

 二人同時に口にした言葉はとても物騒で、でも何故かとても居心地の良い言葉に私は聞こえてしまった。
 私達の脳からは通常というありきたりな言葉は消えていたのだろう。



-END-

 

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