16

週末。

なまえは露伴の家に訪れていた。
前までとは何も変わらない日常になまえは心のうちで安心していたが、同時に不安も感じていた。
例にならって仕事をする露伴の後ろで資料を手に取り、適当に読んでいると
何分も経たないうちにこの家の主から声がかかった。

「おいなまえ」

半身を傾かせて露伴はなまえを見ていた。なまえはちょうど綺麗な鳥の図鑑を読もうとしていたが、それに半分くらい目を通してから丁寧に返事をする。

「はい?」
「優しくされたいか?」
「え、」
「例えば、ぼくに優しくされたら?」


何をいきなり。なまえは思った。
だが露伴が「どうなんだ」と返事を催促してくる。ああきっと漫画に必要なのだろう、と真剣に頭を働かせるなまえは図鑑をそっと閉じてから


「優しい、露伴先生はちょっと怖いです、かね」


と答えた。優しい露伴ってなんだろう、と考えたらめんどくさいのでなまえはそのあとを考えるのを止めたのだ。

「ふーん」

だが露伴はまだなまえを見ている。じっ、と。
そんな露伴がどんな答えを期待していたのかはなまえには謎だった。

「優しくしてくれるんですか?」
「いつだって君には優しくしているだろう」
「(そうかな....)」


苦笑いするなまえに、もういい、と露伴が言ったので、もう一度さっきのページを探しはじめた。


「なまえ、ちょっとこっちへ来い」
「はい?」


今度はなんだなんだ。なまえが素直に露伴の元まで歩いて行くと、露伴はすっかり椅子の背もたれに両腕を預け、そこから顔を出し、なまえを見上げて口元だけで笑う。
そして?マークを浮かべるなまえについに言い放った。


「好きだ」


目が点になるなまえ。
意外ッ!それは愛の告白の常套句。
しかし!あの岸辺露伴に至っては何かの聞き間違いか!

「え、えっ、」

なまえはひどく動揺した。
何も言えず、どこからやってくるのか汗が止まらない。



「..........と、言われた時の女の反応が見たかったんだ。なるほどな、君はそうやって顔をタコみたいに赤くする、と。」
「、」

そう言って目の前で露伴が綺麗にメモ書きをする様子を見ながらなまえは「やってしまった」と思った。死にたかった。


一方、露伴はといえば
ペン先に伏せた視線の奥を辿りながらじわじわと笑っていた。

そして彼はいよいよ、なまえを手に入れることを決心したのだった。



To be continue...



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