15

その後、なまえはぼくの出してやったショートケーキをたいらげてからそのまま自分の家へと帰っていった。
彼女が玄関を出る際に最後はどんな顔をしていたか分からないが、おそらく悲しい顔はしていなかっただろうと思う。


不思議だ。

露伴は自分の椅子に腰掛けたまま天井を向く。上を向いたままの状態でしばらく考えてみた。
そしてくるくると回ってもみた。
露伴には回れば回るほど、自分がいま考えてることがより現実的になっていくように思えた。

あくまで想像に過ぎない。
だが、なまえの様子をみてぼくは、思った。
なまえはもしかしたらもしかしなくとも、ぼくのことが好きなんじゃあないのだろうか。
ぼくだって馬鹿じゃない。ふつう女があんな反応をするというのは、ぼくに何か特別な感情があるとしか思えない。なまえも例外じゃないはずだ。
あの時ぼくに見せた涙。
何かある。
彼女がぼくに嫌われることを恐れる理由はなんだ?




ーーーー露伴先生が好きだから、



まさかそんなことが。
ぼくは息を呑んだ。このぼくの想像がもし現実になったのなら。
そう思うとぼくは自分の笑みを抑えきれなかった。なんて面白いんだ。
ぼくはワクワクした。
ぼくはすぐさま原稿用紙とペンを取った。
描きたい。
とにかく今は描きたくて仕方がない。

ぼくはその夜、ずっと眠らずにいた。
朝になってからも眠くならなかったぼくは、しばらくぼーっとしていた。

なまえ。

もし君とぼくが、同じ気持ちだったならどんなにおかしいことだろう。



back

ALICE+