06
ぼくは割と長いことなまえを見つめていたらしい。
ぼくがなまえの持っているクレープを食べたがってると勘違いされ、ぼくは特に食べたくもないクレープを食べるハメになった。
それにしてもイチゴのクレープって何だ。チョイスが可愛くて困る。
「露伴先生....まだ原稿のこと怒ってます?あの時はびっくりさせちゃってすみませんでした」
「......ぜんぜん気にしてないよ。ぼくがいちいち小さい事を気にかける男だと思ったのか?」
「(....実は思ってます)」
完全に帰るタイミングを失ったぼくは静かにクレープを食べている。なまえはそんなぼくをたまに見たり、周りを見渡したりしてるがさっきよりは表情は暗くない。
....こいつ、ぼくに気を遣ってるな。原稿のこともよーく考えたら完全にぼくが悪かったんだ。知ってるよ。
それなのになまえはまったく不満を言わない。バカな女だというのは前から重々承知だが、ムカつくくらいにお人好しなやつだ。
「先生、美味しいですか?」
「美味しいか美味しくないかといったら普通だな。むしろ美味しくない。」
「ふふ、」
「なんで笑う」
「だって露伴先生ってはっきり言っちゃうから」
「嘘ついたってしょうがないだろ」
「うん、そうですよね」
なまえが笑うので、ぼくは少しだけホッとする。
今のところ、ぼくの最もおそれている露伴先生なんて嫌い!という素振りだけは見られない。
「今日は付き合わせちゃったので、わたし、今度は露伴先生に付き合いますから」
それどころか、なまえはまたぼくと出かけようとしてくれる。
どうせ建前なんだろうな。
ぼくなんかと一緒に居て楽しいはずがないのに、。
「......取材を手伝わせるかもな」
だけどぼくは、君と一緒に居たい。
いつだってそんなことを願ってる。
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