このやろう



くぁ、と欠伸が出る。布団から這い出て携帯を開くと、午前6時半。
ああきちんと起きられてよかった。私はほっとして体を起こそうとした。

「なまえさん、仕事行くの?」

「うん...」

同時にアラーム音で仗助くんのことも起こしてしまったらしい。まだ眠たそうな2つの目が私を横から見つめている。

「寝ぼけてて危ねえから、ダメっスよ」

私が布団から出ようとすると、仗助くんの腕が腰に抱きついてきて離れない。あのね、お寝ぼけ野郎は君だよ仗助くん。

「ちゃんと起きたよ....ほら」

「いや、まだ夢の中。なまえさんは今、俺とずっと布団の中にいる夢を見てるっつーわけでえ...」

仗助くんは朝っぱらからこんな甘えたことを言っている。
そんなんじゃあ、社会に出てから苦労するからね。

「騙されないぞ!」

「いたっ!いたい!なまえさぁん!」

ポカッ!と控えめに頭を殴ってもそもそと上半身を起こした。
泣いたような真似をする仗助くんはまだまだ甘ったれてる。

「はは、可愛い」

私はくすくすと笑った。
仗助くんは可愛い弟みたいで、いちいち母性本能をくすぐってくる。

私に笑われた仗助くんは少しむっ、として同じように上半身を起こした。

「可愛いは禁句でしょ。ね。可愛いのは自分だってまだわかんないの?」

「あの、仗助くん、もうそろそろお仕事行かなきゃ」

「お仕事じゃなくて、お仕置きのほうなら許してやるかな」

「ちょ、っと!」

せっかく起きたのに、仗助くんにまたベッドへ体を無理矢理倒される。手首を強い力で握られて、私は困ってしまった。
仗助くんの顔を見上げると、いつの間にかさっきまでの眠たそうな顔じゃない。まるで、昨日の夜の仗助くんに戻ってしまったみたい。
何故だか、どきり、と心臓が跳ねた。

「ね、仗助くんおねがい、って言ってくださいよ」

なんて仗助くんがまたふざけたことを言い出した。大人をからかって悪い子だ。でも....言わないと多分このまま。
仗助くんは喜んで私を縛り付け続けるだろうことが経験から分かる。


「じょ、うすけくん、おねがい....退いて」

ああ、また彼のやりたいようにさせてしまった。
なまえは後悔した。
そして現に、仗助はフワッと力を抜いてなまえの上にどっさり覆いかぶさった。

「.....あーなまえさん、もう無理グレート。俺、離れられない」

「お願い退いて!?」


何度やってもまた仗助くんの言いなりになる。







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