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深夜2時半。何やらガタガタと音がするのが聞こえ、露伴はうっすらと視界を開く。彼は仕事のため、先ほど床についたばかりだった。
というのも、しばらく仮眠を取ったらまた起きて、最後の仕上げをしたかったのだ。

なまえだろう、と露伴は思考の端で思った。どうせ同棲するなら練習だと思って休みの日は泊まりに来いと言ってあるし、今日も例外ではなかった。
まさかこんな時間に何をやりだしたんだあのバカ女は。
しかし気にせずに二度寝を決め込む露伴の部屋の扉を、半ば乱暴に叩く音がした。

「(なまえか....)」

腹痛でも起こしたのかと、露伴は重たい瞼を開け、まだ寝ぼけた脳のまま歩いて行って扉を開いてやる。

「どうし、ッ!?!」
「うわぁあ露伴先生ぇ!」

ギョッとする。扉を開けるとすぐになまえが露伴の胸へと飛び込んできた。

「な、なんだよ!」

何事かと思い、なまえの顔を確かめようとするが、なまえがすごい力で露伴に抱きついているのでそれも無理だった。こうしたことは初めてで、露伴もびっくりしつつ背中に手を回してやることにする。
いったいこいつに何が起きたんだ?


「怖い夢をみました、っう、う」
「...................ハァ、なんだそんなことかよ。落ち着け。とりあえず、まず、水でも.....」
「露伴っ、行かないで....」
「はっ、?」

ぎゅう、とない胸をぼくの腕へ押し付けるようにして懇願するなまえ。
わざとではないにしても、なんだこの幸せな感触は。
しかも涙がじんわり、と浮かび、不安げな顔がぼくには最高のご褒美だった。

「ああ行かないさ!!!!」

くるっと踵を返し、なまえを優しく抱き寄せる。深夜だからなのか、頭の中がパンクしそうだ。

「少しこのままでいいですか?」

おそるおそるたずねてくるいつもよりか控えめな態度にもグッとくる。
こうなってくると、下半身のほうが危ういかも知れない。
違う意味で眠れないぞこれは。
とにかく、ぼくは小さな子供をあやすように自分のベッドへ彼女を誘った。

「いいよいいよ!さぁこっちへおいで!ハッハー!今夜はこのぼくと一緒に寝ようねなまえちゃん!」

すっかりテンションのあがってしまった露伴を止める者は誰もいなかった。

深夜だから仕方ないのか。

なまえはその後、露伴の隣ですぐにぐっすり眠ってしまい
結果的に露伴は辛い夜を過ごした。




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