21
露伴先生と付き合うことになってから早くも一週間が経とうとしていた。
「どうしたのよなまえ、あなた、今日は一段とブスよ」
教室を通りかかった由花子にそう一言だけ言われて、なまえは眉間にシワを寄せた。
なにいきなりブスって....!失礼な!
そう思ったが次には、言うだけ言ってどこかへ行ってしまった由花子に、なんなら責任を取ってもらおうとひらめく。
なまえは席を立つと、顔に笑顔を作りながら廊下へ出て行った。
首をぐるりと回して由花子を探すと、あの特徴的な髪が揺れているのが見えた。私は咄嗟に駆け出す。
「由花子〜〜!!ねぇこのあとお茶しな、.................」
「ごめんね、康一くんお待たせ。待ったかしら?」
「いや、大丈夫だよ!!」
だが私の声は静かに勢いをなくしていった。ああ.....康一が居た。正確には康一もいた。由花子の隣に。
これはさすがに邪魔だろう、とすぐに身を引っ込めて教室に戻る。
戻ると同時に、なんでか溜息が零れた。
幸せそうな由花子を見て、かわいいなぁと素直に思う。
そしてブスと言われたことがキツくなってくるなまえであった。
「(イイなあ〜〜....由花子は)」
二人に気付かれないように鞄を抱えて下の階へ降りていく。渡り廊下の窓から空を見上げた。窓にうつった自分がやっぱりお世辞にも可愛いとは思えなくてそっとため息をつきながら昇降口まで歩いて行くと、ちょうど仗助と億泰も見えた。
でもなんとなく今は会いたくない。
なまえは二人がこのまま自分に気が付かずに校舎を出てくれたら.....と思った。
だがなまえが通り過ぎようとするのをこの二人が見過ごすはずもない。
「なまえじゃあねえかよォ〜」
「億泰ばいばい」
「お、おぅ」
すぐに私を見つけた億泰。
ポン、とその名前だけを呼んでそのまま通りぬける。
二人の視線が私に向いた。
横目にチラリと見つけた仗助は何か言いかけてためらっていた。
「ちょっと待て」
腕を掴まれる。
振り向くと、さっき通り越してきたはずの仗助だった。
なに?と言うと仗助は
茶でもすっかァ、と笑う。
見る人を癒してくれる仗助の笑顔が好きだった私は、自然に頷いていた。
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