心配で


「露伴がキスしてくれないの...」

「ぶッ!」

仗助が噎せた。すぐにテーブルの上からティッシュ箱を持ってきて渡してあげる。
他でもない。今日、仗助を家に呼んだのは、ほんのちょっと露伴を試したいという気持ちからだ。
付き合って2ヶ月近くになる私の恋人の岸辺露伴。いや、恋人と言っていい関係なのかも危うくなりつつある。告白したのだって私からだし、思えばその返事も「構わないよ」の一言で終わってしまったし。

「私、愛されてないのかも」

「そんなん露伴に聞きゃぁいいじゃねぇかよォ...」

「聞いたって素直に教えてくれるはずないよ」

「無茶苦茶だぜなまえ...」

仗助は極力、出来ることなら露伴に関わりたくないらしい。
なんでも前に露伴の家を家事にまで追いやったとか。(そりゃ気まずいわ。)

「こんなに露伴のことが好きなのに...露伴は鈴美ちゃんみたいな可愛い子がタイプなんだろうな...」

なまえはすっかり自信をなくしていた。露伴から愛情が感じられないことを不安にも、不満にも思う。
仗助は口元を拭いながらこのなまえの相談に頭を悩ませた。
何にせよ純愛タイプなのだ、自分は。
それでも放っておくわけにはいかない。仗助は立ち上がった。

「じゃあ、キスしてみっかよ」

「うん.....うん、?」

そしてなまえの肩を両手で掴む。

「じょ、仗助....」

どんどん近付いてくる仗助の顔。待ってまさかこれは。仗助の形の良い唇から目が離せな....

「い、い、いやだあああああ」

「ぶふぅっ!」

容赦ないビンタを仗助にお見舞いしたなまえが玄関まで走り出す。仗助のやつ!私をからかってるんだ!最低!
扉を開いて飛び出すと、

バンッ!と誰かに勢いよくぶつかった。

「なまえ、!?な、なんだよ」

「!ろ、ろはんっ、う、うわぁん」

思わずブワッと涙が溢れる。
なまえがぶつかった相手が、何の偶然か先ほどまで話題にあがっていた岸辺露伴本人であった。
ここで露伴の立場になってみれば、恋人の家を訪れてみれば突然泣きながらなまえが出てきたので驚くしかない。しかも視線を奥までずらせば、その元凶としか思えない憎々しい人物が立っているではないか。

「ひ、東方仗助ェェェェ!!!なまえに何をしたんだよおい!」

そのまま取っ組み合いの大喧嘩が始まったが、心を落ち着かせたなまえが必死に露伴を止め、最終的には誤解を解くことができた。
それで露伴の機嫌は最悪という訳だ。
元はといえば露伴がなまえを不安にさせるのが悪い。しかしなまえには今は何も言えず、ただ黙って俯く。





「してないんだよな?」

「え、」

「だから、キスしてないんだろ?」

「う、うん。」

こくこくと返事をするなまえを見て露伴がならいい、と呟いた。
そしてなまえを引き寄せると、そのままそっと唇に口付ける。

「.....っ、え、」

「今度あのクソ男を、いや、僕以外の男を部屋にいれてみろ。そんなんじゃあ済まされないからな。」

なまえは突然のことにカァッと顔を赤くしたが驚いた顔のまま露伴を見ると露伴の頬もこころなしかピンク色に染まっていて、なまえはついに嬉しそうに笑った。

「そういえば、さっきはなんで家に....?何か用だったの?」

「....君が泣いたり、困ったことになったら僕にすぐに分かるように書き込んである。」

「えっ」



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