03

先日はなまえのバカのせいでせっかくこのぼくが描いた原稿がコーヒー色に染まってしまったという事件があった。
もしも今週がカラーページだったら危うくアイツをはっ倒していただろう。
申し訳なさそうに謝ってきたなまえを散々に責めたてたぼくは、また新しいコーヒーを淹れなおしてようやく一息つくことが出来た。

「ふう」

原稿を描き直すというクソみたいな屈辱を味わったはずだというのに、何故だろう。とても気分がいい。

なまえが後で連絡しますね、なんて言ってから仕事中にラインが来ないか気になって仕方ない。
いつもは仕事関係以外はメッセージの通知をオフにしているのに、なまえとのトーク画面だけ通知オンにしちゃったんだぜ、というのは世界中でただ一人、ぼくしか知らない。

だがそれは逆効果で、ぼくはまったく鳴ろうとしない音にイライラすることになった。
なまえとのトーク画面を開いてみる。
ぼく達の最後の会話は彼女のほうで終わっていた。
ようするに、この時はぼくの既読無視
だったようで。きっと駆け引き、なんて言葉が頭に浮かんで彼女を無視したのかも知れない。
くだらない考えでラインのやりとりを終わらせてしまったことが今ここで悔やまれる。

ぼくからライン?無理だ!無理無理!
そんなのは無理に決まってる!
しばらく頭を悩ませ、机の上にスマホを置いてぼくはまた原稿を進めた。




しばらくそうしていて、また何時間か経つとぼくはラインをチェックする。

するとどうだろう。ロックを解除した瞬間にアプリが自動で起動し、なまえのトーク画面が出てきた。

『露伴先生、この前お話しした、遊園地のこと覚えてますか?』

ドン!と飛び込んできた文章。
そう、瞬時にポチャッという音をつけてしまったのは当然の結果だったんだ。
しまった!と思った時にはもう遅い。

「(めちゃくちゃ早く既読をつけちまったッ....!!)」

ああ!なまえなんかのトーク画面を開いたままにしていたからだ!
そのせいで動作がショートカットされてッ!ああ馬鹿ッ!

しかもぼくはそのあとに焦ってゴリラのスタンプを押してしまった。


死にたかった。




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