04
ぼくはその夜、なまえがゴリラのスタンプのことを突っ込んできたらどうしようと悩んでろくに眠れなかったよ。
既読めちゃくちゃ早いんですね、なんて言われたらなんて言い訳をしようかと考えていたんだ。
馬鹿みたいだろう?笑いたいなら笑えばいいさ!
「先生....昨日は徹夜だったんですか?目の下にクマがありますけど...」
そんなぼくの気も知らないで、なまえはさぞかしたっぷり寝たんだろう。
なまえの頬っぺたは健康そうな色をしていて美味しそうだし、目はパッチリしている。表情もすごく明るい。
私服はいたって普通だ。子どもっぽい部分が見え隠れしているがそれもまたいい。
何より足を出してきたところに好感を持てるぞ。
まずい。今日はいつもよりずっとずっと可愛い気がしてきた。
急に恥ずかしくなったぼくは少しだけ目を伏せた。
「誰のために徹夜で仕事を終わらせてきたと思ってるんだい?」
そしてこんなにぼくを苦しい気持ちにさせている彼女が憎たらしくって嫌味たっぷりにそう言ったのに、露伴先生〜!わ〜!優しい〜!なんてめちゃくちゃ喜ばれてしまった。
「お仕事すごく忙しいのに、ありがとうございます!」
「ッ、」
つらい。可愛いすぎる。
露伴はその眩しさに目を閉じた。
「違う!違うんだ!ぼくは君を喜ばせたくて言ったんじゃあないぞ!
勝手に喜ぶんじゃない!!!
仕事なんてもうとっくに終わってる!君のために必死で終わらせてきたわけじゃないんだから!勘違いはやめてくれ!」
.......そう叫びたかったが、こんなに嬉しそうな笑顔を向けられてはグッと喉がつまってしまう。
あとは代わりに何か、何か言わないとめちゃくちゃ照れてしまう。
なのにッ!頭がうまく回らなくて何も言えないんだ!この岸辺露伴が、ッ!
台詞回しが考えられなくてそれでも漫画家かァァ!
「ゴホン....あー....じゃあ、行くとするか」
「なにか乗りたいものありますか?」
「ぼくはいい。君が乗りたいものに勝手に乗ってくればいいだろう。」
「............そうですか!じゃあ、行ってきます!」
ぼくは断ったが、なまえが唇を尖らせながら、「露伴先生とせっかく来たのに」とわがままを言うのでぼくは仕方なく彼女に付き合うことに、
「は?」
なるはずだったのに(?)
気がつくと、なまえが小走りでどこかへ行ってしまっていた。
ぼくを入り口に取り残したまま。
「は、え、ちょっと待てよ!」
思わず目を見開いて彼女を呼び止めるが、あいつは意外に足が速くてぼくの声はあいつの耳に届いていない。
露伴の顔面から一気に熱が引いていく。
ヘイ!どこへ行くんだよなまえ!カムバックなまえ!
驚きすぎて追いかける気にもなれなかったぼくはその場に立ち尽くした。
「(....おいおい冗談だろ?)」
盛大なため息を吐く。
ああ.....ああそうさ!確かに、確かに言ったさ!なんでも好きに乗ってこいとな!
だけど、まさか本当になんでも好きに乗りにいくとは思わないよなァ!?
そこはやっぱり、嫌がるぼくを無理矢理に引っ張ってくれよ!
彼女に頼まれて嫌々ですよ、アピールを出さないと遊園地を楽しめないこのぼくの心情を汲んでくれよ!
ああ、もうッ!バカバカバカ!なまえのバカ!
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