09


ぼくがなまえに返信を返してからというもの、なまえから返信が来ていない。
なんとなく気になり日付を確認すると、ぼくが彼女に返信をしたのはたったの1日前だったのでぼくは少しだけ安堵した。


1日だけ。


なまえは高熱が出ていたらしいし、きっと具合がかなり悪いのだろう。
『知るか。ぼくは忙しいし君に会いたくもなんともない。早く風邪を治してぼくにうつらないようにしてからなら会ってやる。病人は寝ろ。』なんて言ったがやっぱり病状くらいは聞いておくんだったな。

もしも風邪からくる肺炎とかだったらどうしたらいいんだ。
ふと気が付けばネットで「風邪 別の病気」なんて検索していた。
インフルエンザやマイコプラズマやらの感染症ではないらしいのでまだ良かったが。
康一くんにさりげなくなまえのことを聞くと、まだ学校へは来ていないらしい。お見舞いに行くように勧められたが、冗談じゃないと笑った。


見舞いになんていったら、熱っぽくてとろんとしたなまえなんか見てしまったら何かが終わる気しかしない。
自分の中で抑えてきた何かが、一気に爆発してしまって、もうなまえには会えなくなってしまう。
そんな気がしておそろしい。
ぼくはおそろしい気持ちに怯えながら、ただなまえが早く元気になればいいのにと願っていた。

そしてあわよくばなまえが、病の苦しみと闘う中でぼくのことを少しでもいいから思い出してくれたら。
なまえの夢の中にぼくが現れて、いつの間にかなまえのことを虜にしてしまえばいいのに。
そんな"魔法"があれば...。
そこまで思考してぼくは気付いた。

"ヘブンズドアー"

ぼくのスタンドを使えば、なまえはぼくのことを好きになる。
ずっと一緒に居られる。
もう不安になることはない。
なまえはどんな自分も愛してくれる。

「(.....ッ、違う!ぼくはスタンドを使わないッ!)」

露伴は自分の頭に浮かんだストーリーを一気に振り払った。
今までにも、こうしたことはあった。
けれども露伴はそのたびに大きな力で押しつぶしてきた。

不安になるのは、自分が彼女のことが好きだからなのだ。

本気で好きな人のことを、
生まれて初めて愛しいと思えた人を、
失いたくはない。

露伴はまた知っていた。
"魔法"を使うことは本当の意味では自分の幸せではないことを。




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