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ぼくは大変呆れていた。
というのも、このぼくの彼女であるなまえについてだった。
「またか」
それ以上何も言わず、露伴はなまえのいうことに聞く耳をもたない。どうやら自分の原稿のほうに集中することにしたらしい。
「露伴....今度は許してよ。ね?サークルの集まりだから...行かない訳には...」
なまえが絞り出すように発する言葉は、露伴も一応聞いてはいるが特に気にせずに流された。
だがそのまましばらくなまえが困っているのをみて露伴が口を開く。
「何のサークルだっけ?」
確か、なまえが何日か前になんとかサークルのビラを持ち帰ってきた。
ぼくはサークルなんてどこも同じだ!と言ったが、まさか変なサークルに入ったんじゃないかととてつもなく不安になってペンを止める。
「へ?あ、ああ.....、アコースティックギター...」
「アコースティックギターだって!?」
露伴は叫んだ。なまえは非常に嫌そうな顔をした。なまえとしては、またいろいろうんたらかんたら露伴に語られるのが正直めんどうだったことには否めない。
案の定、露伴はアコースティックギターの何ちゃらが貴重で、何十万円だとか、そもそも楽器というのは〜とかを何分間か語り続けた。
なまえはだいたいは耳に慣れ、半分以上は耳を塞いでいたが。
「うう....(なんのサークルでもどうせ反対するんじゃん!)」
「だから....君はほとんどアコギを弾ける見込みはないんだ。分かったな?ぼくは親切で言っているんだからな。」
露伴はひとしきり自分の言いたいことを全て吐き出したらしい。勝手に自己完結し、なまえの頭を優しく撫でた。どうやら露伴としては、本気でなまえのことを考えているらしいからタチが悪い。
だが納得がいかないのはなまえだ。
ぽそぽそと反論をするが露伴は仕事に戻ってしまいそうだった。
「がんばるから....、」
なまえは負けまい、と椅子に深く腰掛けた露伴の前に自分で立て膝をついた。そして出来る限りの上目遣いで露伴の顔を見上げ、手のひらをそっと合わせながら
「露伴....わたし、がんばるから、おねがい」
ね?と小首をかしげた。目をうるうるさせるのも忘れなかった。
最近わかったことだが露伴はこれに弱いらしい。このことに気が付いてからなまえはいざという時の奥の手としてこれを使う場面を待っていたのだ。
「く、ッ....」
「いい?」
幸運にも絶大な効果があったようで、露伴はこれ以上ないくらいに悩ましげに眉をひそめている。なまえはやった、と内心思った。そのままじい、と露伴を見つめる攻撃をしているとついに露伴が動く。
「クソ....ダメだ。可愛すぎる。」
「ちょっ、」
やめてください!と叫ぶなまえ。
だが露伴は椅子から降りるとなまえをその場に押し倒した。
「はぁ.....ああ可愛いなァ!君はなんて可愛いんだ!そうやってぼくを誘惑しようとして!いいさ!ぼくは誘惑に乗ってやる!だが、」
抵抗するなまえを押さえつけたままニヤニヤと嬉しそうな顔を隠そうとしない。そのまま馬乗りになってなまえの耳元でそっと囁く。
「ぜったいに離さないからな」
なまえの耳はみるみるうちに真っ赤に染まった。
結局、露伴の言うことには逆らえない。
なまえもそれは分かっていた。
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