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「なんで君っていうやつはサメばっかり眺めてるんだよ」
「可愛いじゃないですか」
「さっきもそうやってエビやら気持ち悪い深海魚やらを眺めていたくせに。」

なまえとの29回目のデートは水族館になった。
初デートにあの遊園地を数えたら、ちょうど30回目のデートかも知れない。

卒業祝いにせっかく立派なレストランを予約してやったのに、こいつはその帰り道に水族館に行きたいと言った。
ぼくは休みがなくて忙しい身なのに君はワガママだな、と文句を言えば
"でも"明日は休みだよね?と当たり前のように言われたのには流石に閉口したよ。
なんだか一緒にいるうちになまえはどんどんワガママで自分勝手になっていくんじゃないか?
え?誰かに似てるって?
うるさいなァ、ぼくがワガママだって言うのかい?そんなことはないさ。


大きな水槽の前にしゃがみ込んで、熱心に何かを追っているなまえの隣へ、仕方なく自分も同じようにしゃがんで並びながらそんなふうに考えて暇をつぶす。するとなまえがいきなり言った。

「あの魚が露伴に似てる気がする」

バカ言うなよ、そんな訳ないだろ、と
笑う。でもなまえはどうしても似ているといってきかない。なんだよ、ムカつくな。

「すごく可愛い」
「はあ?」

可愛いくない。改めて魚を見てみると、お世辞にも可愛いとは言えない。むしろ不細工だ!こんなのと一緒にされたくはない。ぼくのほうがぜんぜん可愛げはあるだろう。

「なまえの方が可愛いな」
「やめてよ」

仕返しに思いっきり顔を近づけながらそう放ってやると、照れ隠しなのかなまえがぼくの顔をグイッと引き剥がした。

「お腹すいたあ....」
「恐ろしいヤツだな....魚を見ながらそんなことを言うなんて」
「違う!お魚じゃなくて!....あっ、私は入り口に売っていたフローズンマンゴー食べたいです」
「さっきは刺身定食が美味しそうとか言っていたじゃあないか」

ぼくが指摘すると、なまえはもう、露伴はうるさいなぁ、なんて笑う。
なんだようるさいって!
ぼくは君のためにこんなにしてやってるのに、ッ.....ぐ、く、....!
最近のなまえの態度はどんどんぼくをイライラさせる。それでもどうしたって憎めないのは、ぼくが相当なまえに惚れているからだっていうことに関しては、よく知っている。

まあそれにしても高校を卒業してからのなまえは特に生意気だった。

チッ.....うるさいな!ぼくに似たわけじゃあないぜ!



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