23

私は一人ではいてもたっても居られずに、露伴先生の家を訪れた。
気分はよくなかった。
インターフォンを押している最中、私はまるで崖の上から谷底を覗き込んでいるような心地さえしたのだ。
そうして暫くたってから、扉は開いた。




なまえを連れたったまま玄関を通り抜けると、露伴の足はそのままリビングへ向かった。仕事場に立てこもられてしまうのではないか、と心配していたなまえは少しだけ安堵した。
だが、露伴がソファーに腰掛け、そのまま足を組んでジッとしているのを見てなまえは焦りながら向かい側に座った。
そこで露伴は話し始める。

「君には失望した」

そっけない声だった。ガンッと殴られながら、思いきり冷たい水を浴びせられたような感じがする。
嫌われた。露伴先生に嫌われてしまった。別れてほしいと言われるんだろう。もう二度と顔も見たくない、なんて言われるのだろうか。嫌だ。
そう思っても、黙っていることしか出来ない。
何も言わないなまえに対して、露伴はテーブルをバンッと叩いた。
なまえの全身が強張る。

「君は誰のものなんだよッ!ぼくのものじゃあないのかッ!」
「.......え、」

だが予想していたような、別れを告げられる言葉ではなかったことになまえは細く驚くことになる。
ハッとしながら露伴を見ると、今まで見たことのないような歪んだ顔をしている。

「約束しただろ!他の男となんて話すなって!ぼくの名前を呼べって!何度言えばいいんだッ.....!」


ああそうか。私は約束を破ってしまっていたんだ。大事な人とした約束を。


「、なんで君はッ!なんで.....いつもそうやってぼくをッ!
........この岸辺露伴をバカにしやがってェェェ!」
「!?っ、露伴、せ、ん」

テーブルを越え、露伴先生の腕にガッ、と思い切り掴まれて引っ張られる。

「っ、ごめんなさい、ごめんなさい!許してください!」

殴られる....!なまえは目を瞑った。自分が今、何に謝っているのかも分からない。
何が起こっているのかさえ。目の前にいる露伴を、ただただ分からないと思う。自分とは、生まれた世界の違う、そんな人間に思えてならなかった。




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