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「飲み会....だめかな?」


なまえが気まずげにぼくに視線をやっている。
答えは決まっているが、ぼくは少しだけ考えるように見せるそぶりをした。


「なまえ、逆に考えろよ。ぼくが、イエスと言うと思うか?」


その問いに対してはなまえも言葉を濁す。はなから許されるとは思ってないようだった。だったらこちらも体勢を変える気は毛頭ない。


「新入生歓迎会なんだよ?」


ダメ押し、というやつで眉を下げながら悲痛に訴えてくるなまえの眼差し。

新入生歓迎会ねえ。

ぼくが心配なのはその新入生歓迎会なんだ!!!なぜ分からないんだよッ!
そう心の中でドンドン足を踏み鳴らしてもなまえはぜんぜんぼくの考えてることが理解できていないようで、遅くはならないから...だとか、お酒はまだ飲まないから...だとか付け加える。


「イヤだね。大学生という奴らは何かあるとすぐ飲みたがる生き物だ。新入生歓迎会なんていやらしいッ!純真無垢な新入生たちは毎年毎年、下品な先輩にお持ち帰りされているんだぞ!なまえ!もしぼくがその場にいたら絶対に君をテイクアウトして家で食ってやるがね!」
「そんな大袈裟な....」
「どうしても行くっていうならなァ....この油性ペンで君の顔にこの岸辺露伴のサインを入れてやるッ!もちろんイラスト付きでだッ!」

ぼくもかわいいかわいいなまえのことを甘やかしてばかりではない。ビシッと言うときは言ってやる。
だが、
ぼくの予想とは裏腹に
なまえは、なぜか頬をゆるめる。

「え、なんか嬉しいな〜...」

実は前々からサイン欲しかったんです、なんてもじもじと照れながら笑うなまえにいろいろ通り越して溜息すらでない。

「このバカ喜ぶな。.....サインならあとでやるから。」

とりあえず素直でバカでぼくの作品とぼくのことが大好きなのはわかった。漫画家としてのぼくも褒められている気がして悪い気はしなかったし、なにより素直でバカななまえが可愛いかったので我慢できずに頭をポンポンする。

「とにかくだ、とにかくぼくは許さない。ぼくには君の行動を制限する権利が....「ありません」

なまえは露伴にピシャリと言い放った。すると先ほどまで上機嫌になってきていた露伴がみるみると唇をへの字にまげる。

「そうかそうか、ぼくが各界著名人の集まるパーティーに参加してグラマラスな女性と何か起こってもいいんだな?ン〜?」
「.....そういうのめんどくさい」
「ッ今更だろうがッ!」

このやろう!ちょっとは「やだ〜!露伴にはなまえだけなのに!」って涙目になれよ!
冷静ななまえに今度はこっちが顔を赤くする番だった。
ぼくはこの頃なまえにやられてばかりでまったく情けない。

だがしかし、

ぼくはその夜も決してなまえを離さなかった。




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