少年Sの見解 with:K

白鳥沢学園、男子寮の大浴場。
大浴場と言えど、ピークを越えた今は一緒に来た川西と二人だけだ。

互いに口数が多いわけでもなく、水の音だけがやけにこだましている。部活がなくいつもより疲れてはいないが、夏だろうと湯船の温かさは身に染みる。

マッサージをしている太一を見た。彼も同様にリラックスしているようだった。今更沈黙も重くも何もないのだが、ふと今日の事を思い返して口を開く。

「苗字さん、ってさ。」

「うん。」

「なんで瀬見さんと別れたのかな。」

「あー…冷めたとか浮気とか、そんなんじゃなさそうだけど。」

「…バレー、関係あんのかな。」

太一は食らいつくでもなく、ただ淡々とマッサージの片手間に答えていく。興味はあれど、どうこうするつもりは無いらしい。

「無くもないけどどっかしらで絡んでる、みたいな?聞いたわけじゃないけど。」

「ん…わっかんね…」

「賢二郎がこの手の話に食らいつくの意外。」

最後に首をゆっくり回しながら言った太一の言葉が音を少しだけ変えながら浴場にそっと響く。
自分だってここまででも想定外だ。何も一つ上の厄介な先輩の如く嬉々として首を突っ込んでいる訳では無いと思いたいが、踏み入れた足は予想よりずっと沈んでいた。

自分に関係がある話かもしれない、ともやつきを抱えていたのも自負しているが、それ以上の何ががあると決定づけたのが今日のファミレスでの天童さんの「いい感じ」発言だ。

その時、何気なく瀬見さんを見ていた。
何とも言い難いような、しかし全く良い顔でない表情で。眉根を寄せて。


突如、臨時マネージャーとしてバレー部に現れた一つ上の先輩。瀬見さん関連でどこか見たことがあるとは思った。それでも先ず、バレー部にとって、今回の合宿にて、活動に何らかで邪魔になるような女子だったら嫌だなと睨んでいた。

その心配も杞憂に終わり、それどころか予想より遥かにいい人だった。遠すぎず近すぎず、バレーについての知識は皆無にしてもマネージャーとしての仕事をする姿勢には好感を持った。

最初は、それだけだった。

関わる様になって、話すようにもなって、分かったことがある。

「苗字さんと瀬見さんって、結構似てると思う。」

「すっげえ唐突…でもまあうん、それは俺も思った。」

「天童さんに怒ってる時とか、世話焼きなところとか。」

部屋に戻ってから、話も戻すつもりで言ってみたが太一は少し驚いた。
普段は落ち着いていること、思ったことは結構言う事。列挙させてみればぽんぽんと出てくるが、何より一番は、本人たちの抱いてる感情だろう。

「好きだけど、別れた手前そんなこと言えないし迷惑かけたくないから黙っておこう。みたいな?」

「…太一の言葉が的確すぎる…」

「恋愛のプロフェッショナルですから。…っ痛い地味に足蹴らないでください。
…んで、こうして俺ら…本人たちと鈍感なスパイカー二名以外は気付いてると思うんだけど、どうすんのかね。」

「…さっさとくっつけばいいのに。」

「一筋縄じゃいかないと思う。」


面倒臭い、素直にそう思った。特にわざわざよりを戻させる理由も無い。それ故に、どうにかしようと思ってしまったことが腹立たしい。
ただ煩わしいのは確かで、少しきっかけを作るくらいの仕掛けをしたって怒られはしないだろう。
さっさと終わらせて、心置き無くバレーをするためだ。


少し、悪戯心が胸を燻った。


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短い上にグダグダですいません…

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